最新医療トピックス
患者にやさしい最新型の放射線治療装置また登場
頭部への照射の準備をしているところ
患者の顔をマスクで覆って固定する
通常の放射線治療では、患部の周りの正常な部分も含めて、広い範囲に放射線を当てることになるため、副作用が出たり、充分に治療ができない場合があります。これに対して、放射線を1点に集中させることで、正常な部分を避けて、患部のみに照射を行うことのできる放射線装置があります。その代表として挙げられるのが、主に脳腫瘍の治療に使われる「ガンマナイフ」です。これにより、副作用を軽く、なおかつ高い治療効果を得ることができ、また、手術でとることが難しい、深い場所にある腫瘍でも、治療することができます。
しかし、頭の中の腫瘍に対しては、最も優れた実績のあるガンマナイフですが、頭の中以外の腫瘍を治療することはできません。大きさも、直径3センチ以内のものに限られます。また、ガンマナイフの治療の際は、患者の頭部に直接ピンを埋めこんで固定するため、固定具を外した後も、起き上がることができないほどひどい痛みを伴うことが多くなります。1度に受ける放射線の量も多くなるので、患者にとって必ずしも負担が軽い治療だとは言えません。
このような放射線治療の現状の中、昨年、新しい放射線照射装置「ノバリス」が、初めて日本で導入され、その第1号機の稼動が、石川県金沢市の浅ノ川総合病院で開始されました
ガンマナイフと違って、全身に応用できる強みが
ノバリスは、高い精度で、数回に分けた照射が可能で、頭の中の3センチ以上の大きさの腫瘍のほか、放射線に弱い脳幹や視神経の周辺、また、肺や肝臓、前立腺、脊髄、脊椎などの体幹部の腫瘍の治療も可能です。照射の際の患者の固定は、マスクを装着することによって行われ、痛みはまったくなく、外来での治療ができます。患者の体への負担が少なく、高齢者や小児などにも適した治療です。
海外ではすでに50台程度が稼動しており、脳腫瘍に対するガンマナイフとの治療成績の比較でも、同程度の効果があったと報告されています。
体幹部への照射の様子
患者の体にマーカーをつけて照射位置を定める
実際に浅ノ川総合病院で、ノバリスによる治療を受けた70代の髄膜腫の男性は、治療開始2カ月後の検査の結果では、はっきりと腫瘍の縮小がみられており、副作用の問題も出ていません。この男性は、以前別の病院でガンマナイフによる治療を受けており、その際に、腫瘍が大きく、カバーしきれなかった分に対して、今回ノバリスで治療を受けました。このときは5回に分けて照射を行いましたが、ガンマナイフと比べると「これが治療か?」と思うほど体への負担は少なく、治療中も通常通りの生活が続けられたそうです。
体幹部の一部の治療を除いては、すでに保険適用になっており、治療費の患者負担額は、3割負担で約18万9000円です。これはガンマナイフと同額です。何回に分けて照射しても、1回の治療として計算されるため、照射回数に関係なく、この金額になります。
日本では、昨年9月に頭頸部、11月に体幹部に対する治療が始まったばかりですが、その適用範囲の広さと高い精度、治療時の患者への負担の少なさから、新しい放射線治療の選択肢として期待されています。
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