進行性食道がん ステージⅢ(III)と告知されて そして……

「イナンナの冥界下り」 第6回

編集●「がんサポート」編集部
発行:2017年1月
更新:2020年2月

  

遠山美和子さん(主夫手伝い)

とおやま みなこ 1952年7月東京都生まれ。短大卒業後、出版社勤務を経て紳士服メーカー(株)ヴァンヂャケットに入社。約20年勤務の後、2011年8月病気休職期間満了で退職

<病歴> 2010年10月国立がん研究センター中央病院で食道がんステージⅢ(III)を告知される。2010年10月より術前化学放射線療法を受けた後、2011年1月食道切除手術を受ける。2015年9月乳がんと診断され11月に手術、ステージⅠ(I)で転移なし。2016年8月卵管がんの疑い。9月開腹手術。卵管がんと確定し、子宮・卵巣・卵管と盲腸の一部を摘出。9月手術結果を受け卵管がんステージⅢ(III)Cと診断。10月17日よりドース・デンスTC療法を開始


東京でお手伝いしている落語会開催日程に合わせてその前日の9月7日、がんセンター中央病院乳腺外科の予約を取っていただいた。10時30分から、マンモグラフィ、その後外来受診、午後エコー検査となっていた。

8月は学童クラブの夏休みシフト・半日働きで慌ただしく過ぎたが、念のために近くの病院で子宮がん検査も受け、これは陰性だった。

9月に入り乳腺検査日の2日前、久しくご無沙汰していた「支える会α」の代表Iさんから連絡をいただく。「食道がんで抗がん薬や陽子線治療を施したが再発してしまった方が、食道切除手術を進められていて迷っている。経験者の話を聞きたいと言っているが、同じ女性として話を聞かせてもらえないだろうか」ということだった。

私は「お手本にはなりませんが、見本にはなりますので」と自分も検査を控えている旨をお話しして日程の調整をお願いした。

「α」は千葉を拠点に活動する部位を問わないがん患者・家族を支える会で、情報交換、相談の場としてサロンや講演会を開催したりしている。紛(まご)うことなきがん患者である私もサロンで愚痴を聞いていただいたり、3年前の亀山湖紅葉狩りに参加させていただいたりもした。

「α」では月に2回「気功教室」も開催している。会の皆さんのお誘いもあり食道外科G先生にも勧められ、私も何度か気功教室に参加した。実はG先生は趣味で空手をやっていて、「気功をやっている人は強さが別格である」らしいのだ。そこで私が気功をマスターし、それをG先生に伝授するという密約が成立、気功を極めた先生は名実ともに最強の名医となる……はずだったのだが、私がボランティアで疲れ果て西千葉まで出かける余裕がなくなり、そっちから最強の名医になるというG先生の野望は断たれたのだった。

13日千葉で待ち合わせし、お会いしたRさんは私が術後初めてお話しした食道がんの患者さんだ。胃がん経験者の方には何人かお目にかかったが、食道がんそれも女性はがんセンター中央病院のTさん以来初めてだ。

Rさんは切除手術への抵抗がかなり強く、すでにいくつもの治療を経て選択肢が限られる中、高額な免疫療法なども検討しているとおっしゃるが、Iさんと私は医学的に根拠のないものはどうなんだろうというスタンスでお話をした。

後日談ではレーザー治療をされたとのこと。うまく焼き切れていることを祈るばかりだが、お目にかかってお話したことは決して無駄ではなかったよね、私自身のためにも、と思う。

マルガリータ(丸刈り)にした遠山さん、丸刈りもチャーミングだ

帽子を被っておしゃれな遠山さん

せめて初対面ぐらいは見栄を張らせてください

日付は前後するが前の週9月6日、乳腺検査前日に美容院に行き準備を整える。初めての乳腺外科、あまり見苦しいのは失礼だ。手術室に入る時は一切の化粧は無し、いわばズンドコの素顔を食道外科では曝し済みだが、せめて初対面ぐらい見栄を張らせてください、で髪をカットし明るめのカラーもした。

