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脱毛が少なく、副作用が少ない
乳がんの新しい薬物療法「XC療法」

監修:田中真紀 九州乳癌研究グループ(KBC-SG)/社会保険久留米第一病院外科部長
発行:2009年11月
更新:2013年4月

  
田中真紀さん
社会保険久留米第一病院
外科部長の
田中真紀さん

効果はタキサン系抗がん剤に匹敵し、点滴の必要がなく、脱毛が少ないという新しい薬物療法に期待が高まっている。

乳がんの新しい薬物療法

進行・再発した乳がんの治療は、抗がん剤が大きな鍵を握っています。乳がんは他のがんに比べて、抗がん剤が効きやすく種類も多いため、1つが無効になっても次の薬が使え、これを繰り返すことによって長期の延命を計っている患者さんもたくさんいらっしゃいます。

ただ、脱毛や嘔気などの副作用で長期にわたって使えないことがあります。その点で、今注目を集めている新しい治療法が、XC療法と呼ばれる薬物療法です。

Xはゼローダ(一般名はカペシタビン)の頭文字、Cはシクロホスファミド(商品名はエンドキサン)の頭文字から取ったもので、この2つの抗がん剤の併用療法です。

ゼローダといえば国内はもとより、欧米でも転移再発した乳がんに対して広く使われ、国際的な標準薬として位置付けられています。一方、エンドキサンは、乳がんの標準治療として以前から使われている薬です。

この組み合わせの理由とメリット

この2つの薬の組み合わせが考えられた理由は、この両剤は、併用することによって相乗的な効果を上げることが基礎実験で確かめられているからです。ゼローダという薬は、がんの中の酵素により5-FUに変換され、抗がん効果を発揮しますが、エンドキサンはその酵素を誘導するとされています。

両剤とも内服薬であるため、点滴に比べてはるかに楽な治療です。点滴だと病院へ通って治療を受ける必要があり、時間も束縛されます。内服薬だとこうしたデメリットから解放されます。また、脱毛が少ないのも大きな特徴です。脱毛を嫌がる患者さんにはより喜ばれる治療法だと思います。

このように、QOL(生活の質)を維持しながら、有効性を高める可能性のある治療法として考え出されたのがXC療法というわけです。

効果はタキサンに匹敵し、脱毛は少ない

このXC療法の臨床試験が国内で行われ、優れた成果を上げています。それが2008年、米国のサンアントニオで開催された乳がん国際会議で発表され注目を集めました。

現在は、フェーズ2(臨床試験の第2段階)の段階ですが、患者さんにメリットの高い治療ですので、ここに紹介します。

まず、XC療法の治療内容ですが、ゼローダとエンドキサンを朝夕2回に分けて食後30分以内に服用します。これを2週間毎日続け、その後1週間休みます。これが1コース。これを継続して続けるという内容です(図参照)。

[図 試験デザイン]
図 試験デザイン

九州乳癌研究グループ(KBC-SG)が2005年7月から2007年12月にかけて、アンスラサイクリン系の抗がん剤による治療経験のある進行・再発乳がん患者さん45人に対して、この治療を行いました。

その結果は、完全にがんが消失した方が2名、30パーセント以上小さくなった方が14名と、36パーセントの方に効果を認めました。病気が進行するまでの期間の中央値は199日、全生存期間の中央値は677日でした(表1)。

[表1 XC療法の効果]

  合計 ホルモン発現状況
ホルモン
感受性あり群
ホルモン
感受性なし群
効果のあった割合 35.60% 35.50% 41.70%
完全に消失 2/45例 1/31例 1/12例
30%以上が縮小 14/45例 10/31例 4/12例
変化なし 12/45例 7/31例 5/12例
増悪 13/45例 10/31例 2/12例
評価不能 4/45例 3/31例 0/12例
病勢コントロール率 62.20% 58.10% 83.30%
トリプルネガティブ乳がん

進行・再発乳がんの治療ではタキサン系抗がん剤の有用性が世界的に報告されていますが、それに遜色のない結果でした(表2)。さらに細かく見てみると、予後の悪いとされていた、ホルモン感受性がなくハーセプチン(一般名トラスツズマブ)も使えないタイプ(トリプルネガティブ乳がん)に対しても、41.7パーセントの方に効果を認め、ホルモン感受性のある乳がん患者さんと同等の効果を上げていることが明らかになりました。これは、XC療法の新たな可能性を示唆していると考えられます(表1)。

[表2 アンスラサイクリン系の抗がん剤を経験した方の有効性(試験比較)]

  効果のあった割合 病気が進行するまでの期間 全生存期間
ドセタキセル1~4) 23~42% 3.5~6.3カ月 9.8~15.4カ月
パクリタキセル1,2,5,6) 17~29% 3.1~4.2カ月 9.4~12.7カ月
本試験:XC療法 35.60% 6.5カ月
(199日)
22.3カ月
(677日)
1)Jones SE 2) Leonard R 3) Alexandre J 4) Sjostrom J 5) Dieras V 6) Nabholtz J

これに対して、この治療による副作用は薬を中止しなければならないほどひどい状態にはならず、対処が必要なグレード3以上は白血球減少5例、好中球減少5例などわずかでした。また、ゼローダに特徴的な副作用である、手足症候群(手足の腫れ・赤くなる・痛みを伴うなど)の発現が少ないのも特徴でした。

さらに、抗がん剤の治療で多くの患者さんが苦悩する脱毛は4例と大変わずかでした。これは患者さんにとって大きな朗報だと思います(表3)。

[表3 XC療法の主な副作用(有害事象)]

  グレード1 グレード2 グレード3 グレード4 グレード3 以上
白血球減少 6例 20例 5例 0例 5例(11%)
好中球減少 3例 6例 5例 0例 5例(11%)
血小板減少 6例 0例 1例 0例 1例(2%)
ヘモグロビン減少 10例 5例 1例 0例 1例(2%)
下痢 0例 3例 1例 0例 1例(2%)
悪心 9例 6例 1例 0例 1例(2%)
嘔吐 5例 0例 1例 0例 1例(2%)
食欲不振 12例 5例 2例 0例 2例(4%)
口内炎 4例 0例 0例 0例 0例
疲労 11例 5例 0例 0例 0例
手足症候群 12例 2例 0例 0例
色素沈着 9例 0例 0例 0例 0例
脱毛 3例 1例

このように、いつもの生活を送りながら治療が継続できるXC療法は、メリットの多い新しい治療法として注目されているのです。

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