がん看護専門看護師 山田みつぎの

副作用はこうして乗り切ろう!「性機能への影響」

監修●山田みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長
構成●菊池亜希子
発行:2016年3月
更新:2018年2月

  

がん看護専門看護師の
山田みつぎさん

1度、性機能にダメージが生じると、回復に時間がかかったり、場合によっては永久的に元に戻らないこともあります。だからこそ、治療法を決めるとき医師から十分に話を聞き、パートナーとよく話し合っておくことが重要です。体の変化や心の状態をパートナーに伝え、一緒に考えていくことが大切です。お互いにいたわりあう気持ちが、何よりの薬ですから……。

やまだ みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長。2006年日本看護協会がん化学療法看護認定看護師認定。11年聖隷クリストファー大学大学院博士前期課程修了(看護学修士)。同年、がん看護専門看護師認定。13年より現職。日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本看護研究学会所属

なぜ勃起障害が起こるのか

性機能への影響とは、性交にかかわる機能がダメージを受けて、性交渉そのものが難しくなることを意味します。手術や化学療法によって起こることがあり、軽視できない副作用です(図1)。

図1 抗がん薬治療後の性障害の傾向

Laumann EO, paikA, Rosen RC:JAMA1999,281;537-544

今回は、がん治療全般による性機能への影響について述べていきましょう。

まず、手術による性機能への影響を、男性と女性に分けて見ていきます。

男性の場合、本来、感情の興奮や外陰部への刺激が勃起を促し、精液が尿道に排出されて尿道圧が高まり、陰茎筋の収縮が起こって射精されます。これらの機能をつかさどる神経や血管が、骨盤内と腹部大動脈の周辺に集中していますので、骨盤内臓器を手術する場合や、リンパ節郭清術の場合は、これらが損傷しやすいので勃起障害や射精障害が起こるのです。

前立腺がん、膀胱がん、精巣がん、腎臓がんといった泌尿器系がんと直腸がんの術後に起こりやすいといわれています。

とくに前立腺の摘出手術は、骨盤内の神経を切らざるをえないので、勃起はまず難しくなります。膀胱がんの手術も、切除する部位や範囲によりますが、前立腺に近接していますので、やはり厳しいと思います。

ホルモンバランスの乱れも要注意!

女性の場合、骨盤内の神経を傷つける可能性が高い直腸がんや膀胱がんの手術を受けても、性機能自体に影響はありません。しかし、卵巣がんや子宮体がんや子宮頸がんなど、婦人科系がんの術後に影響を及ぼします。

卵巣がんは、卵巣そのものを摘出することがほとんどです。卵巣は女性ホルモンの分泌をつかさどる大切な組織。左右2つあるので、どちらか片方の卵巣が残っていれば、分泌されるため性機能は保たれるのですが、両方の卵巣を摘出した場合、ホルモンバランスが大きく崩れて膣からの分泌物が急激に減少し、性交渉が難しくなったり、不快感が生じてしまうのです。

また、子宮がんで子宮を全摘する場合、膣も数㎝切除します。切除する長さは病状によって異なりますが、通常12~15㎝ある膣が、10㎝未満になる場合が多く、そうなると性交時に、男性器が入りにくくなってしまうのです。そのような状態で無理な性交渉が行われると、強い痛みを伴ったり、術後間もないと傷口が開いて、そこから細菌が入ってしまうこともあるため、とても危険です。

大切なことは、これら手術後の体の変化を男性も女性も十分に理解して、女性の体をいたわる姿勢をもつことだと思います。

しかし、子宮を摘出しても、卵巣が残っていれば女性ホルモンは分泌されるので、膣からの分泌物は術前と同じようにあります。手術で膣が短くなり一時的に性交渉が難しくなっても、時間とともに少しずつ膣の収縮力も戻り、数カ月で手術前とそう変わらない感覚を取り戻すことができるので、気に病まずに待って欲しいです。ただ、子宮を摘出すると、たとえ卵巣からホルモンが出ても、着床できなくなるので、妊娠は不可能になります。

薬物による精巣や卵巣へのダメージ

次に、薬剤による影響を見ていきます。

抗がん薬は細胞分裂が盛んな組織に大きく作用するため、精巣や卵巣などが抗がん薬の影響を強く受けます。

精巣への影響が強い抗がん薬は、エンドキサン、ブリプラチン/ランダ、アルケラン、ナツランなど(表2)。どれも精巣の萎縮や無精子症を引き起こしやすく、不妊の原因に。また、ブリプラチン/ランダといったプラチナ系薬剤は骨盤内神経にも作用し、勃起障害を誘発しやすいです。

表2 男性の機能障害を起こす抗がん薬
表3 抗がん薬治療による卵巣機能障害

25歳以下の女性の80%は化学療法後に通常の月経がある
40歳以上の女性の90%は化学療法後に永久的月経の停止が起こる可能性が高い
菅野かおり:がん化学療法による女性の性腺機能障害、がん看護。10(1)、2005 がん化学療法と看護No.15より部分引用

卵巣には、ほとんどの抗がん薬が直接作用し、卵巣機能の低下を招きます(表3)。とくに卵巣への影響が強いのがエンドキサン、アルケランなどの抗がん薬です。

卵巣の機能が低下すると、一時的に無月経となったり、そのまま閉経する場合があり、不妊の原因になります。

また、女性ホルモンも分泌されにくくなるため、膣の分泌物が減って、性交渉にも影響を及ぼす可能性があります。

また、男性は前立腺がん、女性は乳がん治療で、ホルモン療法が用いられます。どちらもホルモン分泌を抑える治療法のため、やはり性機能低下を招きます。男性では勃起障害、精巣萎縮、性欲減少、女性では膣の分泌物減少、性欲減少、性交疼痛といった症状が見られます。

エンドキサン=一般名シクロフォスファミド ブリプラチン/ランダ=一般名シスプラチン アルケラン=一般名メルファラン ナツラン=一般名プロカルバジン

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