わたしの町の在宅クリニック 14 深澤りつクリニック
病気はもちろんのこと、患者さんやご家族の困り事にも耳を傾けサポート
〒224-0003
神奈川県横浜市都筑区中川中央1-28-20
CKビル3F
TEL:045-914-6330 FAX:045-914-6332
URL:www.ritsu-c.com/
横浜市営地下鉄ブルーライン線センター北駅から歩いて2分。ビルの3階に深澤りつクリニック(神奈川県横浜市)は場所を構える。院長の深澤立さんがクリニックを開業したのは2006年4月。開業当初から、外来診療と在宅診療を並行して、患者さんの治療にあたっている。
病院での治療が全てではない
開業する前は総合病院で泌尿器科医として患者さんの治療にあたっていた深澤さんだが、〝在宅診療〟については、医師になって間もないころから意識していた部分があった。
「まだ医師になって駆け出しのころ、当時自分より1歳下の腎がん末期の患者さんがいらして、何も食べることができず入院して点滴をしているような状態でした。ご本人の希望もあり自宅に帰ったのですが、病院では何も食べられなかったのが、家ではカレーライス1皿ペロリと食べて、すごく驚いたんです。結局その方は2~3週間後に亡くなられたのですが、病院での治療が全てではない、家に帰ると何か違うのだなということを目の当たりにしました」
その後も、泌尿器科医として年間350件もの手術をこなすほど、第一線で患者さんの治療にあたっていた深澤さん。しかし、普通8時間はかかるという、膀胱を全部摘出し、小腸で新しい膀胱を造る手術を5時間ほどで行うことができた時に、手術に関しては「もうこれ以上のことはできないだろう」と思い始めたという。もともと、患者さんを最初から最期までみたい、付き合いたいという思いがあり泌尿器科を選択した深澤さんは、クリニックを開設。2012年には緩和医療などに長年携わってきた黒田俊也さんが副院長として加わり、現在は2人体制で患者さんの診療にあたっている。
患者さんの希望に応えた治療を実施
現在在宅で診ている患者さんは60人ほどで、そのうちがん患者さんは4割強。1日に訪問する患者さんは医師2人で6~8人ほど。訪問する地域は、横浜市の都筑区が中心で、青葉区や港北区の一部、川崎市宮前区の一部も回っている。
在宅での処置としては、痛みや吐き気といった症状を緩和する治療が中心だが「基本、できることは何でも行う」と深澤さん。薬剤の注入ポンプや各種カテーテルを揃え、様々な疾患、状態に対応できるようにしている。患者さんの希望もあり、病院と連携して抗がん薬治療を行ったこともある。また、もう治療法がなくなり代替医療を希望する人もいるが、基本的には患者さんの意向を尊重して対応している。
代替医療を受けていること自体が、患者さんや家族の気持ちの支えになるのであれば、否定せずに手伝うというのがクリニックの姿勢だ。
患者さんに歩み寄る姿勢を大切に
昨年(2014年)の看取り数は40~50人。進行がんの場合、在宅での看取り率は約9割と、最期まで自宅で過ごすことができる人がほとんどだが、「決して無理強いはしない」と深澤さん。そこには、残された家族への配慮がある。
「病状次第ということもあって、最期どうなるかはご家族にもわかりません。最期まで家で看たいと思っても、病院へ入院してしまうこともあるし、その逆もあります。家と病院、どちらで過ごすことになっても、ご家族がなるべく後悔しないように対応しています」
患者さんと接する際、深澤さんはいつも心掛けていることがある。それは、なるべく自分たちから半歩でも1歩でも近づいて、患者さんに歩み寄るということだ。
「ひと通り診察が終わった後に、『関係ないことですけど……』と話される患者さんがいますが、患者さんから言い出してくれること自体、すごくありがたい。患者さんに気軽に相談してもらえることが大事だし、その気持ちに応えられるようにしたいと思っています」
高齢化社会が進む中、「家で看ることは難しいと家族が感じてはいるものの、病院では受け入れ困難ということで断られてしまう、在宅医療と病院の狭間で困っている人が増えている」と深澤さん。今後はこうした人たちの受け皿となるような小規模多機能施設を作っていきたいと話す。
病気を治すという根本的な部分はもちろんのこと、「困り事を何とかしたい」という思いで、日々診療にあたっている深澤りつクリニック。「よろず相談所」のような存在として、近隣の人たちの期待も大きい。