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大阪ブレストクリニックに学ぶ、クリニック活用法
これからの乳がんは、クリニックで治療を受ける時代

監修:芝 英一 大阪ブレストクリニック院長
取材・文:増山育子
発行:2011年7月
更新:2013年4月

  
芝 英一さん
これからはクリニックの時代と話す
芝 英一さん

乳がんの患者さんは大病院志向が強く、大病院は今や患者さんが殺到してパンク寸前の状態だ。
しかし、近くにあるクリニックでも、大病院に匹敵する検査や治療を行うところがあれば、どうだろうか。
ここで、乳がん患者さんたちに、病院に代わる、新しいクリニックの活用法を提案したい。

患者さん中心の医療はクリニックのほうが実現しやすい

外来センター

明るく清潔感のある外来センター。商業施設「堂島クロスウォーク」4 階に外来センターは位置する

待合室となる外来センターのロビー

待合室となる外来センターのロビーにはドリンクコーナーもあり、たくさんのパンフレットや雑誌類が並べられ、ゆったりとした空間が広がっている

医師として何を専門にするかを選ぶ際に、医局の上司から「今後、乳腺の時代がくる」と進言され、乳腺外科へ進んだという大阪ブレストクリニック院長の芝英一さん。当時の日本女性は、欧米と比べてはるかに乳がんが少なかった。まさに「先見の明」だ。それから30年を経た今、日本人女性の18人に1人が乳がんに罹る時代になった。

芝さんは、大阪大学医学部付属病院や大阪厚生年金病院で長年乳がん治療に携わってきた。両施設とも近畿地方有数の大病院。そこを辞してクリニックを開院したのには理由がある。

「患者さん中心の医療を行うにはクリニックのほうがやりやすいからです。たとえば大病院は検査1つにしても予約を入れて、診察に来た1週間後に超音波検査、また別の日にマンモグラフィというように何度も足を運んでもらわないといけません。そういった病院側の都合で患者さんに負担をかけたくなかったのです」

芝さんは2005年に大阪ブレストクリニックを開院後、07年にマンモグラフィと超音波による乳がん検診・婦人科検診を行う「レディースドッグ」を独立させた。08年、クリニックから外来診療部門を分けて「外来センター」とし、クリニックの建物を「治療センター」として、手術・入院治療、外来化学療法などを実施する施設にした。

さらに10年9月には奈良市に分院である「大阪ブレストクリニック学園前」をオープンさせた。

最新機器に人の心を入れ、超早期がん発見に努める

[大阪ブレストクリニック実績(症例内訳)]
大阪ブレストクリニック実績(症例内訳)

治療センターにある手術室

治療センターにある手術室。大阪ブレストクリニックでは、年間300件を超える手術を実施。その数は、大阪で最も多い、大阪府立成人病センターの次ぐらいにランクインする

ステレオガイド下マンモトーム装置

超早期乳がんを見つけることのできる、ステレオガイド下マンモトーム装置。大阪ブレストクリニックでは、超早期の非浸潤性乳がんの段階で見つかるケースが、患者さん全体の約2割を占めているという

芝さんが大阪ブレストクリニックについて語るときの第一声は「クリニックでも大病院並みの医療水準を保ち、安全で快適な最新の乳がん診断・治療を提供すること」だ。

患者さんが不安な気持ちを抱えながら診断結果を待つその問題を解消するために、初診から診察・検査のすべてを受けられるシステムにした。

患者さんは予約を入れ、大阪ブレストクリニックを訪れると、来院したその日に診察→マンモグラフィ→超音波という順序で、約1時間半後には検査が終了するという仕組みだ。必要ならばマンモトーム生検や細胞診といった、より詳しい検査も行い、5日後には結果が出る。この迅速さは大病院ではできないメリットだ。

芝さんはまた、診断・治療機器の整備にもこだわった。その1つがステレオガイド下マンモトーム生検を可能にしたことだ。

ステレオガイド下マンモトーム生検は、日本ではまだ実施できる施設が少ない検査。乳がんに伴う石灰化病変を検知し、ステージ1よりも早い、超早期乳がんの発見を可能にする。

「この『ステレオガイド下マンモトーム生検』は超早期乳がんを見つけることのできる精度の高い検査です。当クリニックにはがんが乳腺内にとどまっている段階(非浸潤性乳がん)で見つけて、治療を始めることができます。この微小がんのうちに取り除けば、転移・再発を免れる確率が高く、手術自体も乳房温存術で行うことができます」

この超早期がんの発見は治療実績にもつながっている。

「当院では、手術のうち約7割強が早期がんで乳房温存術です。とくに、超早期の非浸潤性乳がんの段階で見つかるケースが、患者さん全体の約2割を占めています。早期がんはステージ1、大きさでは2センチ以下のことをいいますので、超早期がんというと、大きさはそれよりも小さく、ステージでいえば0。当院に赴任したばかりの医師は、あまりに病巣が小さいのでどこを摘出したらいいかわからないと戸惑うほどです」

ただ、最新の検査機器も駆使できなければ宝の持ち腐れとなる。それを使いこなす医師や放射線技師の力量が問われる。芝さんはそれを「機械に心を入れる必要がある」と表現する。

「当院では放射線技師にも読影所見の技量をつけてもらうので、石灰化が見えたら拡大撮影や別方向から撮り直すなど、患者さんに了解を得て、技師独自の判断で撮影を追加することもあります」

放射線技師にこういった裁量が認められていると、患者さんは診察時に医師から「違う方向でもう1度撮ってきてください」と言われて再度撮影するという手間を避けられる。医師も検査のために費やす時間が省け、技師にしても、意識を高め、責任と熱意をもって腕を磨いていけるのだ。

スタッフ全員で情報を共有

大阪ブレストクリニックにはプライバシーの保たれた部屋で看護師や薬剤師と患者さんがゆっくり話をするための「面談室」がある。

がんと診断された患者さんは、手術をするならそれまでのスケジュールなど事細かに説明を受け、医師の説明を理解できたか、仕事をしているのか、家族構成、心配ごとや治療中に起こってきそうな悩みなどを相談する。

こうして看護師や薬剤師が得た患者さんの情報は、週1回行われるカンファレンスで治療方針とともに他のスタッフたちと共有される。

「カンファレンスをしない施設では担当医師が治療方針などすべてを決めることになるので、ホルモン療法に抗がん剤を上乗せする必要がないと判断すれば、その患者さんに本来なら必要な抗がん剤治療が行われないケースもあります。そういう意味でもうちでは必ずカンファレンスを行い、その患者さんにどのような治療をし、どのようなサポ ートをするかを、全員で話し合った上で決めていきます」


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