複合的な治療で、より豊かな日常を
大切なのは自己管理。下肢リンパ浮腫のセルフケア
婦人科がん(子宮がん、卵巣がん)や前立腺がんの手術では、骨盤内のリンパ節郭清を行います。しかし、その結果、リンパ液の流れが滞り、下肢のリンパ浮腫を招くことがあります。リンパ浮腫はきちんとセルフケアを行うことで改善しますので、正しいケアを学び実践しましょう。
まずは早期発見を
リンパ浮腫は、がん治療でリンパ節郭清などを行うことで現れる症状です。リンパ節を取り除くとリンパ液の流れが滞り、車の渋滞のように詰まってしまいます。結果、むくみなどの症状が現れます。進行すると日常生活が困難になり、がん治療の妨げとなることがあります。子宮がんや前立腺がんなどで骨盤内のリンパ節を郭清した場合は、下肢にリンパ浮腫が起きることがあるので注意が必要です。
今回は、下肢に起こるリンパ浮腫に対するセルフケアについて紹介していきます。
治療の第一歩は、早期発見と正しいセルフケアにあります。リンパ浮腫の主な症状を知り、早期で発見することを心掛けます。
リンパ浮腫の具体的な症状としては、下肢が動かしにくい感じや、腫れぼったい感じ、皮膚が硬くなりつまみにくくなる、押したら痕がつくなどの症状が現れます。また、日ごろから図1のように足の太さを計測し、変化を知ることで、早めの発見を心掛けましょう。
セルフケアの第一歩は リスクと治療法を知ること
リンパ浮腫は、表2のように大きく4つの進行具合に分かれ、その具合によって行うべきケアの仕方が異なります。
ケアの仕方には大きく次の5つがあります。①日常生活での注意、②スキンケア、③圧迫する、④圧迫した上での運動、⑤リンパドレナージ。これらのケアを自分の症状と合わせて複合的に取り組んでいくことで、より質の高い生活を目指します。
まずは日常生活の注意とスキンケア
0期は、リンパ浮腫の具体的な症状が現れていないけれども、リンパ節郭清などによりリンパ液の運搬障害がある人が該当します。この場合、しっかりとリンパ浮腫を予防することが大切になります。予防には、①日常生活の注意と②スキンケアを行います。
日常生活の中での注意としては、長時間のデスクワークや立ち仕事、重い荷物の運搬によって症状が現れることがありますので、長時間の外出や同じ姿勢を維持しなければならないときは、休憩の間に足を伸ばしたりして、むくみを取るように工夫します。また、体重の増加も下肢の浮腫を悪化させる原因となります。
ホルモン療法中は食欲が亢進し、体重増加傾向になりがちですが、増やさないように心掛けることが大切です。リンパ液は心臓よりも下に位置する部位に溜まりますので、就寝時は図3のように足を少し(10~15㎝)高くして寝るのも効果的です。
リンパ浮腫は皮膚のバリア機能が低下した状態です。
皮膚状態が悪いと、細菌感染が起きやすくなり、リンパ浮腫を悪化させる原因になりますので、きちんとスキンケアをしていきましょう。入浴時には石けんを泡立て、こすらずに愛護的に洗います。洗い終わったら、きちんと市販の保湿クリームなどで保湿することが大切です。
水虫なども悪化を招く原因となりますので、靴下などは通気性の良い物を選び、清潔を保つように心掛けましょう。
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