がんのチーム医療・施設訪問3 船橋市立医療センター(千葉県)

病院一丸となった褥瘡対策 風通しの良さで細かな対応

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2014年7月
更新:2014年11月

  

風通しの良い組織で迅速対応 患者さんの気持ちのケアも
宮川健彦さん 船橋市立医療センター皮膚科部長

褥瘡じょくそう対策委員会の委員長を務めている。ほかの病院と比べて特別な工夫をしているわけではないが、皮膚・排泄ケア認定看護師が中心となり、メンバーが指示待ちではなく積極的、自発的に取り組んでいるところは評価できると思う。

患者さんへの迅速対応を心がける

現場では患者さんに積極的に話かけたり、集めた情報を共有したりと一丸となって褥瘡という難しい領域に取り組んでいる。組織内の風通しがいいこともプラスになっている。問題点が見つかれば、すぐに相談する雰囲気があるので、患者さんへの迅速な対応につなげている。

委員会として皆が顔をそろえて定期的に会議や回診をするのは年に3回だが、現場から急ぎの報告があれば、すぐに対応する体制ができている。

ここは地域の拠点病院ということで、重症の患者さんが来ることが多い。がん患者さんも多い。緩和医療を受ける患者さんは、褥瘡を含めいろいろな問題を抱えていらっしゃる。患者さんはつらいということをしっかりと理解して、褥瘡にばかり意識が行かないように前向きな気持ちになっていただくケアも大切だ。

とかく褥瘡を持っている患者さんは肩身の狭い思いをしていることが多い。周囲へのケアも含め、精神的ストレスを和らげてあげなければならない。

褥瘡は、皮膚の治療だけを頑張っても治るわけではない。薬が治すのではなく、体の持つ自分の体を治す力が治す。栄養状態や血液の状態、神経の状態など様々な要素が関係してくるうえに、疼痛コントロールなども絡んでくる。

褥瘡は、チームとして対応すべき疾患

その治療の加減が難しく、例えば、水分の入れすぎはむくみに繋がってしまう。また、末期の患者さんでは、無理に栄養を入れても、それをうまく受け入れる能力が衰えているので、早く褥瘡を治そうと無理にたくさん食べさせようとしても、それを分解吸収して、十分に利用することが困難になる。水分補給、栄養補給は、無理のない、患者さんに苦痛にならない範囲で行う必要があるということだ。

身近な褥瘡対策としては、皮膚の清潔が一番。当院でもスキンケア、洗浄、保湿の指導を徹底している。

褥瘡は、チームとして対応すべき疾患。我々のような医療サイドのチームだけでなく家族やケースワーカーなどまで力を合わせて対処することが求められる。

地域の中核病院・船橋市立医療センター

地域の中核病院・船橋市立医療センター

船橋市の郊外に建つ船橋市立医療センターは、地域の中核病院として救急医療を主体とする急性期および高度医療を提供している。重症患者の数も多いため、ベッドに長く寝ていると生じる褥瘡(床ずれ)ができやすい。センターでは対策委員会を設置するとともに、病棟のスタッフとの連携も強め、個々に応じた対策に努めている。

チームの中心は 皮膚・排泄ケア認定看護師

船橋市立医療センターは、3次救命救急センター、地域がん診療連携拠点病院という市民にとって大きな存在だ。緊急入院患者さんやがんの患者さんなど様々な患者さんが訪れるが、状態の悪い患者さんは褥瘡ができてしまう。

褥瘡は一度できてしまうと治るのに長い期間が必要となる。また、完全に治ることは難しいこともある。発生した場合には早期発見と治療が重要になり、他の場所にできないように予防も大切になる。

同センターでは、2002年から分野横断的にスタッフが集まった「褥瘡対策委員会」を組織して、対応してきた。メンバーは、皮膚科部長の宮川健彦委員長を含め、看護局、リハビリテーション科、栄養科からの計5人だ。

褥瘡は、皮膚を治せばいいだけでなく、栄養面などを含め、体全体を考えなければならない疾患であり、また褥瘡が発症する原因・要因は個々人によって違うので、様々な観点からの対応が必要となる。チーム医療が求められ、また力を発揮すべき領域である。

このチームを日常的にまとめているのが、日本看護協会認定の皮膚・排泄ケア認定看護師の大塚眞由美さんと渡邉理恵さんだ。認定看護師は、皮膚障害に対するケアや褥瘡などの創傷、さらにストーマ・失禁等の排泄管理などを扱う専門家だ。

皮膚・排泄ケア認定看護師の大塚さん(中央)と渡邉さん(左)がコアとなり、褥瘡の病態管理を行う

皮膚科を中心にした褥瘡チームのスタッフの皆さん

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