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肝動脈化学塞栓術、そして化学療法まで

有効な治療法を適切なタイミングで!進行肝がんの治療戦略

監修●池田公史 国立がん研究センター東病院肝胆膵内科長
取材・文●柄川昭彦
発行:2014年12月
更新:2015年2月

  

「効果のある薬をしっかり使うことが大切です」と話す国立がん研究センター東病院の池田公史さん

進行した肝がんでは、まずは肝動脈化学塞栓術(TACE)が治療の基本となる。しかしやがてそれも効かなくなる。そのとき登場するのが化学療法だ。延命効果が確認されている薬がある中、いかに肝機能を維持し、適切なタイミングで効果のある薬剤をしっかり使うかが重要だという。

手術やラジオ波焼灼療法ができない場合の治療法

肝がんに対する治療は、手術やラジオ波焼灼療法(RFA)などの局所療法が可能であれば、基本的にそれが選択される。ラジオ波焼灼療法は、体の外から肝臓に針を刺し、先端の電極からラジオ波という高周波を出して、熱でがん細胞を壊死させる治療法である。

国立がん研究センター東病院肝胆膵内科長の池田公史さんは、肝がんにおける治療法の選択について、こう語っている。

「切除手術とラジオ波焼灼療法は治療効果が高く、これらの治療が行えるのであれば、それが優先されます。切除手術が可能かどうかは、最終的には外科医が判断しますが、一般的には、3㎝以下のがんが3個以下の場合、がんが単発の場合などが良い適応とされています。また、肝臓の状態も重要で、治療後に残される肝臓が十分な機能を有していることも、治療を選択する際の条件となっています」

手術やラジオ波焼灼療法などができなかった場合に行われる治療には、主に肝動脈化学塞栓術と化学療法がある。

がんに栄養を送っている血管を詰まらせることで治療する

図1 肝動脈化学塞栓術とは?

局所療法ができない場合、まず選択されるのが肝動脈化学塞栓術だ。

「肝臓には肝動脈と門脈という2つの血管から血液が流れ込んでいますが、肝がんは主に肝動脈から血液の供給を受けています。肝動脈化学塞栓術は、肝動脈にカテーテルを送り込み、がんの近くから高濃度の抗がん薬を注入してから、さらにその血管を詰まらせる(塞栓させる)ことで、がんに行く酸素や栄養を遮断する治療法です」(図1)

抗がん薬の作用と、がんへの血行を遮断する作用で、治療効果が現れることになる。従来から行われているのは、リピオドールという造影剤と抗がん薬を混ぜて注入し、ゼラチンスポンジで動脈を塞ぐ方法。使われる抗がん薬は、ファルモルビシン、アイエーコール、ミリプラのいずれかである。

「最近、ビーズという新しい塞栓物質が登場してきました。抗がん薬を浸み込ませた状態で肝動脈から投与することで、そこから長時間にわたって薬剤が出続けます。そのため薬が作用する時間が長くなり、また全身に流れて行きにくいので副作用も減らせると言われています。ただ、ゼラチンスポンジとビーズを比較する臨床試験が行われていますが、ビーズが良かったというデータもあれば、変わらなかったというデータもあって、どちらが良いとは言えない状況が続いています」

効果判定はCTまたはMRIの画像で行う。肝がんは腫瘍濃染といって造影剤で白く染まるが、治療効果が現れると、染まる程度が低下したり消失したりする。

「治療後にCTかMRIを撮って、効果が十分なら追加治療はせず、効果が不十分だった場合に追加治療が行われます」

リピオドール=一般名ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル注射液 ファルモルビシン=一般名エピルビシン アイエーコール=一般名シスプラチン ミリプラ=一般名ミリプラチン

生存期間の延長が臨床試験で確認

図2 進行肝がんに対する肝動脈化学塞栓術の効果(全生存期間)

出典:Llovet JM et al.Lancet 2002;359:1734-39

肝動脈化学塞栓術の効果は、海外で行われた複数の臨床試験で確認されている。

「肝動脈化学塞栓術を行った群と、無治療もしくは化学療法の群を比較したところ、肝動脈化学塞栓術を行った群の生存期間が長かったという結果が出ています。また、これらの複数の臨床試験の結果を分析した結果でも、ポジティブな結果が出ています。これらの結果により、肝動脈化学塞栓術は、肝がんに対する標準治療と位置づけられています」(図2)

しかし、肝動脈化学塞栓術も、段々効かなくなってしまう。

「肝動脈化学塞栓術は、いったん効いても、いずれ効果がなくなってきます。ある血管を遮断しても、人間の体はうまくできているので、他から血液をもらうために、側副血行路という新しい血流のルートができてくるからです」

効果がなくなってきたら、化学療法に移る必要がある。

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