手術は肝がん、化学療法は胆管がんの考え方で
手術ができれば根治も!肝内胆管がんの治療法
肝内胆管がんは、肝臓原発のがんの中で肝細胞がんに次いで2番目に多く、肝がん全体の約10%を占める。近年増えつつあるがんだが、手術ができない場合の予後は極めて悪いと言われている。肝内胆管がんの特徴や症状、手術や化学療法などの治療法について専門医に伺った。
肝がんと胆管がんの両方の側面を持つ
消化液の胆汁は肝臓で作られている。その胆汁の通る管が胆管である。肝臓内には細い胆管が張りめぐらされていて、それが合流を繰り返して太くなり、肝臓外の胆管へと続いている。
肝内胆管がんは、肝臓内に張りめぐらされている胆管に発生するがんである。できる臓器は明らかに肝臓だが、細かく言えば胆管から発生する(図1)。
では、肝内胆管がんは、肝がんの一種なのだろうか、それとも胆管がんの一種なのだろうか。
がん研有明病院消化器外科肝胆膵外科部長の齋浦明夫さんによれば、肝内胆管がんは肝がんの1分類でもあり、胆管がんの1分類でもあるという。
「薬物治療を考える場合には、胆管がんとして考えます。しかし、手術治療においては、原則として肝臓の手術です。肝門部(胆管が肝臓から出た部分)にまで広がる場合は、肝臓と胆管の手術になりますが、肝内に留まっていれば、基本的に肝臓の手術になります」
肝臓にできるがんの多くは肝細胞がんで、肝内胆管がんはこれとは異なる。
「胆管から発生するがんですから、がん細胞の種類は胆管がんと同じ。腺がんというタイプです。そのため、薬物療法では胆管がんと同じ抗がん薬が使われるのです」
胆管がんの多くは黄疸という症状が出ることで発見されるが、肝内胆管がんでは、黄疸が出ないことも多い。胆管の下流ががんで詰まれば黄疸が出るが、上流にがんができていても、黄疸は出ないからだ。
「初期は無症状ですが、健康診断の血液検査の結果、ALPやγ‐GTPの値が上昇し、肝機能異常と指摘されることがあります。また、人間ドックの腹部超音波検査やCT検査で、偶然見つかることもあります」
がん検診はないので、早期に発見するのはなかなか難しい。見つかったときには、すでに進行していて手術ができないことも少なくないという。
片葉切除が標準的な手術
肝内胆管がんの治療では、手術ができるかどうかが重要なポイントになる。
「離れた臓器や遠隔リンパ節に転移がある場合、あるいは腹膜播種がある場合には、手術の対象とはなりません。近傍の所属リンパ節に転移がある場合については、いろいろ議論されているところですが、一般的には手術適応ありとしています。右葉と左葉の両葉にがんがあると、手術の対象となりません」
このような手術の適応は、肝細胞がんとはかなり違っている。
「肝細胞がんは、ウイルス性の肝炎、肝硬変をベースとして発症するがんなので、それぞれが関連なく、複数のがんが出てくることがあります。ところが、胆管がんが多発している場合は、どこかに1つがんができ、そこから広がったものと考えられます。そのため、両葉にがんがある場合は、手術の対象とならないのです」
また、片葉であっても、多発(2個以上)している場合には積極的に手術は行わないという。やはり、すでに広がっている可能性が高いからである。
手術の方法は、がんが肝内胆管の末梢に留まっている末梢型と、肝門部にまで広がっている肝門型では異なっている。
末梢型の場合は、右葉か左葉のどちらかを切除する片葉切除が標準的な手術である(図2)。
肝細胞がんの場合、肝臓を区域に分け、必要な区域を切除する系統的切除が行われるが、肝内胆管がんでは行われない。その理由は2つある。
「肝細胞がんは区域内で転移することがあるため、区域を単位として切除する系統的切除が適しています。しかし、肝内胆管がんは肝細胞がんに比べて悪性度が高く、区域だけ切除する手術では、再発の危険性が高いからです。
また、肝細胞がんは肝炎や肝硬変の人にできるため、肝臓を大きく切除すると、十分な肝機能を残せないことがあります。その点、肝内胆管がんの約8割は正常な肝臓にできるため、大きく切除しても、すぐに再生してきます。30%残せば手術できますが、その場合でも、3カ月後には80%くらいまで回復します」
がんが肝門部まで広がっている場合には、片葉切除と胆管切除を組み合わせた手術が行われる。これは難易度の高い手術となる。
手術時間は、末梢型で片葉切除の場合は4~5時間程度、肝門型の場合は8~10時間程度だという。
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