定位放射線療法を併用した臨床試験も進行中 子宮頸がんの化学放射線療法
子宮頸がんは放射線がよく効くがんで、術後治療だけでなく、根治的治療として放射線治療が標準治療になっている。特にがんが大きい場合や局所進行がんに対しては、化学療法と放射線療法を併用する化学放射線療法が選択される。
標準治療として行われている化学放射線療法は、シスプラチンによる化学療法、4方向からの体外照射、子宮の内側から照射する腔内(くうない)照射(小線源治療)を組み合わせた治療法である。
現在、この腔内照射の代わりに(体幹部)定位放射線治療(SBRT)を併用し、その有効性などの検討する臨床試験が始まっている。
抗がん薬の併用により放射線への感受性を高める
子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が持続的に感染することが原因となって発生する。そして、HPVの感染で起こるがんには、放射線療法の効果が高いことがわかっている。
そのため、子宮頸がんの治療では、根治的治療として放射線療法が選択されることがある。1990年代にイタリアで手術と放射線療法を比較するランダム(無作為)化比較試験が行われ、ステージ(病期)ⅠB~ⅡAの患者では治療成績に差がないことが明らかになっている。
放射線療法単独ではなく、抗がん薬による化学療法と放射線療法を組み合わせた化学放射線療法という治療法もある。都立駒込病院放射線診療科部長の唐澤克之さんは、次のように解説する。
「がんが大きい場合や、局所で進行した場合には、放射線単独で治療するよりも、化学放射線療法のほうが効果の高まることがわかっています。抗がん薬を加えることで、がん細胞の放射線に対する感受性が高くなるのが、併用する最大の理由です。
化学療法は全身治療なので、目に見えない遠隔転移が起きていた場合にそれを叩(たた)くという目的もありますが、メインは放射線の効果を高める役割です」
ステージⅠB2~ⅡBが治療対象に
手術と化学放射線療法の対象となる子宮頸がんは、ステージⅠB2、ⅡA2、ⅡBである。
ステージⅠB2はがんが子宮内に留まっているが病変の大きさが4cmを超えるもの、ⅡA2は膣(ちつ)または子宮傍組織(子宮周囲組織)に広がっていて大きさが4cmを超えるもの、ⅡBは子宮傍組織に広がっているが骨盤壁には達していないものである。
「ステージⅠB2とⅡA2はがんが大きいため、手術がしづらいという理由で化学放射線療法が選ばれることがあります。ⅡBになると、手術に比べて侵襲が少ないという理由で、化学放射線を選ぶ人が多くなります。手術だと神経が傷つくことで排尿障害が起こる可能性が高いのです」
ステージⅢA、ⅢB、ⅣAは手術の対象とはならないため、化学放射線療法が行われる。ⅢAはがんが膣の外陰側3分の1まで広がっているもの、ⅢB期はがんが骨盤壁に達するもの、ⅣA期はがんが膀胱粘膜や直腸粘膜に達しているものである。
「ⅣA期はがんが膀胱粘膜や直腸粘膜に達しているので、膀胱や直腸に孔(こう)を開けずに治療するのが難しいところです。顔にできた大きな腫瘍を放射線で治療すると、元の顔に戻りますが、手術で切除すると元には戻りません。放射線で膀胱や直腸に浸潤するがんだけが消えれば、孔を開けず治すことができるわけです」
体外照射と腔内照射を組み合わせる
子宮頸がんの化学放射線療法は、抗がん薬のシスプラチンを用いる化学療法と放射線療法を併用する。放射線療法は、通常の体外照射と子宮内から放射線を照射する腔内(くうない)照射(小線源治療)を組み合わせて行う。治療のスケジュールは次のようになっている(図1)。
化学療法は、シスプラチンを週1回、点滴で投与し、これを5~6週続ける。
放射線治療の体外照射は、1回2Gy(グレイ)週5回を基本として、計25回照射する。前後左右の4方向から照射する4門照射が一般的だ。放射線治療計画に基づいて照射範囲を決定する(図2)。
4週目からは腔内照射が加わり、週1回で4回行う。膣にアプリケーターと呼ばれる治療器具を入れ、子宮内に小さな線源が通る管を挿入する。リモートで線源を子宮内に送り込み、がんのすぐ近くから放射線を照射する。器具を入れるときに麻酔を行うが、照射による痛みはない。
「腔内照射では、1回の治療で子宮頸部に10Gyくらいの放射線が照射されます。4回で40Gy照射できるので、これを加えることで治療成績が高まることが期待できます」
腔内照射を行うときには、膣の後ろ側にガーゼなどを詰め込み、できるだけ線源と直腸の距離を取るようにする。
「直腸との距離が10㎜離れると、6Gy当たっていた放射線が4Gyに減るくらいの違いがあります。正常組織に対する放射線の慢性期の影響は、概ね1回の線量の逆2乗に比例すると考えられますで、3分の2が9分の4くらいに減るという、大きな違いになります」
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