術前化学療法・新薬開発にも期待
監修●黒井克昌 がん・感染症センター都立駒込病院副院長
取材・文●「がんサポート」編集部
乳房内の腫瘍が大きければ乳房全体の切除というのが乳がん治療の定石だが、大きな腫瘍でも手術の前に化学療法を加えて小さくし、部分切除にとどめて乳房を温存するという治療選択もある。術前化学療法はどのように行われるのか――乳がんの術前化学療法の研究を続ける専門家に話を聞いた。
ホルモン療法・効果を持続させ、副作用も抑える
監修●向井博文 国立がん研究センター東病院乳腺・腫瘍内科医長
取材・文●「がんサポート」編集部
かつてはほぼすべての乳がん患者に行われていたホルモン療法。現在では、対象者が絞られた上、分子レベルでの研究が進んだことで急激な進歩を遂げている。ホルモン療法の難点である耐性に対して、分子標的薬との併用で大きな効果が出ることがわかった――乳がんの最新の治療に詳しい専門家に聞いた。
パージェタ、カドサイラ登場で、1~2次治療に大きな変化
監修●徳田 裕 東海大学医学部乳腺・内分泌外科学教授
取材・文●柄川昭彦
HER2陽性の進行再発乳がんに対する治療戦略が大きく変わってきている。2013年にパージェタ、2014年にカドサイラなどの新たな薬剤が加わり、これまでの1次および2次治療に大きな変化が見られているという。
小線源を使った「加速乳房部分照射法」
監修●佐伯俊昭 埼玉医科大学国際医療センター乳腺腫瘍科教授
取材・文●町口 充
乳房温存手術後の放射線治療は、乳房全体に外部から放射線を当てるのが一般的だが、乳房の内部から小線源を用いて切除部分を中心に範囲を限定して放射線を当てる「加速乳房部分照射(accelerated partial breast irradiation:APBI)」という治療法が、欧米で広く行われている。日本でも、標準治療としてこの治療法が使えるかどうかの臨床研究が進んでおり、普及への期待が高まっている。
インプラント乳房再建の保険適用から1年
監修●土井卓子 湘南記念病院かまくら乳がんセンター長
取材・文●町口 充
お腹や背中など自家組織を移植する乳房再建のみに認められていた保険適用が、シリコンなどのインプラント(人工物)にも認められるようになって1年が経過した。保険適用が追い風となって乳房全摘+再建手術を希望する人が増えていて、患者さんの喜びは大きいが、同時に根治性と整容性(美容性)のどちらを優先させるかなどの課題も浮かび上がっている。
頻度は少ないが、顎骨壊死、低カルシウム血症には要注意
監修●高橋俊二 がん研有明病院化学療法部総合腫瘍科部長
取材・文●池内加寿子
乳がんは骨に転移しやすい。骨に転移した場合、骨の痛みや骨折などの症状が現れることが多いが、現在骨転移に効果のある薬も出てきており、適切に治療を受ければ、痛みに苛まれることもなく、普段通りの生活も送れるようになってきている。
オンコタイプDX検査の有用性と課題
監修●林 直輝 聖路加国際病院乳腺外科副医長
取材・文●柄川昭彦
手術後に抗がん薬治療を行うかどうか、従来は臨床所見を参考に決定していたが、がん細胞の遺伝子を調べる「オンコタイプDX」検査を受けると、抗がん薬治療を回避できる人がかなりいることがわかってきた。検査の費用は高額だが、抗がん薬治療が避けられた場合には、医療経済的にもメリットは大きい。将来の保険適用が期待されている。
脱毛対策の課題 情報提供ニーズが多様化している
監修●金井久子 聖路加国際病院看護部
取材・文●軸丸靖子
がん化学療法を受けると脱毛することは、がんの治療経験がない人にも広く知られている。だが、抜けた頭髪や眉毛、まつげが治療終了後いつまでに、どのくらい回復するかについては、実は確かな数字はあまりないのが現状だ。乳がんの場合、医療者が経験的に得た情報から「治療終了後1年~1年半ほどでかつらを外せる人が多い」といった説明をすることが多いものの、回復度合いには患者の個人差が大きく、3~4年経ってもかつらのままという人もいるという。
乳がんサバイバーの職場復帰 外来通院中の患者さんを対象に意識調査
監修●小野智恵美 帝京大学医学部附属病院看護師
取材・文●「がんサポート」編集部
「身体的負担でこれまでの仕事ができなくなるのでは」「雇用条件はどうなるの?」乳がんは治療後に良好な予後が望めるがん種だ。仕事を持つ女性が乳がんになることも珍しくないが、彼女たちの大きな悩みに「就業をどうするか」ということがある。患者さんに職場復帰への本音を聞いた調査結果がまとまった。