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予後は変わらないという臨床試験結果も

乳がんはより低侵襲治療に センチネルリンパ節陽性でも郭清省略へ

監修●井本 滋 杏林大学医学部外科(乳腺)教授
取材・文●町口 充
発行:2015年11月
更新:2016年1月

  

「センチネルリンパ節生検が必要なくなる時代も来るかもしれま
せん」と語る井本 滋さん

乳がん治療では、患者さんの特性にあった個別化と低侵襲の治療が進んでいる。手術の分野でも、センチネルリンパ節生検を行って転移を認めても腋窩リンパ節郭清を行わない流れが加速している。やがてセンチネルリンパ節生検を行わなくて済む時代がやってくるかもしれない。

リンパ節生検で 不要な郭清を避ける

図1 センチネルリンパ節とは?

がんがどれだけ進行しているかの指標にTNM分類がある。これは、マンモグラフィや超音波などの検査に基づいて、しこりの大きさと乳房内での広がり具合(T)、リンパ節への転移の有無(N)、他臓器への転移の有無(M)を表すもので、かつては検査でリンパ節転移が認められた場合はもちろん、しこりが小さくリンパ節転移が認められない場合でも腋窩(わきの下)のリンパ節を広範囲に切除する郭清が行われていた。

がんはリンパ節を通って全身に広がっていく性質があるため、たとえリンパ節への転移が認められなくても、転移する可能性があるとして再発予防を目的に行われてきたのだ。

しかし、腋窩リンパ節郭清を行うと、リンパの流れが滞って腕などがむくんだりするリンパ浮腫を起こすことがある。ひどい場合は腕の太さが以前の倍以上にも膨れ上がることがある。そこで、こうした副作用が起こらないようにするためにも不必要な手術はすべきではないとの考えが広まり、近年行われるようになったのがセンチネルリンパ節生検だ。

センチネルは「見張り」を意味し、リンパ節転移があるとしたらまずここから起こると考えられるため、手術中にセンチネルリンパ節生検を行い、転移がなければその先のリンパ節にも転移がないと判断し、不要な切除を避けることができるようになった(図1)。

ガイドラインで 腋窩リンパ節郭清省略を推奨

しかし、治療の進歩は目覚ましく、最近では、たとえセンチネルリンパ節生検によって転移が見つかっても、腋窩リンパ節郭清を省略するケースが出てきた。

昨年(2014年)4月、日本乳癌学会は「乳癌診療ガイドライン」を改訂。センチネルリンパ節生検で2㎜までのミクロの微小転移を認めた場合、腋窩リンパ節郭清の省略が勧められ、2.1㎜以上のマクロ転移があった場合でも、適切な基準に基づき症例毎に慎重に検討した上で、腋窩リンパ節郭清の省略を考慮してよい、と記載されるようになった。

これについて、早い時期からセンチネルリンパ節生検の意義を訴え、標準化に貢献してきた杏林大学医学部外科(乳腺)教授の井本滋さんは次のように語る。

「まず、大前提としてセンチネルリンパ節に転移がないのであれば、腋窩リンパ節郭清は省きましょうという考え方があります。その上で、仮にセンチネルリンパ節に転移があったとしても、腫瘍のボリューム(量)や転移の数が少なければ、腋窩リンパ節郭清を行わなくても、放射線を照射したり、サブタイプに応じた薬物治療を行うことで、治癒したり、がんの再発を抑えることができるのではないかと考えられています」

リンパ節転移陽性で郭清をしなくても予後は変わらない。これを裏付けるのが、近年行われた一連の臨床試験の結果である。

2010年の米国臨床腫瘍学会学術集会(ASCO2010)で報告された「NSABP B32」という試験の結果では、臨床的にリンパ節転移がない症例のうち、センチネルリンパ節陰性だった人を対象に、腋窩リンパ節郭清をした群としなかった群とを比較したところ、生存期間に差がないことが明らかになった。

その後行われた「ACOSOG Z0010」試験では、微小転移の診断と意義について調べられ、微小転移を認めた群と認めなかった群とで予後を比較したところ、生存期間に差はなく、たとえ微小転移があったとしてもその影響は小さいことが明らかになった。

そして、その後の臨床試験ではさらに1歩進み、たとえセンチネルリンパ節転移があったとしても、腋窩郭清の省略が可能とする結果も出ている。

「ACOSOG Z0011」試験の結果では、センチネルリンパ節生検を行い1~2個のマクロ転移があっても、郭清群と非郭清群とで生存期間に差がなかった。また「EORTC(AMAROS)」という試験でも、センチネルリンパ節生検でマクロ転移が認められた症例を郭清群と、郭清を行わずに放射線照射をした群とで比較したところ、両者の生存期間に差はなかった。

同様に、センチネルリンパ節にミクロ転移があった症例を対象とした「IBCSG23-1」試験でも、郭清群と非郭清群とで生存期間に差はなく同等であった。

これらの試験の対象となった患者さんの多くは、乳房温存手術を受けて乳房に放射線を照射したり、補助療法として薬物療法を受けており、例えば「ACOSOG Z0011」試験では、非郭清例の89%で術後照射、97%で補助療法が行われ、リンパ節再発はわずか0.9%。「EORTC(AMAROS)」試験、「IBCSG23-01」試験でも、術後照射や補助療法が行われ、リンパ節再発はそれぞれ1.2%、1.0%という結果だった。

総じて、井本さんは、腋窩リンパ節郭清を省略できるケースをこう説明する。

「基本的には乳房温存手術を行うような症例で、センチネルリンパ節への転移がミクロ(2㎜以下)か、あるいはマクロ(2.1㎜以上)であっても1~2個の患者さんが対象となります。また、術後は放射線照射やサブタイプに応じた薬物療法を行うのであれば、腋窩郭清を省略してもいいでしょう」

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