がんのチーム医療・施設訪問2 川崎市立井田病院(神奈川県)

緩和ケア施設と一体化した緩和ケアチーム

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2014年6月
更新:2014年9月

  

緩和ケアの一貫したサポート体制を整えて 地域医療を担う
宮森 正さん 川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター所長

井田病院では、将来の高齢化社会を見越して、1998年(平成10年)に「緩和ケア」「高齢者ケア」「在宅ケア」「地域連携」の4つの目標を掲げて「総合ケアセンター」を開設した。

あくまで地域市民病院なので、がんだけではなく、地域社会のいろいろな病気をきちんと診るということが基本となっている。他領域の治療ができるため、合併症をもつことの多いがん患者さんにとっては、何かあったときには安心だと思う。

また周辺の人口密度が高く、少し行けばたどり着けるので、終末期まで見届けるという点が、治療が終われば転院を勧める通常のがん専門病院とは異なる。最後まで責任をもつという、がん治療の理想的なあり方のモデルケースとみていただければよいと思う。

緩和ケアチームは、院内の協力態勢がよいこともあり、他チームとお互いに補完し合いながら行っている。本院で開発された簡便なQOL(生活の質)評価法「IDAS」を看護師が毎日活用しており、それを指標にいろいろな看護や医療の介入を行っている。

チーム医療については、とくに緩和ケアチームなどでは、各科の独立性の強いところでは垣根が高く、緩和ケア医が自分で処方できないところが多くある。本院では処方も積極的に行っており、医師数が少ない場合も、みなが協力し合っている。そういう意味では、地域病院のほうがやりやすいと思う。

研修制度としても、いまの研修病院の多くは若い先生が患者さんを最後までみるということはやっていない。また主治医が最期まで看取るということが全然されなくなった。非常に大きな損失だと思う。本院は、とくに緩和ケア科では、再入院でも在宅でも主治医は同じで、最初から最後まで責任を持って見届け、患者に寄り添う研修を行っている。

緩和ケアサポート体制を備えた自治体病院

川崎市立井田病院は、東急東横線日吉駅から北へ徒歩10~15分、川崎市中原区と横浜市港北区との境、中原区市民健康の森の一角を占める小高い丘の上に立つ。

2013年5月に第一期の工事を終え、装いも新たとなった同院は、消化器センター、呼吸器センター、腎・泌尿器センター、外来・在宅ケア・緩和ケア病棟など一貫した緩和ケアサポート体制を備えた自治体病院であり、地域がん診療連携拠点病院と臨床研修指定病院に指定されている。

緩和ケアチームのスタッフ構成と役割

井田病院の緩和ケアチームは2009年(平成21年6月)より活動をスタート。チーム構成は、緩和ケア医2名、がん看護専門看護師1名、薬剤師1名、栄養士1名、臨床心理士、ソーシャルワーカーの計7名となっている。

チーム構成員数が、病院の規模からみて一見少なすぎると思われるかもしれないが、外来・在宅ケア・緩和ケア病棟など一貫した緩和ケアサポート体制の整った同院ならではのプラス面での作用が、チーム構成に要する最少人数でも十分に機能できるように働いている。

表1 緩和ケアチームのスタッフ構成と役割
表2 具体的に受けられるケア

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