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化学療法の副作用対策の重要性を、患者さん自らしっかりと理解することが大切
注目!粘膜炎(下痢・口内炎)の改善が期待される成分栄養剤

監修:瀧内 比呂也 大阪医科大学内科学講座教授化学療法センター・センター長
取材・文:「がんサポート」編集部
(2011年8月)

  

瀧内比呂也さん 粘膜炎のコントロールは、
治療継続にとても重要と語る
瀧内比呂也さん

がん治療では抗がん剤によって消化管の粘膜に障害を受ける粘膜炎(下痢・口内炎)という副作用がよく起こる。
しかし、それを抑える有効な治療法がこれまでなかった。そこで、この粘膜炎に対する効果が多数報告されはじめた成分栄養剤が注目されている。
この成分栄養剤の新しい可能性について、外来化学療法治療の最前線に立つお3方に訊いてみよう。

成分栄養剤の新たな可能性が全国学会にて紹介される

第22回在宅医療学会での瀧内さんの講演
第22回在宅医療学会での瀧内さんの講演

今年6月26日、日本在宅医療学会の主催で第22回日本在宅医療学会・学術集会が開催された。今回のテーマは「医の原点から見た在宅医療」。その内容は、7つに分かれた演目のうち、5つまでが在宅医療における副作用対策および外来化学療法に対するチーム医療のあり方となっている。在宅医療では、患者さん自身が副作用をコントロールしていく必要があるため、外来での副作用対策に対する研究熱が年々高まってきている。

この学術集会で、がんサポート編集部が以前から注目してきた口内炎など消化管の粘膜に起きる副作用について、興味深い講演を行った医師がいる。大阪医科大学化学療法センター、センター長の瀧内比呂也さんだ。

ではその講演内容をまとめてみよう。

有効な治療薬がなかなか見つからない粘膜炎対策

「最近のがん治療では、外来化学療法が一般化してきています。これには良い面と悪い面があり、良い面は、在宅で治療することによって日常的な生活を維持でき、QOL(生活の質)を維持しやすいという点です。一方悪い面は、化学療法による副作用を自宅でコントロールする必要があるという点です」

なかでも瀧内さんが注目しているのは口内炎を始めとする消化管の粘膜障害だ。

「まず、口内炎や下痢などの粘膜障害には、残念ながら今現在、特効薬というものがありません。しかし、化学療法を受ける患者さんの約40パーセントに口内炎などの粘膜障害が起こり、さらにそのうちの約50パーセントの患者さんは強い症状を訴えています。とくに食道がんや頭頸部がんなどでは放射線治療を行うため、口内炎などは必発といっていい状況です。そして症状がひどい場合は食事ができなくなります。食べられないということは全身状態の悪化につながるので、治療を中断しなければならないという事態も起こりえます」

がん化学療法では治療の継続、治療計画の完遂ということが極めて重要だ。そのために、それぞれの施設でいろいろな工夫がされてきている。

[図1 粘膜炎に対する薬剤は?]
図1 粘膜炎に対する薬剤は?

「たとえば氷をなめる、うがいをするなどの方法が昔から考えられてきたのですが、そうした方法ではどうしても限界があり、粘膜炎に対する対策は手詰まり感に支配されてきたというのがこれまでの実態だと思います。粘膜炎に対する臨床試験は、近年、乳がんの領域において化学療法による比較試験が報告されています。プラセボ(偽薬)に比べてグルタミンを投与した群で粘膜炎に対する効果が有意に認められ、海外ではMASCC(がん支持療法多国籍学会)のガイドラインで乳がん患者に対するグルタミンの投与が認められています。しかし、それでも確実に有効であるとするエビデンス(科学的根拠)にはまだ乏しく、国内では承認された有効な薬剤もまだないというのが現状です」(図1)

しかし最近、状況は少し変わってきたと瀧内さんは言う。

副作用対策の知識を深めることが、患者さんにとって重要

[図2 粘膜炎対策に期待できる成分栄養剤]
図2 粘膜炎対策に期待できる成分栄養剤

「ここで1つの可能性として、最近私が注目しているのは成分栄養剤といわれるエレンタールです。消化器症状が起きている患者さんにグルタミンだけを投与しても、実はなかなか症状緩和につながらないという報告もあります。これに対して、クローン病などで消化器の非常に弱った患者さんに投与する栄養剤のエレンタールを投与すると、栄養補給になると同時に、エレンタール自身にグルタミンも含んでいますので、消化器症状の予防効果があるという研究が、これまで全国でいくつか発表されています。私も消化器のドクターなので、その経験から言いますと、手詰まり感のある粘膜炎対策の中で、エレンタールが持つ可能性は非常に期待でき、ぜひ今後試されていくべきものだろうと思っています」

今後、このようなエレンタールの粘膜炎修復効果に関する研究を続けていけば、きちんとしたエビデンスが積み上がって行くと瀧内さんは見ているようだ(図2)。

最後に、エレンタールのような最新の研究結果も含め、がん化学療法における支持療法の重要性を、医療スタッフだけでなく、患者さん自身がしっかりと理解していくことが、外来化学療法が増えている時代にあって最も重要なのだと訴えた。そのためには、医療従事者側から患者さんへの指導・教育の徹底も不可欠なのだと強調していたのが印象的だった。




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