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サブタイプに応じた治療も必要に

治療対象が広がり、進化するガンマナイフの乳がん脳転移治療

監修●永野 修 千葉県循環器病センター脳神経外科ガンマナイフ治療部部長
取材・文●町口 充
発行:2015年11月
更新:2016年1月

  

「脳転移においてもサブタイプに応じた治療が必要になってきました」と語る永野 修さん

乳がんは骨、肺、肝臓などと共に脳にも転移しやすい。脳転移の治療法としては主に手術や放射線治療があげられるが、最近、急速に進歩し治療対象の範囲を広げ、成績を向上させているのが定位放射線治療の1つ、ガンマナイフ治療だ。ガンマナイフ治療の現状について専門家に伺った。

多くは自覚症状から見つかる

体のどこかにできたがんが脳に転移したものを転移性脳腫瘍と言うが、「脳転移を起こしやすいがんとしては肺がん、消化器系がんに次いで、乳がんがあげられています」。こう話すのは、千葉県循環器病センター(市原市)脳神経外科ガンマナイフ治療部部長の永野修さんだ。

転移が見つかるのは、多くは頭痛や手のしびれ、力が入らない、ろれつが回らなくなったなどの神経症状に気づいてからが多い。無症状の段階で早期に見つけるには造影剤を使った脳のMRI検査が最も有効だが、脳転移を見つける目的で定期的にこうした検査を行う施設は少ないという。

「乳がん患者さん全員が脳転移を起こすわけではないので、全ての患者さんを検査するわけにはいきません。ただ、神経症状が出た段階では腫瘍の大きさが2㎝など、ある程度の大きさになっていることが多いので、できれば造影剤を使ったMRI、もしくはCTでもいいので定期的なスクリーニング検査を行って、腫瘍が小さいうちに見つけて治療ができればと思っています」

大きさに依存する ガンマナイフの治療成績

写真1 脳転移に対してガンマナイフが効いた症例

永野さんがこう語るのには理由がある。

脳転移の主な治療法としては、手術や放射線治療(全脳照射、定位放射線照射)がある。手術の適応となるのは、腫瘍が1個のみで、大きさが直径3㎝以上あり、患者さんの全身状態(PS)が良好な場合。転移した個数が多い場合は全脳照射を行う。それ以外の腫瘍が直径3㎝以下で個数が少ない場合(概ね4個以下)は、定位放射線治療が有効となる(写真1)。

定位放射線治療とは病変の位置を正確に決めてピンポイントで放射線を照射する治療法のことで、ガンマナイフやサイバーナイフがあげられる。中でも、治療対象の範囲が広がり、治療成績が向上しているのがガンマナイフだ。ただし、ガンマナイフのような定位放射線の治療効果は、腫瘍の大きさと関係が深く、病変が小さいほうがよく効く。

「1㎝未満の腫瘍をガンマナイフで治療すると、9割以上の患者さんはその後何の問題もなく生活していくことができます。しかし、2㎝を超えてくるとその数字が下がり、7割から8割ぐらいになってしまいます」

腫瘍の大きさが3㎝以下であれば、ガンマナイフでも十分対応はできる。ただ、やはり病変が小さいほど治療効果は高いので、できるだけ早く脳転移を見つけて、小さいうちに治療をしたほうが良いと永野さんは言う。

個数が多くても 全脳照射よりガンマナイフ

転移個数が多い場合(概ね5~10個)、従来は全脳照射が一般的だったが、最近はガンマナイフが取って代わろうとしている。全脳照射で広範囲に放射線を当てると、脳全体が萎縮することがあり、認知機能の低下などが生じる可能性があるし、脱毛も起こる。ピンポイントのガンマナイフはその心配が少ないという大きなメリットがある。

「『乳癌診療ガイドライン』では、ガンマナイフなどの定位放射線照射で治療できるのは、転移数が少数個のおよそ4個までで、それ以上のものは全脳照射となっていますが、なぜ4個はよくて5個はダメなのかという疑問を以前から持っていました。そこで2~4個の患者さんに対するガンマナイフ治療と、5~10個の患者さんに対するガンマナイフ治療とを比較する試験を行ったのです」

それが、千葉県循環器病センターを始め国内の23施設による「JLGK0901試験」と呼ばれるもの。乳がんを含む脳転移の患者さん約1,200例を対象に、転移数5~10個の症例に対するガンマナイフ単独治療と、2~4個の症例に対するガンマナイフ単独治療とを比較したところ、全生存期間(OS)に有意差はなく、両者の成績は同等であることが証明された。

また、多数個に放射線を当てればその分だけ副作用も出やすくなり、脳の高次機能に影響が出るのではないかとの懸念があったが、結果的には差は認められなかった。

この試験結果は2つの大きな意味を持つ。1つは、これまで脳転移個数4個以下だった定位放射線治療の対象が、5~10個までと、その対象が広がったこと。

もう1つは、それまで目に見えないがん細胞を死滅させるため、定位放射線照射に加えて全脳照射を行うことが推奨されていたが、それが省略できる可能性が出てきたという点だ。

「脳転移で治療できるのは、検査で見つかる1㎜程の大きさのものです。ただ実際には、それ以下の小さな病変があるのではということから、定位放射線照射に全脳照射を加えるという考え方が出てきました」

しかし2006年に、転移個数が4個までなら、定位放射線照射のみで全脳照射を加えなくても、定期的な検査をしていくことで、生命予後に影響はないという研究結果が発表された。先のJLGK0901試験でも、転移個数5~10個に対して、定位放射線照射のみで治療成績が良好だったことを受け、必ずしも最初から全脳照射を加えなくてもいいのではという考えが出てきたのだ。

「もちろん全脳照射が必要な患者さんはいます。例えば転移個数が30~50個と多数ある方や、がん性髄膜炎で脳全体にがん細胞が広がっている方です。ただ副作用を考えると、定位放射線照射のみで全脳照射を省略できるケースもあるのではと考えています」

今回、エビデンス(科学的根拠)レベルの高いJLGK0901試験結果が出てきたことで、『乳癌診療ガイドライン2015年版』でも脳転移治療の記載に、一部変更が加えられた。

ガイドラインではこの試験結果を紹介した上で、多数個の脳転移に対しては最初に全脳照射が勧められるとしながらも、脳転移が5~10個ある患者さんであっても、初回治療としてガンマナイフなど定位放射線照射も選択肢にあがり、また、全脳照射についても、「増悪を認めるまで行わないことも可能」との記載が加わっている。

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