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初期治療を最強の治療でガツンと行うことが大切
抗がん剤や放射線が効きやすい小細胞肺がん治療

監修:田村友秀 国立がんセンター中央病院総合病棟部長
取材・文:半沢裕子
発行:2008年7月
更新:2013年4月

  
田村友秀さん
国立がん研究センター中央病院
総合病棟部長の
田村友秀さん

小細胞肺がんは進行が早く、他の臓器に広がると治療に難渋するたちの悪いがんとされてきた。

けれども、初回治療によく反応し、化学療法や放射線療法が効き、多くの患者さんに延命効果が期待できるがんでもある。

進行が早く広がりやすいが、治療効果も高いがん

胸部を写したレントゲン写真。→の部分が小細胞がん

胸部を写したレントゲン写真。の部分が小細胞がん

「小細胞肺がん」は肺がんの10数パーセントを占める、肺がんの少数派で、残りの90パーセント近くを占める「非小細胞肺がん」とは異なる、はっきりした生物学的な特徴をもっています。

いちばんの特徴は進行が早く、全身に広がりやすいことです。つまり、細胞増殖のスピードがきわめて早いのです。そのため、多くの場合、見つかったときには、かなり進行していることが少なくありません。早期発見される可能性が低いがんなのです。

小細胞肺がんは、胸の中央部(「肺の中枢側」といいます)にできることが多く、血管や大きな心臓の影などと重なって画像診断しにくいことも、早期発見のむずかしさにつながっているようです。

その一方、抗がん剤や放射線などの治療がよく効き(「治療に感受性が高い」といいます)、治療による延命効果が高いこともまた、「小細胞肺がん」の特徴です。

ですから、がんが見つかったら、とにかく最も効果の高い治療にしっかり取り組むことが、何より大切です。

[小細胞肺がんの特性]

  • 肺がん全体の約13%
  • 急速な臨床経過、無治療では数カ月
  • 当初の抗がん剤や放射線療法に高い感受性
  • 治療による延命効果は明らか、一部は治癒
  • 大半は治療抵抗性となり、予後不良

がんが半分以上小さくなる人が90%以上!

[小細胞肺がんの分類と治療]
胸部を写したレントゲン写真。→の部分が小細胞がん

限定型で比較的早い段階の小細胞肺がんは、外科切除+化学放射線療法を行う場合もある

「小細胞肺がん」の治療は、がんの広がり具合によって、大きく2つに分けられます。1つは「限局型」。片方の肺と、その近くのリンパ節(縦隔リンパ節、鎖骨上窩リンパ節)に、がんがとどまっている状態です。

こうした状態の患者さんに対しては、抗がん剤と放射線を同時に行う治療法が、もう10年以上もの間、世界の標準治療となっています。

もう1つは「進展型」。限局型の範囲を超えて、がんが広がった状態ですが、こうした患者さんに対しては、抗がん剤治療だけを行います。

小細胞肺がんに対して、手術をすることは非常にまれです。がんのかたまりを取っても、がん細胞が全身に転移している可能性が高いためです。ですから、全身のがんを叩くことができる抗がん剤治療が、「小細胞肺がん」の治療の基本となっているのです。

その治療も、いちばん最初の治療(初期治療)で最大の効果を期待し、最強の治療を行うのが一般的です。それほど初期治療における治療の感受性が高いのが、「小細胞肺がん」なのです。

「小細胞肺がん」は治りにくく再発しやすい厄介ながんですが、にもかかわらず、患者さんによっては、がんがきれいに消えてしまうこともあります。

大ざっぱにいって、初期治療で最強の治療を行うと、がんが半分以下に縮小する患者さんが、じつに90パーセントを超えている、ということは、ぜひ心に留めておいていただきたいと思います。

生存率も、「限局型」で5年生存率が25.3パーセント、「進展型」で2年生存率が20パーセントという数字です。

最強の治療だけに、副作用が強く出ることもありますが、治療する価値は大きいと思います。

ただし、同じ「小細胞肺がん」でも、がんは1人ひとり違うので、なかには治療が効かなかったり、最初は効いてもすぐに効かなくなってしまうこともあります(「治療に抵抗性がある」といいます)。

「小細胞肺がん」の抗がん剤治療は、4クール行うのが基本ですが、そうした治療に抵抗性のあるがんの場合は、副作用なども慎重に見極め、早めに中止、もしくは、治療を変更することもあります。

また、どんなに効果があっても、4クール以上の治療を行わないのは、最大の効果は4クールで得られ、それ以上継続しても、副作用を増やすことが、世界の多くの比較研究からわかっているためです。

つまり、「小細胞肺がん」の治療は、初期にガツンと最強の治療を行い、あとは慎重に経過観察をするのが基本、と申し上げていいでしょう。

日本の研究が貢献した「進展型」の治療法

さて、そこで治療の実際ですが、話をわかりやすくするため、遠くの臓器などに転移の見られる「進展型」から、まず説明してみたいと思います。

現在、日本における「進展型」の標準治療は、シスプラチン(商品名プリプラチンなど)とイリノテカン(商品名カンプトなど)という、2種類の抗がん剤を組み合わせて行われています。

前述したように、「小細胞肺がん」の抗がん剤治療は4クールが基本です。1クールは4週間、これを4回くり返すのです。

具体的には、各クールの1日目にシスプラチンを投与し、1日目、8日目、15日目にイリノテカンを投与します。この治療は近年(2000年)、日本の研究成果が世界に発信され、標準治療となった治療です。従来はシスプラチンにエトポシド(商品名ラステットなど)という抗がん剤を組み合わせた治療でしたが、今では海外でも、「小細胞肺がん」の治療として、この方法を選ぶところが増えました。

[シスプラチンとイリノテカン併用療法の例]

治療からの日数 1日目 8日目 15日目 22日目
シスプラチン     2コースへ
イリノテカン  
輸液 投与   (副作用や効果の観察)
4週ごとに4コースを繰り返す

じつをいうと、日本の「小細胞肺がん」の研究は世界トップレベルで、私が所属する「日本臨床腫瘍研究グループ」(JCOG、厚生労働省がん研究助成班を中心とする共同研究グループ)の肺がん内科グループの研究成果の多くが、世界の標準治療の確立に大きく貢献してきました。

ただし、小細胞肺がんの治療は世界的に進められており、その研究途上にあるのも事実です。近いうちに新しい研究結果が発表されるかもしれません。


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