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漢方薬の効果を科学的に証明した臨床試験結果を紹介!

抗がん薬の副作用で起こる口内炎を短期間で治す漢方薬「半夏瀉心湯」

監修:三嶋秀行 愛知医科大学病院臨床腫瘍センター教授・治験管理センター長
取材・文:柄川昭彦
発行:2013年4月
更新:2014年3月

  
三嶋さん 「口内炎は医師や看護師に
伝えることが大切」
と話す三嶋さん

「半夏瀉心湯」を水に溶かしてうがいをすることで、抗がん薬の副作用で起こる口内炎は早く治る。評価が難しかった漢方薬の効果が、二重盲検無作為化試験で、科学的に明らかにされた。

よく効く治療法がなく軽視されてきた口内炎

がんの化学療法では、副作用として口内炎が現れることがよくあるが、医学的にはあまり問題にされてこなかった。その理由について、愛知医科大学病院臨床腫瘍センター教授の三嶋秀行さんは次のように語っている。

「なぜ関心が低いのかといえば、いい治療法がないからです。口の中を清潔にしたり、化学療法を行うときに氷などで口の中を冷却したりする対策がとられてきましたが、効果は十分なものではありません。ステロイド含有の貼付剤が市販されていて、これが病院で処方される薬より効くといわれているほどです」

効果的な対策がないため、口内炎の患者さんは苦労している。ところが、医療者側がそれを真剣に受け止めてきたかというと、必ずしもそうではないようだ。

「副作用の程度はグレード1~4の4段階で表されますが、口内炎のほとんどはグレード2まで。グレード3以上だと、抗がん薬の減量や休薬も考慮されますが、グレード2までの口内炎なら、とくに問題はなしということで、そのまま化学療法は続行されます」

口内炎のグレードは、次のように分けられる。

グレード1……症状がないか、または軽度の症状がある。
グレード2……中等度の疼痛がある。経口摂取に支障はないが、食事の変更を要する。
グレード3……高度の疼痛があり、経口摂取に支障がある。
グレード4……生命をおびやかす状況

グレード2の「食事の変更を要する」とは、痛かったりしみたりして、食べられない食品があるということ。こうなると、患者さんのQOL(生活の質)は低下する。

病院にくるときにはよくなっている

■図1 化学療法による口内炎発生メカニズム]
■図1 化学療法による口内炎発生メカニズム?

現在、抗がん薬治療の多くは通院で行われる。病院で抗がん薬が投与されると、次に患者さんが病院にくるのは、次回投与が行われる2~3週間後ということが多い。

「抗がん薬の副作用で口内炎になり、食事で苦労したりするのは、患者さんが自宅で生活しているときです。痛みのために、まともに食事ができない日があっても、しだいによくなり、次に病院に行くときまでには、かなり回復していることが多いのです」

病院では、抗がん薬を投与する前に患者さんの健康状態をチェックする。そのときに食事ができていれば、特に問題はないと判断されてしまうことが多いわけだ。

このように、抗がん薬の副作用で現れる口内炎には、軽視されがちな背景がある。それを救い上げて、患者さんの苦痛を解消していく必要がある。そのためにも、効果的な治療法が必要とされていた。

その一方で、抗がん薬の副作用で発生する口内炎については、基礎的な研究が進み、発症のメカニズムが次第に明らかになってきていた(図1)。

抗がん薬の作用で発生する活性酸素によって粘膜細胞が傷害され、プロスタグランジンE2が神経細胞に作用することで痛みが起こり、免疫低下によって細菌などが繁殖する。こうして粘膜が障害され、痛みが起こり、細菌感染で傷害が悪化するのである。

発生メカニズムが明らかになれば、それに対する対処法も見えてくる。効果的な治療法が登場してくることが期待されていた。

口内炎にはいろいろな漢方薬が使われてきた

漢方医学の分野では、口内炎の治療にさまざまな漢方薬が使われてきた。それらの処方構成を調べてみると、共通する生薬が配合されていることが多いことがわかる(表2)。

「最近は漢方薬の臨床試験も高いレベルで行われるようになっていますが、口内炎の治療に関しては、対照群にプラセボ(偽薬)を使った比較試験は行われていませんでした。そこで、西洋薬と同様に効果を確認しようということになり、半夏瀉心湯の臨床試験が行われることになったわけです」

半夏瀉心湯は、これまでも下痢に効く薬としてよく使われている漢方薬だ。さらに、漢方薬の基礎的研究を進めてきた札幌東徳州会病院の河野透さんが、半夏瀉心湯を口内炎の局所に塗布したり、水に溶かしてうがいしたりすることで、治療効果が上がることを、少数例の研究で明らかにしていた。

こうした背景があって、口内炎に対する半夏瀉心湯の二重盲検無作為化臨床試験がスタートすることになった。二重盲検試験とは、プラセボを使う対照群と比較する試験のこと。無作為化とは、患者さんを無作為にグループ分けすることを意味する。科学的に薬の効果を評価するためには、こうした試験が必要になるのである。

■表2 口内炎に処方される漢方薬と成分、現在考えられる効果

甘草湯 組成:甘草
消炎効果が高い甘草単味を用いる。甘草の主成分のグリチルリチン酸モノアンモニウムが有効とされている。ペインコントロール目的で含嗽剤としても使える
半夏寫心湯 組成:半夏、黄ゴン(草冠に今)、乾姜、人参、甘草、黄連、大棗
口内炎の痛みは感覚神経のプロスタグランジンE2(PGE2)で誘発されると考えられている。半夏寫心湯は炎症部位のPGE2を抑制することで、痛みを抑える可能性が報告されている。黄連の主成分であるベルベリンには強い抗菌用があり、口内炎に有効であるとされている。消炎効果が高い甘草も含まれている
黄連湯 組成:黄連、桂枝、半夏、乾姜、人参、大棗、甘草
成分は半夏寫心湯と似ている。半夏寫心湯の黄ゴン(草冠に今)が桂枝に替わり、消炎作用の強い黄連が倍量になっている
黄連解毒湯 組成:黄連、黄ゴン(草冠に今)、黄柏、山梔子
効能に口内炎はないが、黄連と黄ゴン(草冠に今)が含まれているので効果があると考えられる
小柴胡湯 組成:柴胡、半夏、黄ゴン(草冠に今)、大棗、人参、甘草、生姜
組成は半夏寫心湯と似ている。半夏寫心湯の黄連が柴胡に替わり、乾姜が生姜に替わっている
温清飲 組成:当帰、地黄、芍薬、川キュウ(草冠に弓)、黄連、黄ゴン(草冠に今)、山梔子、黄柏
黄連解毒湯と四物湯の合方である、効能に口内炎はないが、口内炎をくり返すベーチェット病に有効といわれている。黄連と黄ゴン(草冠に今)が含まれている
茵チン(草冠に陳)蒿湯 組成:茵チン(草冠に陳)蒿、山梔子、大黄
大黄には粘膜保護作用がある
白虎加人参湯 組成:石膏、知母、粳米、甘草、人参
シェーグレン症候群や放射線治療による口腔内乾燥症に対しても用いる。唾液分泌亢進作用は、ムスカリンM3レセプターを介したアクアポリン5の発現によると推測されている

出典 : 『臨牀消化器内科』Vol.28 No.2 2013 「消化管疾患に対する漢方医療の実際(6)口内炎」三嶋秀行

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