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「効果の高い薬」を長く続けたい 進行腎がんの分子標的治療 リスクの高低や未治療かどうかetc.、治療薬はこう選択する!

監修●近藤恒徳 東京女子医科大学泌尿器科講師
取材・文●柄川昭彦
発行:2014年1月
更新:2019年9月

  

「最初の治療でなるべく効果の高い薬を使うことが大切」と話す
近藤恒徳さん

ここ数年、相次いで新しい適応薬が登場し、2014年には6種類になる可能性がある進行腎がんの分子標的薬。選択肢が次々に増えるなか、これまでにどのような薬物治療を受けてきたかによって、選択肢も異なってくる。どの段階でどの薬剤を選択するか、それぞれの薬の効果や副作用を知ったうえで、最善を選ぶポイントを押さえたい。

分子標的薬に2種類の薬がある

腎がんの治療では、どのような場合に薬物療法が行われるのか。東京女子医科大学泌尿器科の近藤恒徳さんは、次のように説明する。

「基本的にステージⅣの場合です。つまり、腎がんが他の臓器に浸潤しているか、転移している場合が、薬物療法の対象になります。手術でがんができている腎臓を摘出し、それに加えて薬物療法が行われます」

使われる薬剤は、大きく2つの種類に分けられる。1つは免疫療法のための薬、もう1つが分子標的薬である。

免疫療法で使う薬には、インターフェロンとインターロイキン-2がある。

「患者さんの体に備わっている免疫の働きを高める薬です。分子標的薬が登場する前は、薬物療法ではインターフェロンとインターロイキン-2だけが標準治療とされていました。分子標的薬に比べ、効果はあまり高くありません」

分子標的薬は、新しいタイプのがん治療薬である。がんがもつ特定の分子に作用し、がんを縮小させたり、増殖を抑えたりする働きがある。腎がんの治療には、「チロシンキナーゼ阻害薬」と「mTOR阻害薬」という2つのタイプの薬が使われている(図1)。

「免疫療法に比べて有効率が高く、現在、腎がんの薬物療法の中心となっているのが分子標的薬です」

図1 腎がんの分子標的薬のタイプ

mTOR=哺乳類ラパマイシン標的タンパク質

がんに栄養を送る血管が増えるのを抑える

チロシンキナーゼ阻害薬は、がんに栄養を送る血管が増える(新生する)のを抑える働きをする。

「がんの増殖には栄養が必要です。栄養は血管から運ばれるため、がんはつながる血管を増やそうとします。そのときに出すのがVEGF(血管内皮成長因子)です。血管がそれを受け取ると、がんに向かって新しい血管を伸ばし、がんに栄養を送るようになります。チロシンキナーゼ阻害薬は、VEGFが血管に作用する部分をブロックし、血管ができるのを抑える働きをします」

新しい血管ができなくなると、がんは栄養が不足し、生きていけなくなる。こうして治療効果が発揮されるのだ。

チロシンキナーゼ阻害薬には、スーテント、ネクサバール、インライタといった薬がある。

また、ヴォトリエントという薬も、2014年には使えるようになる可能性があるという。

mTOR阻害薬は、がん細胞を成長できない状態にする働きをする。

「がん細胞の中には、mTORというがんの成長にかかわる酵素があります。ここに作用して、がん細胞を成長できない状態にしてしまうのがmTOR阻害薬です。チロシンキナーゼ阻害薬に比べると効果はマイルドです」

mTOR阻害薬には、アフィニトール、トーリセルといった薬がある。

スーテント=一般名スニチニブ ネクサバール=一般名ソラフェニブ インライタ=一般名アキシチニブ ヴォトリエント=一般名パゾパニブ アフィニトール=一般名エベロリムス トーリセル=一般名テムシロリムス

1次治療で使われるのはチロシンキナーゼ阻害薬

図2 腎がんのリスク分類

腎がんの薬物療法では、患者さんの状態を「低中リスク」と「高リスク」に分け(図2)、それぞれに応じた薬が使われる。

リスク分類は、①腎がんと診断されてから治療までが1年未満、②貧血がある、③LDH(乳酸脱水素酵素)が高い、④カルシウム値が高い、⑤PS(全身状態)が80%未満、という5項目中、何項目に当てはまるかで判断する。

0項目が低リスク、1~2項目が中リスク、3項目以上が高リスクである。

「日本人の腎がんでは、高リスクは10~20%で、大部分を低中リスクが占めています」

では、治療にはどの薬が使われるのだろうか。それをまとめたのが(図3)である。2011年版の『腎がん診療ガイドライン』の内容に、その後に認可されたインライタを加えてある。

図3 ガイドラインによる薬剤の使い分け

※はガイドライン発行後の追加

◆未治療・低中リスク

推奨されているのは、インターフェロン、インターロイキン-2、チロシンキナーゼ阻害薬のスーテントとネクサバールである。

「欧米のガイドラインでは、免疫療法薬は推奨されていません。日本のガイドラインでは、免疫療法薬でもチロシンキナーゼ阻害薬でもいいということです。免疫療法は、ごくまれにがんが消えることがあるとして、ここに加えられています。ただ、実際の治療では、有効率の高い分子標的薬がよく使われています」

◆未治療・高リスク

推奨されているのはmTOR阻害薬のトーリセルだ。

「トーリセルは副作用が軽く、高リスクの患者さんに使いやすいのですが、効果もマイルドです。現在のところ、高リスクに対する臨床試験データがあるのはトーリセルだけなので、高リスクにはこの薬が推奨されています」

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