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特別インタビュー:米国腫瘍内科医アンドリュー・サイドマン博士に聞く 乳がん治療に突破口は見えた。科学、経済両面での進展に期待

話し手●アンドリュー・サイドマン博士
聞き手●「がんサポート」編集部
発行:2013年8月
更新:2019年10月

  

Andrew Seidman 1959年ニューヨーク生まれ。1995年から現在まで世界のトップレベルであるMSKCC(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)で乳がん領域の第一線で活躍する腫瘍内科医。多くの重要な臨床試験を実施しASCOなどで報告している

米国の有名女優が、がん予防のために乳腺を切除して乳房を再建するというニュースが話題を呼んだ。米国での乳がん治療現場はどのように動いているのか。「日本乳がんリーダーズフォーラム」のために来日した、がん治療の世界的権威・腫瘍内科医アンドリュー・サイドマン博士に聞いた。

 

――乳がんの死亡率は、日本ではまだ微増傾向だが、欧米では下がっています。

20年ほど前から米国での死亡率は下がっています。それにはいろいろな理由があります。まず、早期発見が可能になったことですね。人々の間に乳がんに対する認識が高くなって検診率が高まったことで、早期乳がんの発見が可能になり、治療がしやすくなったこと。

次に治療法が改善したことが上げられます。外科的な手術の治療が上がったということもあるし、治療法の種類も増えてきました。抗がん薬による治療も発展してきました。色々な治療法があるということで生存率が伸びたと思います。

日本でなぜ同じ結果が出ていないのかということについては、残念ながら皆さんをびっくりさせるような独自な知見はもっていません。

社会的認知が診断や治療向上につながる

――認識はどのようにして上がったのでしょうか。

20~30年前から上がってきました。いろいろな団体が周知運動をしたからでしょう。ピンクリボン運動もあります。どこに行ってもやっています。たとえばスポーツマンに腕にバンドをはめてもらったり、ユニフォームに入れ込んだりで、社会全体に乳がんの恐ろしさを訴えてきたのです。

先陣を切った運動家たちは、HIVで起こっていることをモデルにしました。病気の克服には検診の普及や資金などが必要ということを国民に知らしめたのがエイズでした。乳がんは、その2番目の疾病事案だと思います。

肺がん、前立腺がんといった分野でも活発に運動している人は多いと思いますが、乳がんは先輩格ですね。

ただし、認知度が上がっただけでは十分ではないのです。それに伴うアクションがなければなりません。社会でアクションが現れて、初めて生存率が上がります。

先進国でも貧しい人は検診を受けられない、医者に診てもらえない、ということがありえます。アクションとは、社会的認知が診断、治療につながることです。

――有名女優のアンジェリーナ・ジョリーさん(37)が乳がん予防のために乳腺切除手術を受けて話題になりました。

がんの認知が行動に移った例です。遺伝子検査を受けて、勇気ある行動に出た。その行動で、多くの人々に『一部の乳がんは遺伝的要素で罹ってしまうことがある』ということを訴えた。

それを知った人々は、それならば遺伝子検査を受けたほうがいいのではないかという認識、意識を持つようになります。遺伝子の検査を受け、乳がんで死亡してしまうかもしれないリスクを減らすためにはどうしたらいいかを考える。外科手術も1つの選択肢かもしれないし、投薬という方法もあります。

――このような治療はよくあることですか。

よくあることではないですね。彼女の行動から、間違ったメッセージを受け止めてもらいたくはない。家族に乳がん患者がいるから、自分がハイリスクだからといって早まった行動に出てはいけません。一番いいのは遺伝子のカウンセラーに会って、きちんと話をして、しかるべき治療を受けることです。

アンジェリーナは知的レベルが高く、専門家からのアドバイスを受けられる立場にある、一般的にも賢いというイメージでとらえられているので、賢明な選択したと思われています。彼女の母親は卵巣がんで亡くなっています。さまざまな状況を考えて、賢明な選択をしなければならないと思います。

米国で受け入れられる遺伝子検査

 「オンコタイプDXの遺伝子検査でアメリカの医師の方針が大きく変わった」と語るサイドマン博士

――アメリカにおける腫瘍内科医の立場は?

日本に来るようになって15年ほどになりますが、私が感じたのは、日本では外科医が手術もするし、薬剤も処方しているということです。

アメリカでは、そこのところがしっかりと棲み分けができていて、外科医は手術しかしないし、腫瘍内科医は薬物治療しかしないのです。

それでも、それぞれが協力をして、遺伝子情報をもっと活用して患者さんにより良い診断、治療をしようという動きがあります。腫瘍のなかに遺伝子情報がある。遺伝子を使って早期の乳がんに対して医師たちが、より良い治療の方法の決断をすることに寄与しようと思っています。

――日本では、遺伝子診断が米国に比べて充分には広がっていません。

遺伝子診断にもいくつかあり、私は10年前からオンコタイプDXという検査法を使っています。これによって、早期の乳がんの治療に対して個別に対応ができ、治療成績を上げています。また、治療指針を考えるとき、この検査が非常に大きな影響を与えています。今、乳がんは過度の治療が行われています。化学療法をやりすぎだと思います。

オンコタイプDXは、ある種の化学療法が、本当に必要かどうかを見極めることができるのです。化学療法をやれば毒性や副作用もありますし、経済的負担も大変大きくなります。オンコタイプDXの遺伝子検査をすることによって、必要なければ、それらを避けることができるのです。個別治療が新たな局面を迎えたといえます。この検査によって得られた情報で、アメリカの医師たちの治療方針が大きく変わったと思います。

――アメリカで受け入れられた理由は?

アメリカでは化学療法は、保険でほとんどがカバーされています。保険会社からすれば、薬は高価なので負担になります。それよりも、遺伝子検査に出費したほうが安くすみます。検査で患者さんの3分の1が化学療法を受けなくてもよいとなれば、保険会社はその分節約できるというわけです。日本では保険適用外だそうですが、アメリカでは保険会社がそういう意味でサポートしてくれるのが大きいのではないでしょうか。

――今後の乳がん治療の展望を。

遺伝子の変異であるとか、治療に対する耐性など、科学的解明が進んできています。それが引き金となって、今後よりよい分子標的治療が行われていくと考えています。がん以外の部分には悪い影響を与えないような治療法をしなければいけないと思っています。今は、やっと突破口が見えてきたところです。

これからどう動くかは予測が難しいですね。今後、新薬も出るでしょう。高価なものもあるでしょう。人々がそのような薬を買えるような状況にしていかなければならないと思います。我々の前にある問題は科学的な問題と経済的な問題です。私たちは尊い命を救うために、科学も経済もどちらもハードルを越えて立ち向かわなければならないと思います。

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