抗がん剤や放射線が効きやすいので、再発・転移してもあきらめずに治療を
まずは、できるだけ強い治療を! 小細胞肺がんとの闘い方最前線
悪性度が高いとされる小細胞肺がんだが、抗がん剤や放射線が効きやすく、例えばリンパ節転移があっても、抗がん剤に放射線をプラスして完治を目指せる標準治療もある。治療薬の進歩や臨床研究の蓄積によって、小細胞肺がんの治療はどう変化しているのだろうか。最新の知見を紹介する。
限局型と進展型に大別される
肺がんは大きく、小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分けられ、全体の13~15%を占める小細胞肺がんは少数派といえる。特徴としては、速く進行し、全身に転移しやすいこと。つまり、がん増殖のスピードが速い=悪性度の高いがんなので、発見されたときには、すでに遠隔転移(離れた臓器への転移)を起こ
していることが多い。なかでも、脳や中枢神経系への転移が多いことで知られている。
「半面、抗がん剤や放射線がよく効き、病変が胸部に限局しているなら完治の可能性もあります。高齢の患者さんでも、体調の許す限り、積極的に抗がん剤による治療を受けてほしいと思います」
このように、国立がん研究センター東病院呼吸器内科外来医長の後藤功一さんは強調する。
では、小細胞肺がんの治療法はどのように決められ、どう進められるのだろうか。
小細胞肺がんは肺がんの大多数を占める非小細胞肺がんと同じく、「1期~4期」に分類される。また、その分類とは別に、小細胞肺がんでは、「限局型」と「進展型」の2つの分類が、さらによ
く使われる(図1)。
限局型とは、がんが片側の肺と近くのリンパ節(縦隔のリンパ節、鎖骨上リンパ節も含む)にとどまっているものを指す。進展型とは、がんが肺の外に広がっている、つまり、遠隔転移のある状態を指す(図2)。
進展型なら積極的に抗がん剤の投与を
進展型では、化学療法(抗がん剤治療)が標準治療となっている。薬剤はこれまでシスプラチン*(一般名)とエトポシド
*(一般名)の2剤併用療法だった。それが、2002年にシスプラチン+エトポシドと、シスプラチン+イリノテカン*(一般名)を比べた日本の比較試験
(JCO G9511)で、シスプラチン+イリノテカンのほうが効果が高いことが確認されたため、日本ではシスプラチン+イリノテカンが第1選択となっている(図3、図4)。
ただし、海外ではこの試験の追試が引き分けだったため、
今もシスプラチン+エトポシドが標準治療だ。
*シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ
*エトポシド=商品名ベプシド/ラステット
*イリノテカン=商品名カンプト/トポテシン
限局型のうち 1期では術後に化学療法をプラス
治療は通常4コースで、1コースが4週間。各コースの1日目にシスプラチンを投与し、1日目、8日目、15日目にイリノテカンを投与する。これを4回繰り返す。化学療法
は、4コースよりも長期に継続しても効果は上がらず、副作用のみ増えていくとされている。
限局型の化学療法はシスプラチン+エトポシド療法が標準である。限局型でも、リンパ節への転移がない1期の場合、手術
で病巣部をとり、術後に化学療法を行う。
「手術後、体力が落ちているときに化学療法はきついですが、化学療法をプラスすることで60~70%の患者さんが完治している。もうひと頑張りしてほしいです」
このように後藤さんはいう。