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4次治療のための新しいタイプの治療薬が登場 進行GIST(消化管間質腫瘍)の薬物療法

監修●尾阪将人 がん研有明病院肝胆膵内科副部長
取材・文●柄川昭彦
発行:2022年8月
更新:2022年8月

  

「従来と異なる作用機序をもつ新薬が登場してきたのは、治療選択肢が広がるという意味で、よい話だと思います」と語る尾阪さん

胃や小腸などの消化管の筋肉から発生する悪性腫瘍であるGIST。症状が現れにくく、内視鏡でも見つけにくいので、進行した状態で見つかることも少なくない。その場合の治療は、原則として薬物療法が行われる。まず使われるのはグリベックで、2次治療、3次治療にはスーテント、スチバーガが使われる。これらの薬が効かなくなったり、副作用で使えなくなったりした場合、これまでは他に使用できる薬がなく、グリベックの再投与などが行われていた。今年、新たな治療薬としてジェセリが承認され、4次治療薬として期待されている。

胃がんや大腸がんとは異なるタイプの悪性腫瘍

「GISTとはどのような病気なのか」というところから話を始めることにしよう。

この病名は「Gastrointestinal Stromal Tumor」(消化管間質腫瘍)を略したもので、「ジスト」と呼ばれています。私たちが一般に「がん」と呼んでいる悪性腫瘍には、固形がんと血液がんがあり、固形がんは「がん腫」と「肉腫」に分けることができ、GISTは肉腫の一種です。

がん研有明病院肝胆膵内科副部長の尾阪将人(おざか まさと)さんは、次のように説明してくれた。

「体の外側とつながっている、たとえば消化管や気管の表面などを覆っている上皮細胞から発生するのががん腫です。胃がんも、大腸がんも、肺がんもそうです。一方、上皮細胞以外、たとえば筋肉や神経など、体の内部にある筋肉内から発生してくる悪性腫瘍があって、これを肉腫と呼んでいます。

GISTは、カハール(Cajal)の間質細胞という消化管の蠕動(ぜんどう)運動のペースメーカー的な役割を担う細胞が悪性腫瘍化したもので、肉腫の一種なのです」

胃がんや大腸がんとは違うタイプの腫瘍ですが、どちらも悪性腫瘍であることには変わりません。無秩序に増殖を続け、周囲に浸潤したり、他の部位に転移したりして、放っておけば患者さんの生命を脅かすことになります。

「患者さんの認識と違って、医療者側は上皮性の悪性腫瘍をがんと呼んでいるので、医療者からの説明で、『肉腫なので、がんではありません』などと説明されてしまうことがあり、混乱してしまう患者さんがまれにいます。大事なのは、GISTも悪性腫瘍だということです」

上皮性ではなく、筋肉内から発生してくる悪性腫瘍なので、かなり大きくならないと症状が現れないことが多く、内視鏡検査などでも見つけにくい。胃がんや大腸がんのように腸管の表面から発生してくるがんは、比較的小さくても内視鏡で見つかりますが、GISTはそういうわけにはいかないのです。

「多いのは偶然発見されるケースです。検診や、他の病気の検査をしていて、たまたま見つかることが多く、胃の手術を受けて見つかったりするようなこともあります。偶然見つかる場合には、腫瘍が小さな段階でも見つかりますが、症状が生じにくいため自覚症状がほとんどなく、膨満感などの何らかの症状が現れて見つかる場合には、かなり大きくなっていることが多いのです」

GISTは消化管に発生しますが、最も多い発生臓器は胃で、次いで小腸となっています。好発年齢は他のがんと同じで、60代以降に多い。

手術が基本だが転移があれば薬物療法が行われる

GISTが見つかった時点で他の部位に転移していなければ、腫瘍の大きさには関わらず、治療は原則として手術が行われています。

「GISTは胃がんなどと違って、リンパ節転移することがまれですし、浸潤も少ないので、腫瘍のある部分を過不足なく、くり抜くような手術が行われます。胃がんの手術で行うようなリンパ節郭清は行いません。

手術で大切なのは、腫瘍を傷つけないようにすること。腫瘍が傷つくと、破れたところから腫瘍細胞がこぼれてしまい、再発が起きやすくなるからです。手術方法はさまざまですが、最近は内視鏡と腹腔鏡を使用するハイブリッド手術も行われています。内視鏡で胃の内側から胃壁をくり抜き、切除した部位を腹腔鏡で体の外に取り出します」

GISTが発見された時点で、腹膜播種(ふくまくはしゅ)や肝転移などで手術ができないことも少なからずあり、また手術後に再発した場合にも、原則として薬物療法が行われます。

「腫瘍量を減らすことが予後(よご)に影響しそうな場合、手術を行うこともあります。ただ、その場合でも薬物療法は継続します。手術をしてはいけないということではありませんが、進行・再発GISTは薬物療法を行うのが大原則です。手術はオプションとして考慮してもよい、という位置づけです」

薬物療法で最も重要な薬は、遺伝子変異をターゲットとする分子標的薬のグリベック(一般名イマチニブ)です。2003年にこの薬が承認されたことで、GISTの治療は大きく変わったという。グリベックが効かなくなった場合や、副作用などで続けられなくなった場合の2次治療、3次治療の薬として、スーテント(一般名スニチニブ)とスチバーガ(一般名レゴラフェニブ)があります。

「GISTの薬物療法では、グリベックが効くか効かないかが、まず重要です。グリベックがうまく効けば、年単位で予後が延びていきます。まず、グリベックをいかに長年続けられるようにするかが大事です。グリベックが最初から効かない場合、あるいはグリベックが効かなくなってきた場合には、スーテントやスチバーガを使いますが、劇的に効くということはありません。グリベックに比べると副作用もそれなりにある薬なので、副作用に注意しながら治療を続けていくことになります」

グリベックの生存期間中央値は約5年なので、吐き気やむくみ、皮疹などの副作用もありますが、通常の化学療法ほど強くはなく、この薬が効きさえすれば、比較的長い生命予後を得ることができます。

グリベックが効くかどうかは遺伝子検査でわかる

GISTの薬物療法では、グリベックが効くかどうかが重要です。ある特殊なGISTは全くグリベックが効かない。すでに転移があって手術できない患者さんは、腫瘍があるので、グリベックを使ってみれば、効くか効かないかは判断できます。つまり、腫瘍が大きくなってくれば、グリベックが効いていないことになるからです。

問題は、手術で腫瘍を切除した後、再発予防の目的(術後補助化学療法)でグリベックを使用する場合。

「再発すれば効いていないとわかりますが、再発がない場合には、本当に薬が効いているのかどうかわかりません。術後の再発予防の目的でグリベックを使う場合には、効果がない人に投与しないためにも、遺伝子検査をして、グリベックが効くかどうかを確認しておく必要があるでしょう」

グリベックは、c-KITという遺伝子の働きを阻害する薬です。c-KITは腫瘍細胞の増殖などに関わっているので、その働きを阻害することによって治療効果を発揮します。したがって、c-KIT陰性のGISTには、グリベックは効果がないことがわかっています。

「GISTの患者さんの80~85%くらいはc-KIT遺伝子をもっているので、進行・再発GISTには原則としては投与していいと思います。ただ、術後の再発予防では、遺伝子検査が必須であると考えるべきです。手術で切除した検体があり、それで検査すればよいので、患者さんに負担をかけることもありません」

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