QOLを落とさないための自己管理

複合的な治療で改善する 上肢リンパ浮腫のセルフケア

監修●辻 哲也 慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室准教授
取材・文●『がんサポート』編集部
発行:2014年3月
更新:2014年6月

  

「自己管理すればよくなります」と話す辻 哲也さん

乳がんなどの手術で脇の下のリンパ節を切除しリンパ管に傷がつくと、リンパ液の流れが車の渋滞のように滞ってしまうことがあります。その結果、腕にリンパ液が溜まるリンパ浮腫が生じることがあります。リンパ浮腫は一度悪化すると改善することが難しいため、きちんとケアをすることが必要となります。

まずは早期発見を

写真1 リンパ浮腫の症状が現れた腕

乳がんなどでは、脇の下にあるリンパ節(腋窩リンパ節)を取り除く(郭清)手術や放射線治療により、リンパ管を傷つけることがあります。その結果、リンパ液の流れが滞ってしまい、写真1のような腕がむくんで、いわゆるリンパ浮腫の症状が現れます。

リンパ浮腫は、リンパ節を取り除く手術を受けたすべての患者さんがリスクの対象となるので注意が必要です。症状は1度悪化すると改善には時間を要するため、日ごろのケアと早期発見を心掛けることが大切です。早期発見には日ごろの観察が有効です。観察では、図2のように腕の決まった位置を同じ時間に測定し、日々の変化を把握しましょう。

リンパ浮腫は進行度によって、表3のように大きく4つの進行期に分かれ、それぞれの症状に適した治療が複合的に行われます。

図2 リンパ浮腫の経過観察

四国がんセンター:上肢用パンフレット
表3 リンパ浮腫の進行度

リンパ浮腫治療研究会編著:リンパ浮腫 診療の手引き、メディカ出版、大阪、2007

症状がなければ 日常生活を見直す

リンパ浮腫の治療はリンパ節を郭清した段階(0期)から始まります。

まずは、表4のような日常生活での注意を取り入れ、生活習慣を見直していきます。

本来、皮膚には外部からの刺激から守るバリア機能があります。ところが、リンパ浮腫の症状があるとうまくその機能が働かなくなってしまいます。悪循環を招かないためにも意識することが大切です。

まずはの皮膚を傷つけないように心掛けます。庭いじりなどは虫刺されや、腕への負担が大きいので、できるだけ避け、どうしても作業を行う必要がある場合はゴム手袋を使うなどして、傷をつけないように気をつけます。採血は手術と逆の側の腕で行いましょう。

の皮膚を清潔に保つためには、外出後などは泡立てた石けんを使い、皮膚を傷つけないように洗います。皮膚は乾燥するとひび割れします。そこから細菌が入り、感染症の原因になります。市販の保湿剤などを使って乾燥から身を守りましょう。水虫や湿疹などもリンパ浮腫の症状の悪化の原因になるので、早めに対処することが大切です。

一日中の立ち仕事などで、夕方になると足がむくんでくるという経験があると思います。腕も同じように、腕に必要以上の負担を与えてしまうと、リンパ浮腫の症状が現れたり、悪化したりするので注意しましょう。

重い荷物の運搬や、テニスのような激しい運動を避けましょう。部分的にきつい締め付けがあるような下着も悪化の原因となります。血圧を測定する際は手術と逆の側の腕で行いましょう。

その他、リンパ液は重力の関係で、心臓より下に溜まりますので、図5のように少し腕を拳上して睡眠を取ることにより、むくみの予防・軽減が期待できます。

表4 リンパ浮腫に対する日常の注意点
図5 睡眠時の工夫

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