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小線源を使った「加速乳房部分照射法」

乳房内から腫瘍床周辺の限定した部位に放射線を照射

監修●佐伯俊昭 埼玉医科大学国際医療センター乳腺腫瘍科教授
取材・文●町口 充
発行:2014年10月
更新:2015年1月

  

「腫瘍床付近の局所再発を抑えるという放射線治療の目的を考えれば、APBIは利にかなった治療法です」と話す佐伯さん

乳房温存手術後の放射線治療は、乳房全体に外部から放射線を当てるのが一般的だが、乳房の内部から小線源を用いて切除部分を中心に範囲を限定して放射線を当てる「加速乳房部分照射(accelerated partial breast irradiation:APBI)」という治療法が、欧米で広く行われている。日本でも、標準治療としてこの治療法が使えるかどうかの臨床研究が進んでおり、普及への期待が高まっている。

乳癌学会で中間解析の結果が明らかに

2014年7月に大阪で開催された第22回日本乳癌学会学術総会で、厚労省研究班による「組織内照射を用いた加速乳房部分照射法(APBI)の多施設共同臨床試験」と題する報告があった。報告に当たった研究班のメンバーで、埼玉医科大学国際医療センター乳腺腫瘍科教授の佐伯俊昭さんは語る。

図1 APBI多施設共同臨床試験のプロトコル

(厚生労働省研究:組織内照射を用いた加速乳房部分照射法の多施設共同臨床試験実施計画書より)

表1 試験開始後30カ月時点での解析結果

(佐伯俊昭ほか:第22回日本乳癌学会、2014)

「この試験は、わが国へAPBIを導入するための第Ⅱ相、第Ⅲ相試験の準備として、この治療法の再現性(どの施設でも同レベルの治療ができること)、副作用や整容性(治療後の美容効果)などを調べたものです。対象となったのは、がんの大きさが3㎝以下で、乳腺内にとどまっており、リンパ節やほかの臓器などには転移していない35歳以上の早期の乳がん患者さん46人でした」
(図1)

佐伯さんによれば、副作用や整容性については、治療後半年から数年後に現れる晩期合併症の問題があるので、さらに時間をかけた観察が必要だが、APBI実施後30カ月の時点での中間解析の結果が明らかとなったという。

それによると、臨床試験は6施設で行われ、技術講習会などでのトレーニングにより、十分に再現性のある治療であることが確認され、副作用も重篤のものはなく、整容性も含めて文献データの範囲内であり、特に問題はなかったとの結論だった(表1)。

今後、さらに治療効果と安全性、整容性を確かめるための大規模な臨床試験が行われることになるだろうが、今回の結果により、近い将来、APBIが広く普及していく道が開けたといえるだろう。

温存手術は乳房全体照射とセット

15年ほど前までは、早期乳がんであっても乳房をすべて手術で切除するのが一般的だった。これに代わって現在の標準治療となっているのは、がんが存在する部分のみを手術で切除して、再発予防のため乳房全体に放射線を照射する乳房温存療法。

「温存療法はもともと、乳房全体を切除する手術の代わりとして生まれたため、手術と温存した乳房への放射線とはセットとなっており、照射範囲は乳房全体に及びます。約5週間かけて1日1回2Gyずつを週に5日、計25回、合計50Gyぐらいを照射するのが普通ですが、病理検査の結果、切除した部分の断端(切り口)にがんが明らかに存在している場合は、追加切除が推奨されています。断端にはがんは明らかに遺残していないけれど、温存した乳腺に残っている危険性がある場合には、遺残している可能性のある乳腺の一部に対して、ブースト照射といって、5回ほど照射を追加することがあります。そうなると合計で30回、1カ月以上、病院に通わなければいけません」

もちろん、それによる効果は大きく、乳房温存手術後の放射線治療によって、放射線治療をしない場合と比べて乳房内の再発は約3分の1にまで減らせることがわかっているという。

ただし、放射線治療には副作用が伴い、やけどによる皮膚炎や倦怠感などが現れることがある。また、放射線治療終了直後は何ともなくても、数カ月から数年して副作用(晩期合併症)が出る場合もある。

さらに、乳房の後ろには肺や心臓があり、こうした臓器への影響も否定できない。とくに肺への影響で危惧されるのは放射線肺炎。これは晩期合併症として肺炎に似た症状が出るもので要注意だ。

また、乳がんになる人が欧米では60代以降に多いのに対して、日本の場合、乳がんの患者さんは40代~50代が最も多く、働き盛りであり子育てにも忙しい年代だ。1カ月も通院するとなると仕事や生活上の負担は大きい上、病院から遠く離れた場所に住んでいれば通院するのも一苦労となる。

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