最新放射線治療:ザンクトガレン国際乳がん会議2013で発表 患者さんの負担軽減を考えた、短期放射線治療が有望
語る鹿間直人さん
2年に1回、主に早期乳がんの治療指針が示されるザンクトガレン国際乳がん会議。その第13回会議が開催され、最終日のコンセンサス会議*では放射線治療に対しても、現時点での「評価」が行われた。その内容を盛り込みながら、最新放射線治療について紹介しよう。
*コンセンサス会議=ザンクトガレン会議の特徴的な会議。世界各国から参加した約50名の専門家が壇上に並び、乳がん治療に関する質問(2013年は約200項目)に対し、参加者の見守る中、イエスかノーのスイッチを押す。その集計を「それぞれの治療に対する現時点での評価」とする
乳房温存手術後の放射線治療
乳がんの治療法は、『乳癌診療ガイドライン』に定められた標準治療を基本に、それぞれの患者さんにあわせて選択されている。早期乳がん治療の基本は手術で、①乳房温存手術②乳房切除手術のどちらかとなる。このうち、①乳房温存手術では残った乳房にがん細胞が残っている可能性があるため、残った乳房全体に放射線をかける。
一方、がんのできた側の乳房全部と腋窩(わきの下)リンパ節をとる②乳房切除手術では、がん細胞がとりきれたと判断し、放射線治療を行わない場合も多い。しかし、切除したリンパ節にがんの転移が多く見られるときなど、再発予防で胸壁や残ったリンパ節に放射線をかけることもある(図1)。
乳房温存手術を選択できるのは、通常、3cm以下のしこりが1個だけの場合。さらに、放射線治療が可能なこと、患者さんが希望しているなどの条件を満たすことが必要とされる。
以上が現在の早期乳がんの放射線治療に関する標準治療の概要だが、まず、乳房温存手術について、会議の「評価」を見ながら、今後の治療の方向について見てみよう。
「乳房温存手術に放射線治療を必要としないグループはあるか」という質問に、68.2%が「イエス」と回答した。
鹿間さんは言う。「たしかに、一部の医療施設では病理検査により乳房にがんが残っていないと判断した場合に限り、放射線治療を行わないこともあります。しかし現状では、放射線治療を必要としないグループとはどんな患者さんなのか特定できていませんし、放射線治療を行わない人の再発率は行った人の3倍も高いとされています。温存手術を行った患者さんには、放射線治療を行わざるを得ないのではと思います」
米国では1日2回の超短期放射線治療も
最も大きなトピックは、短期放射線治療だ。
「ほぼすべての患者に短期放射線治治療(例えば15分割で40グレイ)を標準として行うべきか」には59.2%、「ある一定の患者に短期放射線治療(例えば15分割で40グレイ)を標準として行うべきか」には、7割以上が「イエス」と答えている。
乳房温存手術後の放射線治療は、ほとんどが乳房全体に放射線をかける全乳房照射。1回2グレイの放射線を1日に1回計25~33回、全部で50~66グレイ照射する方法が一般的だ。この方法は長期生存率は高いが、5~6.6週間と連日のように通院しなくてはならない(図2)。そこで、早期で、一定の条件を満たした患者さんを対象に、短期間に集中して放射線治療を行う方法が検討され、「世界で7つの臨床試験が動いているのが現状です」(図3)
「最大の試験はアメリカで行っている4,000例規模のもの。腫瘍の大きさが3cm以内の患者さんに対し、外照射で38.5グレイの放射線を10回に分けてかける方法ですが、問題点は、1日に2回治療を行うことです。(乳房内に刺したカテーテルの中に放射線源を通過させる『小線源』の場合は、34グレイを1日に2回計10回で照射)」
アメリカは国土が広く病院も遠方なことが多いので、一定期間に治療を終えたい患者さんの希望が強い。そんな背景から短期放射線治療が積極的に検討されているが、
「温存手術で再発が起こる場合、8~9割が切除した箇所(局所)から起こる。ですから、その部分に高い放射線量を短期間照射する短期放射線治療は、患者さんの負担を考えても、今後目指される方向でしょう」
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