~福井県立病院陽子線がん治療センター~
国内初の陽子線による乳がん臨床試験で患者さん募集
早期乳がんで陽子線の臨床試験開始
福井県立病院陽子線がん治療センター(山本和高センター長)は、2014年10月より乳がんを対象にした臨床試験を開始している。対象は60歳以上の臨床病期Ⅰ期の早期乳がんで、外来通院可能な患者さん。陽子線による乳がん治療としては国内初の試みとなる。
近年増加傾向にある乳がんだが、早期(0~Ⅱ期)の場合、手術による原発腫瘍の摘出の後に、乳房全体に対してX線の放射線治療を施す乳房温存手術に、その後必要に応じて薬物による全身療法を組み合わせるのが標準治療となっている。
しかしその一方で、高齢であったり、心筋梗塞、肺疾患などの合併症で全身麻酔による手術が難しい患者さんもおり、手術以外の治療法を必要とする患者さんも少なからずいた。
そうした中、陽子線がん治療高度化研究を推進する同県では、その一環として陽子線による乳がんの治療研究を推進。これまでに乳房の固定法・固定精度の検証、陽子線照射の位置決め、さらに他施設の乳がん外科医や放射線治療医の協力を得て、安全な試験を遂行するための研究体制を整えてきた。こうした準備期間を経て今回の臨床試験開始に至った。
参加にあたっては条件確認を
試験では、治療に適正と考えられる推奨線量を決定する第Ⅰ相試験(3段階)と、決定した推奨線量による治療の安全性・有効性を評価する第Ⅱ相試験で構成されており、土日曜日を除く2週間で、10回の陽子線照射による治療を行う。なお、費用は第Ⅰ相試験に参加する場合、治療費はかからない。第Ⅱ相試験に参加する場合には、通常の陽子線治療に必要な治療費として240万円前後かかる(陽子線治療以外の一般の保険診療に関わる費用等に関しては、支払いは生じる)。
臨床試験への参加に当たっては、適応・不適応条件が定められており、適応条件をすべて満たすこと、不適応条件に1つも当てはまらないことが必要となる。
主な適応条件:◆早期(臨床病期Ⅰ期)、腫瘍の大きさ2㎝以下◆60歳以上◆腋窩リンパ節・遠隔転移なし◆外来通院可能◆手術困難または手術拒否
主な不適応条件:◆他臓器重複がんで薬物療法中◆当該照射部位への放射線治療既往歴◆同側乳がんに対する手術・抗がん薬の前治療歴◆膠原病の既往歴など。詳細は、福井県立病院陽子線がん治療センターまで。
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