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自宅には、家族との〝生活〟があり、その人の〝日常〟がある

在宅で緩和ケアを受けるという選択

監修●木俣有美子 わたクリニック副院長
取材・文●菊池亜希子
(2017年11月)

  
「病院でがん患者さんを診ていたときは、退院した患者さんたちが、家に帰ってからちゃんと過ごせるのかが毎回心配でした。そこをサポートしたいと思い、在宅医療に進みました」と語る木俣さん

がん治療中に痛みや苦しみを感じたら、病院の地域医療連携室を訪ねて相談してみてはどうだろう。緩和ケアは病院でしか受けられないわけではない。自宅近くの診療所もある。在宅医療のクリニックもある。在宅で緩和ケアを受けるという選択もできるのだ。

自宅には日常生活がある

自宅で緩和ケアを受ける――そんな選択肢があることを御存知だろうか。

入院生活は、人を病人にしてしまう特殊な時間だ。家族も友人も面会時間に〝見舞い〟に来て、必ず帰ってしまう。けれど、どんな病状であれ、自宅で過ごすことができたら、住み慣れた家の匂いを感じ、同じ空間にいる家族の声や息遣いをいつも近くに聞くことができる。

「自宅にはその人の生活があり、日常があるのだと思います」と、わたクリニック副院長の木俣有美子さんは言う。

在宅緩和ケアというと「看取り」のイメージが強いかもしれない。確かに、治療をすべて終えて終末期を迎えた患者が多いのは事実。だが、「いつからでも在宅緩和ケアは受けられます」と木俣さん。通院で抗がん薬投与などのがん治療を受けながら、心身の痛みや苦しみで困ったときに、在宅で緩和ケアを受けることもできるのだ。

通院でのがん治療中に在宅緩和ケアを受けたいと思ったら「治療中の病院の地域医療連携室(がん相談支援センター)に相談するといい」そうだ。

地域医療連携室とは、病気に関する様々な相談を引き受ける部署で、大きな病院と地域のクリニックを結ぶ役割も果たす。名前は病院によって様々だが、ある程度の規模の病院には必ずあるという。

相談すると、在宅緩和ケアを行う地域のクリニックや、点滴などをしてくれる自宅近くの診療所などを、患者のニーズに合わせて紹介してくれる。

もちろん、患者自身が直接、在宅医療を行うクリニックに連絡して緩和ケアを申し込むこともできるが、それまでの病状や治療経過を訪問する緩和ケア医が知るためにも、主治医の所見を綴った書面があるほうがスムーズ。そういう意味で、がん治療をしている病院からの紹介というアプローチが望ましい。医療連携室に相談する際に、「在宅緩和ケアの○○クリニックにお願いしたい」と患者側から希望を出すのもいいだろう。

症状緩和には漢方薬も

「緩和ケアで必要な医療行為に関しては、病院でできる一般的なことは、ほぼすべて在宅でもできる」そうだ。注射や点滴はもちろん、腹水や胸水を抜くこと、痛み止めの医療用麻薬投与も可能。痛みが強いときには、患者の皮膚にチューブで繋いだ針を留置し、持続的にモルヒネを投与したり、さらに痛みが増したら自分で追加投与して痛みをコントロールするPCA法という治療もできる。

「在宅医療でできないことは、レントゲン(X線)、CT、放射線治療などの大掛かりな機械を使う検査や治療ぐらいです。実際にはエコー(超音波検査)があるので、腹水や胸水も抜けるし、ほとんどのことはできます」

がん治療を受けながらの緩和ケアでは、主治医との連携をとるそうだ。食事が摂れなくなって点滴したり、新しい薬を増やしたりした場合、主治医に書面や電話で伝えながら進めていく。

また、木俣さんは、緩和ケアの手段として、本人の希望に応じて、漢方薬も取り入れている。

「がん治療中や進行した際の症状として出やすいのは、痛み、だるさ、吐き気・食欲不振などです。痛みについては、オピオイド鎮痛薬(医療用麻薬)が段階別に対応が確立されていて、ほとんどコントロールできるのですが、だるさや食欲不振はなかなか改善されず、西洋薬だけでは難しいのが現実です」

緩和ケア医を志して研修していたころ、木俣さんは西洋医学の薬に手詰まり感を覚えることが何度かあったそうだ。第一選択の薬はこれ、次はこれ、その次はこれ、と理論的に方法と順序が決まっていて、その手順を踏んで最終段階にくると打つ手がなくなる。そんなときに出会ったのが漢方薬だった。

「悪いところを取る、治す、というピンポイントに働きかけるのが西洋薬。それに対して、漢方薬は体全体のバランスを正す、という考え方です。体の中の滞った〝気〟を巡らせて、体を元気にします。だから、血液の循環がよくなり、体温が上がる。滞っていたものが動き出す。だるさや食欲不振といった体全体に関わる症状については、漢方薬のほうが得意ですね」(図1)

従来の薬と漢方薬、両面からアプローチすることで、がん患者の症状緩和の幅が広がった。ただ、漢方薬を緩和ケアに活用するか否かは、医師個人の考え方次第だそうだ。そもそも、緩和ケア医は元々、専門分野を持ち、そこから敢えて緩和ケアという道を選んだ医師たち。元の専門分野によっても、症状緩和のアプローチに特色が出てくるという。

「外科出身の医師なら傷の治療や腹水、胸水の処置、内科なら薬の微妙なさじ加減、麻酔科なら痛み緩和、というように、それぞれの得意分野もあるし、医師個人の考え方によってもアプローチが違ってきます。もし、患者さん自身が緩和ケアに漢方薬を取り入れたいなら、在宅クリニックを紹介してもらうときに、その希望を伝えてみてください」

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