7日乳腺検査当日は朝シャワーを浴びて、まだ暑い時期、制汗スプレーも忘れずに。

まず食道外科で検査に必要な書類を受け取り、X線受付へ行く。マンモグラフィを受ける患者専用の衝立で仕切られた、ソファー、テレビもある思いやりあふれる待合室で待っていると、名前を呼ばれる。マンモは初めてではないが知らないとは恐ろしい、金属アクセサリーの他にラメの入った化粧品や一部の制汗スプレーもNGと言われる。「Ag(銀)で臭いを防ぐスプレーやってきました」で、ウェットタオルでごしごし落とす。

マンモは難なく済んでしまいたかったが、予想以上に分泌物がたまっていて、またまた梨汁ブシャーで看護師さんにご迷惑をかける。迷惑そうな表情なんて一切ないですが。

その後乳腺外科で診察を受けることになる。K先生は病院のホームページで予めチェックしておいた、そのまんまの温和な、優し気な(同じ意味か?)印象だ。

「食道外科G先生からの院内紹介だね。マンモの結果がまだ来てないけど」とおっしゃりながら触診。

「ここだね。採血と、午後乳腺針生検をしてしまいましょう。小さいがんを見つけるのが上手な先生がいるので」「結果が出るのは2週間後だけど、5連休になっちゃうのでその前の金曜までに頑張って結果出してもらおうか」と、楽し気なシルバーウイークとやらの前、18日(金)の午後外来予約を取ってくださった。

その後、食道外科G先生にご報告。

「良かったね、今日、次の検査もしてもらえるんだ。僕の手は離れたので後はK先生の指示通りにね、午後の先生は美人の(とおっしゃったかな?)女医さんだよ」

いろいろありがとうございました。

死ぬこと以外かすり傷ですから

3度の入院といっぱいお世話になった通院で、勝手知ったる中央病院、1日がかりになっても全然へっちゃら。採血の後、院内にあるカフェでトーストサンドの昼食。

一度には食べきれないのでいつも半分はテイクアウト用に包んでもらう。厚かましいお願いをできるのも患者さんが多く利用する場所だからか、私の厚顔が進化したからなのか。

午後、通常のエコー検査の後、超音波ガイド下針生検を行う。担当はネイビーのスクラブを着た小柄なE先生。

診察台に仰向けになり左右の手の位置など体位を決め、検査の間は動かないのが私の仕事。検査にあたりE先生は細かく丁寧にかつわかりやすく、そして検査中は間髪入れず説明をし、話しかけてくださる。

私は初めてだが先生は何度も何度もやっている検査なのに、患者が不安にならないよう配慮が素晴らしい、まさに「神対応」。こんな美人で確かな技術と気遣いと、もうほっとかないぞ、ってセクハラおやじか。

「局所麻酔をします、最初は痛みがありますが次第に薬が効いてきます、でも感覚がなくなるほど薬は使いたくないので気持ちの悪い感じがあります」「乳腺からの分泌物は良性でも悪性でも起こります。それをきちんと見極めるための検査です」「大きな音がしますが心配いりません、動かないように」

小さくて見つかりにくいのだろうか30分位かかった。途中K先生が様子を見に立ち寄ってくださった。

「美人先生にやっていただいて光栄です」

私のC調発言も「はっはっ」と笑って聞き流して出て行かれる。組織を採取した後、止血のため先生が力強く圧迫したまま10分以上。

「少し傷跡をイジメます」と針の痕を叩いたり押したりして止血を確認。私の胸の倍ほどもあるガーゼで押さえ、かぶれ止めを塗ってがっちりテープで固定する。テープは左胸全体を覆い、まるで左肋骨を折って明日から休場が決まったカド番力士みたいだ。小さな容器に入った組織を見せてくれて、「気になるところが2カ所ありましたので、採取しました。これを検査に出します。テープは24時間は剝がさないでくださいね。ショルダーバッグは反対側に掛けるようにして、バッグ重いですね」

「はい、心配性なんで、水とかブドウ糖とかお菓子とか除菌シートとか、バッグ自体も重くて」

「しばらくは左手で重いものを持ったり、掃除機かけたりしないで、大事にしてください。夜痛みが出るようだったら痛み止めのロキソニンなどを飲んでください、大丈夫ですか?」「はい、死ぬこと以外かすり傷ですから」

そう、死んだら痛くはない、難しいところだ。

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