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楽・得 がんケアのABC

第4回 老化やがんに密接に関係する終末糖化産物 AGEをためない食生活を心掛けよう!

監修●山岸昌一 昭和大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科学部門主任教授
取材・文●小沢明子
発行:2020年12月
更新:2020年12月

  

「AGEをためない食生活習慣に気を配ってみてはいかがでしょうか」と語る山岸昌一さん

「AGE」という言葉をご存じですか。

AGEとは、タンパク質と糖が加熱されてできた物質のことで、「終末糖化産物」とも言います。最近、このAGEが老化に深く関わっていることがわかってきて、今とても注目されています。

今回は、AGEと老化やがんとの関係性や、AGEを体内にため込まない食生活について、昭和大学医学部内科講座糖尿病・代謝・内分泌内科学部門主任教授で、AGE研究の第一人者である山岸昌一さんにお話を伺いました。

AGEは「劣化したタンパク質のなれの果て」

AGE(Advanced Glycation End Products:終末糖化産物)とはどのようなものかを説明するときに、わかりやすい例としてよく使われているのがホットケーキです。ホットケーキは小麦粉や砂糖、卵、牛乳などを混ぜ合わせて焼いたもので、表面がこんがりとしたキツネ色をしています。このキツネ色の部分は、タンパク質と糖が加熱によって結びついて「糖化」したもの。この現象はメイラード反応とも呼ばれています。

糖化は食品だけに起こるわけではありません。ヒトの細胞や組織の多くはタンパク質からできています。ですから、体のいたるところで糖とタンパク質が結びつき、体温によって温められ糖化現象が起こります。

AGEは糖化が進行したもので、いわば「劣化したタンパク質のなれの果て」とも言えます。体内に余分な糖があるほど、たくさんのAGEが作られていくというわけです(図1)。

AGEは、老化を進める原因物質であることが明らかになっています。老化というと、シワやシミなど外見を思い浮かべる人が多いと思いますが、老化は美容の問題だけではなく全身の健康にも大きな影響を及ぼします。

例えば、血管はコラーゲンなどのタンパク質でできていますが、血管のコラーゲンにAGEが蓄積されると動脈硬化が起こりますし、骨に蓄積すると骨粗鬆症、目に蓄積すると白内障になってしまいます。また、アルツハイマー病や生活習慣病の1つであるがんにもAGEが関わることが報告されています。

AGEとがんとの関係は?

では、がんとAGEはどう関わっているのでしょうか。山岸さんは、30年以上も糖尿病患者さんの治療に関わり、がんで亡くなる糖尿病患者さんが多いことに気づいたそうです。

「とくに血糖値の高い糖尿病患者さんで、がんができやすいようです。AGEは血糖値が高く、それが長く続くことで多く作られ、体内にたまっていきます。そこでAGEががんに関わっているのではないかと考えたわけです」

さらに、「たばこの中にもAGEが含まれています。そして、たばこを吸うことで体の中にAGEが取り込まれることもわかってきました。喫煙者は、禁煙してから10~20年経ってもがんの発症リスクがまだ高いままです。喫煙によって体にたまってしまったAGEが長い期間をかけて悪影響を及ぼしている可能性も考えられます」

「実際、AGEとがんとの関わりについて研究してみると、AGEが蓄積されるとがん細胞が増えやすいこと、また、転移しやすいことがわかってきました。ですから、AGEをためない生活に気を配ることは、がんの発症や再発の予防に役立つかもしれません。

さらに、近年はがん治療が進み、がん患者さんも根治(こんち)する方が増えています。がん発症後も健康寿命を担保して自立した生活をおくっていくために、AGEを制御していくことはとても大切なことではないかと思います」

下の血圧が低いとAGEがたまっている可能性がある

AGEが老化だけではなく病気の原因にもなるのであれば、自分の体内にはどのくらいたまっているのか気になります。シミが増えてきた、フケ顔になった気がすると感じたら、AGEがたまってきたのかもしれません。

「そもそも皮膚はコラーゲンや弾性組織などのタンパク質でできています。コラーゲンにAGEができると、硬くなって弾力性が失われ、シワやたるみが出てきます。髪の毛のタンパク質にAGEがたまると毛乳頭に炎症が起こり、髪が細くなって薄毛になります」

見た目の老化のほかに、AGEのたまり具合を知る方法はあるでしょうか。

「体内でできるAGEの量は『血糖値×持続時間』で表すことができます。つまり血糖値の高い状態が長く続けば続くほど、多くのAGEが発生することになります。そして体内にAGEがたまると関節が硬くなったり、血管が硬くなったりします。

