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患者の特性に合った乳がんの個別化治療
過剰な治療をなくし、治療の精度を高める方向へ加速

監修:井本滋 国立がんセンター東病院乳腺科医長
取材・文:町口充
発行:2007年2月
更新:2014年1月

  
井本滋さん
国立がん研究センター東病院
乳腺科医長の
井本滋さん

乳がんのオーダーメイド化、個別化治療の流れが加速している。

薬物療法では、患者ごとのがんの特性を調べて、もっとも効果的で副作用の少ない薬を選択できるようになってきたし、リンパ節転移の有無がセンチネルリンパ節生検を行うことで分かるようになってきた。

個別化治療の現状と今後の展望について述べる。

患者の多くに微小転移がある全身病

「1期を含めても、アメリカのデータでは患者さんの約30パーセントに微小転移が認められており、比較的早期の段階から、局所ではなく全身病としてとらえる必要があるのが乳がんです」

と国立がん研究センター東病院乳腺科医長の井本滋さんが語るように、全身病であるだけに薬物療法の重要性が増していて、中でも進歩が著しいのが個々の患者(がんの性質)に合わせた個別化治療の取り組み。

乳がんとひと口にいっても、閉経前か後か、ホルモン療法が効く人効かない人、抗がん剤にしても効く人効かない人、リンパ節転移がある人ない人とさまざまであり、その人のがんの性質を調べて、もっとも効果的な治療法を選択しようというわけである。

たとえば、乳がんの発生・増殖には女性ホルモンであるエストロゲンが重要な働きをしていて、がん組織を調べてエストロゲン受容体かエストロゲンの働きでつくられるプロゲステロン受容体のどちらかが陽性なら、「ホルモン感受性乳がん」「ホルモン依存性乳がん」と呼び、ホルモン剤によるホルモン療法の効果が期待される。

また、ホルモン療法は閉経前か閉経後かによっても異なる。閉経前は卵巣がエストロゲンの主な供給源になるが、閉経後は卵巣からのエストロゲンの分泌は停止し、副腎皮質から分泌される男性ホルモンが原料となってエストロゲンがつくられるため、ホルモン療法で使われる薬も違ってくるのだ。

陰性と陽性ではまるで治療が反対

一方、抗がん剤となると効果は逆になる。

「ホルモン感受性が陰性のほうが抗がん剤の効果は大きく、より縮小効果があって、がんが消える可能性も高くなります。逆に、陽性だとあまり高い効果は望めません。つまり、抗がん剤治療の指標では、ホルモン感受性が陰性と陽性ではまるで反対になるわけです」と井本さん。

また、乳がんの20~30パーセントは、乳がん細胞の表面にHER2タンパクと呼ばれるタンパク質をたくさん持っており、このHER2タンパクは乳がんの増殖に関与していると考えられている。このHER2をねらい撃ちした治療法(分子標的療法)であるハーセプチン治療は、HER2タンパクあるいはHER2遺伝子を過剰に持っている乳がんに効果が期待されている。

最近のトピックスもある。06年12月にアメリカで開かれ、井本さんも出席した「サンアントニオ乳がん学会」では、HER2は17番染色体上にあるが、トポイソメラーゼタイプ2(TOPO-2)が同時に発現していると薬の効果も高いというデータや、HER2が強陽性のほうが、乳がんの治療で代表的な抗がん剤のアドリアマイシン(一般名ドキソルビシン)も効いて予後がいい、との報告があったという。

[抗がん剤の効果とバイオマーカー]
図:エストロゲン・レセプター
図:プロゲステロン・レセプター
図:HER-2

術前化学療法において、抗がん剤の効き具合を予測できるバイオマーカーはまだ見つかっていない


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