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注目される重粒子線治療の局所制御

ステージⅠの末梢型肺がんなら1日の照射で終了

監修●山本直敬 放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院第一治療室長
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2015年2月
更新:2015年4月

  

「治療を1日で済ませることで、患者さんや家族への負担軽減は大きい」と語る山本直敬さん

肺がん治療における放射線(粒子線)治療の1つである重粒子線治療で、注目されているのが「Ⅰ期(ステージⅠ)末梢型肺がん」への適応だ。先進医療に指定され、手術を拒否する患者層にも対応している。近年注目されているのが、1日で治療が終了するプログラム。肺がんにおける重粒子線治療の研究を続けてきた専門医に聞いた。

電子よりも重い粒子 腫瘍破壊力は陽子線の3倍

「肺がんの患者さんで、手術を拒否する方が増えています。外科手術よりも放射線治療を求める患者さんが増えているのは、ほかの領域でも同じかと思います」

放射線医学総合研究所(放医研)重粒子医科学センター病院第一治療室長の山本直敬さんは、重粒子線治療を希望するのは、以前は手術不適応のケースが多かったが、現在は40%ほどが手術を拒否する層だと指摘する。

重粒子線治療は放射線治療の一種だ。炭素イオンを加速器で光速近くまで加速させたものをがん病変部位に照射する。現在は保険適用されておらず、臨床試験への参加か、先進医療として受けることができる。先進医療として受診する場合は300万円以上を要するが、この分野では日本が世界をリードしており、治療を望む患者さんは少なくない。

国の予算が投入される放医研では、1990年代半ばから重粒子線を医療に応用する臨床試験を開始した。その後、先進医療に移行する疾患も増え、登録患者数は増加する傾向にある。重粒子を発生させるには、サッカー場ほどの広さを持つ巨大施設が必要で、イオン粒子を直径42mの加速器で光速の約84%まで加速して、そのまま治療室に運ぶ(注=サッカー場ほどの大きさの加速器を用いているのは、放医研HIMACのみで、後から建設された群馬大学、佐賀HIMATなど他の施設では技術開発が進み、HIMACの3分の1程度の大きさの加速器を使用している)。

重粒子線治療の特徴は、線量の集中性がよいことだ。標準治療の放射線(X線)では、体の奥に入って行くほど影響力が低下するが、重粒子線では影響力の大きさを体内の標的であるがんの部位に設定できる。炭素イオンの有効性も大きい。山本さんは次のように説明する。

「重粒子線治療は陽子線と比べても破壊力が3倍ほどです。がん細胞のDNA遺伝子をそのまま破壊していくのです」

5㎝以下、末梢の腫瘍で転移なしなら1回照射

肺がんへの適応はどうだろうか。現在、先進医療として重粒子線治療が行われているのは、Ⅰ期の末梢型非小細胞肺がんに対するものと、縦隔リンパ節転移のない局所進行肺がんや孤立性の転移性肺腫瘍、肺がん手術後の肺門・縦隔リンパ節転移に対するものだ。

Ⅰ期とはリンパ節への転移が無く、腫瘍の最大径が5㎝以下の段階で、末梢とは肺の中央部の気管支や動脈、静脈がある部分とは外れた端のほうを指す。

「重粒子線が用いられるのは、特別効きやすいからというわけではありません。ほかの放射線治療も十分進歩しているので、2㎝以下のがんならどの方法でも同じ治癒効果が得られます」

山本さんは、ほかの放射線治療の効果も同等と説明するが、重粒子線治療がもたらす患者さんへのメリットは少ない回数で済むことだ。

「重粒子の利点は、回数を減らすことができることです。それは治療日数の減少と同じ意味です。これまで18回だったのが9回、さらに4回となり、そして1回で済む時代へと変わってきています」

これまでの放射線治療の考え方は「照射を分割しなければうまくがん細胞をやっつけられない」ということだったのだが、重粒子線であれば前述したような特徴でそれを覆し、さらに期間を短縮することが可能ということだ。治療成績は4回と変わらない数字が出ている。

1回50Gy 局所制御率は4回と同等

Ⅰ期末梢型肺がんにおける1回照射の研究は、2003年4月から始まった。当時の治療通念は、重粒子線治療は1週間で4回の照射を行うというものだった。

4回照射では、総照射が52.8Gy(グレイ)や60Gyだったが、1回照射ではどの数値に設定すればよいかが焦点となっていた。一般の放射線は、回数が少なくなるとトータル照射量が同じでも強い反応が出ることがわかっていた。1回の照射量が多いと、腫瘍にも効くが、副作用も大きいというわけだ。

研究は28Gyからスタートした。思ったほどの効果がなく32Gyに上げた。そして線量は34、36、38Gyへと上げられていった。

「36Gyを超えたあたりから手応えがありました。5年間の局所制御率は80%になりました。それでも90%を超える4回、9回照射よりも数字としてはまだ落ちていました(表1)。研究を続けた結果、50Gyで重度の副作用や強い障害がないまま高い効果が得られることがわかりました。線量増加試験の段階は終わりました」

山本さんの施設では2012年から1回照射が先進医療として年間100例ほど行われており、研究の成果も近く論文として世界に向けて発表される。

表1 肺がんに対する重粒子線治療の治療成績(従来の第Ⅱ相試験成績との比較)

1回照射の高線量群の成績は3年生存率局所制御率を示している

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