血管が硬くなりしなやかさを失うと、下の血圧(心臓から血液が出されていないとき)が低くなります。上の血圧は高いのに、下の血圧はむしろ低い。例えば、上が140㎜Hgで下が60㎜Hgのような場合は、AGEがたまっている可能性があります。

AGEがたまっているかどうかを知りたいときは、自分の食生活を振り返ってみましょう。毎日揚げ物や加工品、菓子を食べたり、甘味飲料水を飲んだりする食生活は、AGEをためこみやすくなります」

AGEの蓄積をできるだけ抑える食生活

AGEがたまっていく仕組みは、「AGEを多く含む食べ物をとることで体内に入ってくる」場合と、「高血糖状態が長く続くことによって体内で作られる」場合の2通りがあります。

ですから、AGEを多く含む食べ物をできるだけ避けるようにし、食後の血糖値の上昇を抑えることが、AGE対策のポイントになります(図2)。

がんが完治した方もがん治療を継続中の方も、糖の取り過ぎや加工品、揚げ物の食べ過ぎに注意して、血糖値に気をつけながら、AGEを体内に蓄積させないようにしたいものです。

山岸さんによると、具体的には次のような食生活が有効とのことです。

●高温で調理したものをとり過ぎない

通常、高温で揚げたり、焼いたり、炒めたりしたものにはAGEが多く含まれています。ステーキや焼き魚、唐揚げやとんかつなどを頻繁に食べている人ほど、AGEをためやすくなります。反対に、肉料理ならしゃぶしゃぶ、蒸し鶏、魚料理なら刺身や煮魚はAGEが少ない料理です。生野菜を積極的に食べるのも良いと思います。

AGEにかぎらず、劣化した油による健康被害が報告されています。また、高温で調理した場合は食品中に発がん物質の1つであるアクリルアミドが生成する可能性もあります。その意味からも揚げ物や焼き物に偏った食事はしないほうが良いでしょう。

●キチン・キトサンを多く含んだものをとる

AGEが体内で吸収されるのを防いでくれる食品として、まいたけなどのキノコ類や桜エビがあげられます。キノコ類などに含まれるキチン・キトサンは体内でAGEの吸収を抑えてくれる可能性があります。

●食物繊維の多いものを選ぶ

例えば、白米よりも玄米や胚芽米、食パンよりも全粒粉パンなどの「精製されていない糖」を選べば、血糖値の上昇が抑えられます。

「精製された糖」とは、菓子類やジュースなどに含まれている糖や、調味料として使う砂糖のことです。これらは吸収されやすく、血糖値を上げやすいので控えるようにしましょう。

このほか、野菜や海藻、キノコ類には、糖の吸収を阻害する働きのある食物繊維が多く含まれています。また、オクラや納豆、モロヘイヤなどのネバネバ食品、酢やレモンなども血糖値の上昇を抑える働きがあります。

●野菜やキノコから先に食べる

食べ方や食べる順番も大事です。これらに気をつけることで血糖値の上がり具合はかなり変わってきます。

食べ方の順番は、食物繊維の多い野菜やキノコ、海藻などから先に。糖質を多く含むご飯やパンなどの主食は後で食べましょう。糖の吸収のスピードが抑えられます。

●機能性の高い野菜をとる

機能性の高い野菜をとるようにします。とくにブロッコリースプラウト、芽キャベツ、ケール、カリフワラーなどのアブラナ科の野菜は、スルフォラファンが含まれ、体内でAGEが作られるのを抑えてくれます。

●肉は加熱前にレモン汁や酢に漬ける

酢やレモンに含まれる酸は、食品を加熱したときAGEを生成しにくくします。肉料理の場合、揚げたり焼いたりする前にレモン汁に10~15分ほど漬け込んでおくと、AGEの生成量が半分に減ったというデータがあります。

その他、うどんよりそば、炊きたてご飯より冷やご飯、ジャガイモよりサツマイモ、パスタならアルデンテ、魚なら刺身や鍋物、ファストフードはなるべく避けるなど。

食事はゆっくりよく噛んで、野菜などから先に、主食は後にとるような食べ方・食べ順で。また、食後に適度な運動を取り入れることも血糖値の上昇を抑える効果があります(図3)。

「人の体はタンパク質からできていますし、糖は必要不可欠なエネルギー源ですから、AGEの蓄積をゼロにすることはできません。しかし、ここにあげたような食生活の工夫と適度な運動で生活習慣病の原因物質の1つであるAGEを増やさないようにできるのです」と山岸さんは話を結んだ。

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