わたしの町の在宅クリニック 10 関本クリニック

何よりもその人らしさを大切に――。在宅での療養を支える

取材・文●増山育子
発行:2015年2月
更新:2015年8月

  

関本クリニックの関本雅子さん
関本クリニック

〒657-0051 兵庫県神戸市灘区八幡町3-4-5
TEL:078-846-0933 FAX:078-846-0938
URL:www.homehospice-sekimoto.com


麻酔科医として病院に勤務していた関本雅子さんは、請われて六甲病院(神戸市)のホスピス病棟立ち上げに携わり、ホスピス医長を務めた。ホスピス病棟から自宅に戻った患者さんを訪問した際に、病室と家とで患者さんの表情が全く違うのを目の当たりにして、関本さんは「患者さんがその人らしくいられるご自宅で診たい」という思いを募らせ、2001年10月、神戸市灘区で関本クリニックを開設した。

電話はいつでもつながります

神戸市灘区にある関本クリニック。「その人らしさを大切に」をモットーに、患者さんやその家族を支えている

「緩和とか看取りとかは横に置いて、取りあえず家に帰りましょう。学校や仕事が終われば家に帰るように、病院での治療が終わったら住み慣れた家に帰ってきて、できることをしましょう」

在宅医療への戸惑いや不安を抱える患者さんと家族に、関本さんはそう語りかける。まず緊急時や夜間でも対応可能であること、入院できる病院があり、ホスピス病棟も予約するなど、サポート体制が途切れないことを説明。初回訪問した患者さんには関本さんの自宅と携帯、クリニックの看護師4人の携帯、連携しているクリニックや病院の電話番号のリストを渡す。

「このうちのどこかに電話して24時間通じなかったことは1度もありませんとお話しします。すぐに連絡がつくことが在宅で安心して過ごすための絶対条件です」

でも実際に患者さんからのコールはそう多くない。というのも状況が悪かったり薬を増やしたり変更した患者さんには、こちらから電話して様子をたずねるからだ。

「そこで『何かあればいつでも電話を下さい』とひと言添えます。すると患者さんは見守られているように感じるのか、安心していただけるようです」

しっかりとした電話対応で密に連絡を取り合うことを関本さんのクリニックでは大切にしており、スタッフたちもこれを徹底。関本さんの携帯電話は、訪問に出かけた看護師たちからのコールで頻回に鳴る。

「何かあれば直ちに報告、対処することが重要ですし、患者さんも看護師と医師が連絡を取り合うのを聞いて、安心されます」

何よりもその人らしさを大切に

関本クリニックのモットーは「その人らしさを大切にすること」。ホスピス病棟勤務の経験もある関本さんは「病院よりも在宅のほうが断然その人らしくいられる」と確信している。その人の大切にしているものを守り、その人の選択を尊重して、その人らしくいられるように支えることが在宅では可能になるのだ。

例えば、吐血して呼吸も苦しい患者さんに入院もありですよと伝えたところ「家がいい」と言う。理由はたばこ。一服のたばこが何より楽しみという患者さんの思いを尊重し、訪問診療を続ける。

ある女性患者さんは40代で赤ちゃんを授かったばかり。ご夫妻で赤ちゃんのためにありとあらゆることをして1日でも長く生きたいと、腹水が溜まってとても苦しいのにもかかわらず、さらに状態が悪くなるような高カロリー点滴を希望した。

「少量の点滴に変えてみてはと申し上げたところ『これは命綱。1日でも長く生きるために高カロリー点滴が必要』とおっしゃるのです。それは非常につらい選択で、看護師たちは点滴を減らせば楽になるのにと泣いたほどです。けれども私たちができるのは医療的に標準的で良いとされることを提案するだけ。決めるのはご夫妻なのです。ご本人に望みがあって、それに私たちが応えることができるのであればそれでいい、レベルの高いケアで勝負しようではないかとスタッフ皆で確認し合いました」

啓発活動にも力を注ぐ

患者さんや家族と話す際に使う冊子。「在宅にするか悩んでいる際にお渡しして読んでいただくと、だいたいの方が1度やってみますとおっしゃいます」と関本さん

現在、訪問診療を行っている患者さんは約60人で、開業から2013年10月までの12年間で訪問患者死亡総数は1,129人に上った。場所別の内訳でみると、自宅で亡くなったのは533人、ホスピスが419人、病院155人、施設22人となっている。

神戸市は日本国内でいち早く在宅医療やターミナルケアに取り組んだ医師たちがいる、この分野で先駆けの地でもある。今、地域の開業医たちの連携が充実してきており、関本さんも在宅のノウハウを伝えるための活動に積極的だ。

「がんの方が安心して最期までご自宅で過ごすことができる、『がんの緩和ケア専門支援クリニック』といったような枠組みを作っていけばどうかと提唱しています。まだまだやるべきことがたくさんあります」

この分野ではパイオニア的存在でもある関本クリニック。「その人らしさを大切にした」在宅医療の仕組みが、それぞれの地域に根付くように――。関本さんは日々奮闘している。

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