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全身状態、併存疾患、薬の副作用も考慮

高齢者は前立腺がん治療法の長所・短所を理解して選択

監修●上村博司 横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器科学准教授
取材・文●池内加寿子
発行:2015年3月
更新:2019年7月

  

「高齢前立腺がんの患者さんは併存疾患や治療の副作用に注意してください」と話す上村博司さん

社会の高齢化とともに前立腺がんは急増し、2020年ごろには胃がんを抜いて男性がん罹患患者数のトップになると予測されている。多様化している前立腺がんの治療法に対し、高齢の前立腺がん患者さんは、どんな治療法を選び、どんな点に注意したらいいのだろうか。

前立腺がんは60代から急増 75歳以上の高齢者も多い

近年、前立腺がんは急速に増加している。罹患者数は胃がん、肺がん、大腸がんに次いで多く、65歳以上の男性ではトップとなっている。今後10年間で、団塊の世代の高齢化とともにさらに増え、男性のがんでは最も多くなると予想される。横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器科学准教授の上村博司さんは、次のように話す。

「前立腺がんは食生活と関係が深く、脂肪摂取量の増加とともに増えています。遺伝的素因とも関連があり、親兄弟に前立腺がんの患者さんが1人いると発症リスクは2倍、2人では5倍、3人では11倍と高くなります。前立腺がんの大きな特徴は、高齢者に多いことです。60代から急増し(図1)、5歳階層別に男性の罹患者数を分けると75~79歳で最も多く発見(診断)されています。当院でも、75歳以上の後期高齢者が4分の1を占めています」

図1 前立腺がんは60歳以上で急増

国立がん研究センター がん対策情報センター2010年
図2 前立腺がん発見時の進行度の割合

横浜市大関連21施設 新患数(年間):2,069例

以前は、前立腺がんの診断時に骨転移のある人が5割を超えていたというが、近年、PSA(前立腺特異抗原)検診の普及に伴い早期に発見される例が増えてきた。PSAが4~10ng/mlでは約3割、10ng/ml以上では5割以上で前立腺がんが見つかるという。

「当院の関連施設(神奈川県内の約半数の病院)のデータでは、局所浸潤や転移のある進行がんで発見される方が3割、なかでも診断時に骨転移のある人が1割弱います(図2)。米国では、進行がんで見つかる人はわずか3%。日本ではとくに地方でPSA検診が遅れており、進行するまで気づかないケースがまだ多いということでしょう。また、前立腺がんは年齢が高くなるほど、悪性度の高い人が多くなります」

75歳以上では全身状態と併存疾患の有無が治療の決め手

患者さんの年齢は、治療選択にどのように影響するのだろうか。

「75歳が1つのポイントになります。早期がんの場合、75歳未満では、積極的な治療(手術、放射線といった根治的な治療)を検討します。低リスクならPSAの監視療法(無治療)で経過を診ていく方法もありますが、希望者は少数です。75歳以上では、全身状態(PS)と併存疾患の有無が治療法の選択に大きく影響し、全身状態がよく、併存疾患がない場合は、患者さんの希望によって積極的な治療を考慮します。実際には、全身麻酔をかけ、入院期間が長期化する手術は難しい場合が多く、放射線治療をお勧めするケースが多くなっています。

近年多くなっているロボット支援前立腺全摘術は、頭を極端に下げる体位をとるため、60代ぐらいの元気な方が対象になることが多いですね。心臓病や緑内障をお持ちの方には向きません」

全身状態のよしあしは、❶併存疾患(重度の心疾患、糖尿病、脳梗塞の既往等)がない、❷栄養状態が良好(口から食べられる)、❸自力歩行(または運転)で通院できる、❹認知力、判断力がある、❺痛みがない、などの点で判断するという。

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