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手だてのなくなった難治膵臓がん患者にも半数に腫瘍縮小効果
免疫を最大限に活かす樹状細胞ワクチン療法を軸にした併用療法の最前線

監修:岡本正人 武蔵野大学客員教授、テラ株式会社取締役CSO
:小笠原正浩 札幌北楡病院がん免疫細胞療法センター長
取材・文:柄川昭彦
発行:2009年10月
更新:2013年4月

  
岡本正人さん
武蔵野大学・テラ株式会社の
岡本正人さん
 
小笠原正浩さん
札幌北楡病院
がん免疫細胞療法センター長の
小笠原正浩さん

患者の免疫力を最大限に活かそうと、樹状細胞ワクチン療法という免疫療法を軸に、放射線療法や化学療法などを併用する新たながん治療が話題を呼んでいる。「アイマックスがん治療」と呼ばれる治療だが、最近は信州大学、愛媛大学といった国立大学病院も導入を始めている。
その最前線を報告しよう。

免疫力を最大限に活かす新しい併用療法

アイマックスがん治療という新しい試みが、臨床現場で成果をあげつつある。今年の6月には、最も権威がある国際的ながん専門学会であるASCO(米国臨床腫瘍学会)において、進行膵臓がんに対するアイマックスがん治療の成績が報告されている。発表を行った武蔵野大学薬物療法学の岡本正人さんに、アイマックスがん治療について解説してもらった。

まず、アイマックスという言葉だが、これは免疫を意味するimmuneの「i(アイ)」と、最大化を意味するmaximizingの「max」をつなげた造語なのだという。immune maximizing therapy for cancer(免疫最大化がん治療)を短縮して、アイマックスがん治療と呼ぶようになったようだ。

「どういう治療かをひとことで説明すると、患者さんの免疫力を最大限に活かしたがんの併用療法ということです。もともと武蔵野大学およびテラ株式会社では免疫療法の研究を行っていて、セレンクリニック、信州大学医学部付属病院等の契約医療機関で樹状細胞ワクチン療法の実績を重ねてきました。この治療法が、アイマックスがん治療の中心となっています」(岡本さん)

がんの免疫療法は、手術、化学療法、放射線療法に続く第4の治療法として期待されてきた歴史を持つが、なかなか期待にこたえる治療成績をあげることができなかった。ところが、がんの目印といえるがん抗原が次々と見つかり、それを使ったがんワクチンが開発されることで、免疫療法は新しい時代に入ることになった。また、がんを攻撃するリンパ球に対し、がんの目印を教える教官役の樹状細胞を使った樹状細胞ワクチン療法の研究も進められてきた。

「がんの目印には、実際のがん組織から採ったものや、人工的に作ったものなどいろいろありますが、ここ数年、人工抗原が大きく進歩してきました。ただ、これだけをワクチンとして使用したのでは、治療効果に限界があります。そこで、樹状細胞と組み合わせることで、より治療効果を高めることを目指したのが、樹状細胞ワクチン療法です」(岡本さん)

人工抗原のみのワクチン療法では、なかなか十分な効果が得られにくいのだ。

一方、セレンクリニック等で行われてきた樹状細胞ワクチン療法では、血液中から単球を採り出し、それにサイトカイン(細胞から分泌される生理活性物質)を加えて樹状細胞に分化させるので、大量の樹状細胞を得ることができる。そこにがん抗原(人工抗原や自己がん組織)を加えて成熟させ、それを患者さんの体に戻すことにした。すると、体内に入った樹状細胞は、リンパ球に攻撃目標となるがん抗原を提示する。目印を覚えたリンパ球は、全身をめぐりながら、がん細胞を狙って攻撃を開始するのである。

とくにWT1という人工抗原は、ほとんどすべてのがんに発現しているため、幅広く治療に応用することができる。こうした人工抗原が開発されていたことも、樹状細胞ワクチン療法の治療成績を引き上げるのに役立った。

[がんにおける樹状細胞の働き]
図:がんにおける樹状細胞の働き

[樹状細胞ワクチン]

試験管内で「がんの目印(がん抗原)」を取り込ませた樹状細胞を作製
通常は皮内投与。場合によっては、腫瘍局所に投与する場合もある

図:樹状細胞ワクチン

免疫を低下させない治療法を組み合わせる

樹状細胞ワクチン療法の登場によって、がんの免疫療法は大きく進歩したが、さらに治療成績を高めることが検討された。

「樹状細胞ワクチン療法は、世界中で3000例くらいの治療成績が報告されています。それを大雑把にまとめると、完全寛解(CR)、部分寛解(PR)、不変(SD)を合わせて、30~35パーセント程度でした。そこで、さらに臨床効果を高めるために、他の治療法との併用療法が考えられたわけです」(岡本さん)

併用する相手として選ばれたのは、化学療法、放射線療法、温熱療法などだった。従来、化学療法や放射線療法は、免疫を低下させるため、免疫療法との併用は相性がよくないと言われてきた。

ところが、免疫療法と相性のよい化学療法や放射線療法がわかってきたのだという。

「抗がん剤を使った治療では、ひどい副作用が出ない程度の低用量を持続的に用いる投与方法(メトロノーム化学療法)だと、全身の免疫力を落とさずにすむことがわかっています。抗がん剤の種類では、ジェムザール(一般名ゲムシタビン)やTS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)は、免疫療法と非常に相性が良いことがわかってきています。また、放射線療法でも、広い範囲に照射すると、その部分が焼け野原状態になって免疫が働かなくなりますが、ピンポイントで局所だけを照射すれば、周囲の免疫を比較的落とさずにすみます」(岡本さん)


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