再発・転移特集/再発・転移の基礎知識

編集●「がんサポート」編集部
発行:2016年2月
更新:2018年11月

  

がん患者の約7割でみられる「再発・転移」。この再発・転移が最終的な予後を決定すると言われる。「再発・転移」の基礎知識について、各種の資料をもとにまとめた。

再発・転移とは

縮小したがんが再び大きくなったり、別の場所に同じがんが出現

「再発」とは、手術で取り切れていなかった小さながんが残存していて、再び現れたり、薬物療法や放射線治療で一旦縮小したがんが再び大きくなったり、別の場所に同じがんが出現することを言います。

また、治療した部位の近くで再発を指摘されるだけでなく、別の部位で「転移」としてがんが見つかることも含めて再発と呼びます。血液やリンパのがん、前立腺がんなどの場合には、「再燃」という言葉が使われます。

転移がんは、最初に発生した部位から身体の別の部位に拡がったがんのことを言います。転移したがん細胞により形成されたがんのことを、転移巣または転移と呼びます。また、がん細胞が身体の他の部位に拡がる過程のことも転移と呼びます。

転移がんは原発がんと同一

転移がんでは、がん細胞の名称やタイプは元のがん、つまり原発のがんと同一です。例えば、乳がんが肺に波及して形成された転移巣は転移性乳がんで、肺がんではありません。

顕微鏡下では、転移したがん細胞は元のがん細胞と同じように見えます。さらに、転移したがん細胞と元のがんのがん細胞では、通常、特定のタンパク質発現や染色体突然変異といった分子学的特性も共通しています。

がん種と転移部位(臓器)

図1 がん種と転移部位(臓器)

がん種により転移しやすい部位がある

がんによって転移しやすい部位のあることが知られています。

例えば、肺がんは脳、乳がんは骨、大腸がんは肝臓、肺などです(図1)。

転移の機序――どのようにして起こるか?

転移は下記のような機序(メカニズム)で、近隣の組織・臓器、また血流やリンパの流れに乗って、全身に移動し、定着・増殖していきます。

局所浸潤:がん細胞が隣接する正常組織に浸潤する

脈管内侵入:がん細胞が付近のリンパ管や血管を侵襲し、壁を通過する

脈管内移動:がん細胞がリンパ系や血流を介して身体の別の部位に移動する

接着および脈管外遊走:身体の離れた部位で、毛細血管と呼ばれる細い血管内にがん細胞が接着するか、または移動を停止。次に毛細血管壁に侵入し周辺組織に遊走していく(脈管外遊走)

増殖:がん細胞が離れた部位で増殖し、微小転移巣と呼ばれる小型の腫瘍巣を形成する

血管新生:微小転移巣が新しい血管の成長を促進して血液供給を確保。腫瘍が成長し続けるためには、血液供給による酸素や栄養素の確保が必要となる

他臓器・全身への転移の仕方

図2 他臓器・全身への転移の仕方

国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターHPより(一部改変)

血行性転移:がん細胞が最初に発生した場所(原発巣)から、血管(主に静脈)に入り込み、血液の流れに乗って別の臓器や器官に移動し、そこで増殖することを意味します

リンパ行性転移:がん細胞が最初に発生した場所(原発巣)からリンパ管に入り込み、リンパ液の流れに乗って、途中のリンパ節に流れ着いて増殖することを意味します

腹膜播種(腹膜性転移):腹膜などの漿膜の表面にがんの浸潤が進み、腹腔などの内部で増殖・拡大し、離れた漿膜の表面に転移巣が作られることを意味します(図2)

転移の診断

画像診断:超音波エコー、CT、MRI、PET、骨シンチグラフィなど

血液検査:腫瘍マーカーなどの検査

細胞診:針生検など

転移の治療

転移がんの治療法には全身療法(化学療法、生物学的療法、分子標的療法、ホルモン療法)や局所療法(手術、放射線療法)、または両者を併用する方法があります。一般的に、治療法は原発がんのタイプ(大きさ、位置、転移巣の数)、患者さんの年齢や全身状態(PS)、また、これまでに患者さんが受けた治療の種類をもとに選択します。

<参考情報ソース>
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターHP
日本がん転移学会HP
海外癌医療情報リファレンス
NIH National Cancer Institute

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