がんのチーム医療・施設訪問4 公立昭和病院(東京・小平市)

抗がん薬の通院治療 院内連携で患者さんとの交流図る

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2014年8月
更新:2014年11月

  

密接なコミュニケーションが チーム医療のエンジン
金内 一さん 公立昭和病院乳腺・内分泌外科部長

外来で抗がん薬治療の点滴を行う「通院治療センター」のまとめ役をしているが、いつも連携の大切さを実感している。

集学的治療をよりよく実現させるためのチーム医療がクローズアップされているが、その典型的な例がこのようなユニットだと思う。

患者さんのQOL向上のために

外来での化学療法の一番の目的は、働きながら、普通の生活をしながら、そしてQOL(生活の質)を高めながら治療することだ。

センターでは、専門の看護師や薬剤師が、医師がオーダーした抗がん薬の投与について、電子カルテだけでなく、医師と直接電話でやり取りをして確認し、さらに患者さんの体調をこまめにチェックするなど、何重にも事故が起きないような仕組みが取られている。

情報の共有とそれをもとにした対応は、数の限られたベッドをうまく回して、患者さんによりスムーズに点滴を受けてもらうことにも活かされている。

「顔が見える」関係でのコミュニケーション

医師、看護師、薬剤師の連携で最も重要なのは、コミュニケーションだ。現場の作業でももちろんだが、常にコミュニケーションを取り続けることが大切だと思う。お互いの顔が見えないと、事故にもつながる危険性がある。当院では、医師は各科の外来診療があるためセンターに常駐はできないが、電話やセンターとの行き来を通して、常に「オンライン」でつながることが実現できていると思う。そのコミュニケーションの中で、少しでも患者さんのためになることを吸い上げていきたい。

現場の声を尊重、より広いチーム医療を

スタッフ同士のコミュニケーションで、医師にとって大切なのは、「現場の声を尊重すること」だ。それぞれ専門の目で見ていて、点滴中は長い間患者さんと触れ合う彼らの意見はとても貴重である。何ごとも真摯に受け止めて、患者さんのことを一番に考えることにつなげたい。

チーム医療は、集学的治療のまさに最前線にある。医師、看護師、薬剤師らの連携だけでなく、栄養士や歯科衛生士などのコ・メディカルとの関係強化が進められ、さらに近年は事務担当者まで含めて「メディカル・スタッフ」として、一丸となって医療に取り組むという姿勢を強調している。

全員が常にそのような思いを持ち続ける環境作りをしていきたい。

地域のがん診療連携拠点病院

2010年に改装された公立昭和病院

東京の西の郊外、小平市の公立昭和病院は、地域のがん診療連携拠点病院。2010年に改築されたばかりのまだ新しい建物の一角に「通院治療センター」がある。抗がん薬治療のために通院してくる患者さんたちを迎えるのは、息の合った医師、看護師、薬剤師の専門家たちだ。

広がる会話 リラックスして点滴

「足がピリピリするんだよね、手はそれほどでもないのに」

「前の薬で眠くなったりした?」

「そう言われたんだけど、それはなかったよ」――

ベッドを囲んだカーテンの中から、看護師さんと患者さんが親しそうに話すのが聞こえてくる。
公立昭和病院の「通院治療センター」だ。

ここに通ってくるのは、様々ながんを患いながら入院せずに自宅で抗がん薬による治療を続け、定期的な点滴のためにやってくる患者さんたちだ。

「新薬が次々に出て、適応も広がったり、副作用を予防する薬や支持療法も進歩したりしているので、外来で化学療法が安全に行われるようになりました。ここにいらっしゃる患者さんもここ数年でかなり増えました。毎日16人ほどに利用いただいています。自宅にいて働いたり、旅行をしたりしながら抗がん薬治療も続けることは、QOL(生活の質)の面からも意味のあることです」

センターの責任者である乳腺・内分泌外科部長の金内 一さんは、施設の意義を話した。がんの治療を広く行う病院には必須のエリアだ。

カーテンで仕切られた部屋に 治療器具が運び込まれる

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