増えている腺がん。重粒子線治療など新たな治療法も研究中
どう治療する?予後が悪い子宮頸部腺がん
「化学療法や放射線が効きにくい
腺がんですが、新たな方法の
研究が進んでいます」と話す
深澤一雄さん
現在、子宮頸がんは大きく「扁平上皮がん」「腺がん」の2タイプに分かれます。
腺がんは治療が効きにくく、扁平上皮がんと比べると予後が悪い傾向がありますが、新しい治療法の研究が意欲的に続けられています。
子宮頸がん全体の約25%を占める
[子宮頸がんの組織型の内訳]
子宮頸がんは子宮頸部(子宮の入り口)の表面の上皮細胞に発生するがんで、大きく「扁平上皮がん」「腺がん」の2タイプに分かれます。上皮細胞は腟に近い部分を扁平上皮、子宮体部に近い部分を腺上皮といいますが、それぞれの上皮細胞ががん化して「扁平上皮がん」「腺がん」になります。
子宮頸がん、腺がんの発生はそのほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因であることが明らかとなっています。腺がんの発生原因については、ヒトパピローマウイルス以外の理由も考えられていますが、詳しいことはまだよくわかっていません。
患者数を見てみると、子宮頸がんは罹患率及び死亡率が低下してきています。
子宮頸がんに占める2タイプの割合を比べると、扁平上皮がんは年々低下傾向にありますが、腺がんは上昇しています。最近の統計では、腺がんの割合は子宮頸がん全体の25パーセント程度に増えています。これは扁平上皮がんの発生が子宮頸がん検診の普及に伴い、前がん病変の状態で発見されるために低下していることが大きな理由と考えられています。ただ、理由ははっきりとはわかりませんが、腺がん罹患数も増加している傾向があります。一方、扁平上皮がんに関しては最近若年者で増加していることに注意が必要です。
増加傾向にある腺がんは、一般的に扁平上皮がんよりも悪性度が高く、早期発見が難しいがんといわれています。
早期発見が難しい理由として、腺がんは子宮の内側にできるので細胞を採りにくく、細胞診検査(細胞をこすりとって顕微鏡で調べる検査)で見つけにくいとされています。
また、細胞の形も正常な細胞とがん細胞とがよく似ているタイプがあるなど、診断も難しい場合があります。
このような細胞採取の際の採取エラー、検査での見落としなどから、見つかったときにはすでにある程度進行してしまっているケースもあるといわれています。
がん検診で問題がなかったからといって、不正出血、水っぽいおりものなどの自覚症状がある場合には、次の検診を待つことなく、必ず医療機関へ受診してください。
ある程度進行してしまった患者さんで、1年前のがん検診で大丈夫と言われたという方もたまにいますが、よく話を聞くと、「不正出血があった」「おりものが多かった」と言います。
ハイリスク型18型の腺がんが多い
ヒトパピローマウイルスは、100以上の型があり、すべてが子宮頸がんの原因ではありません。子宮頸がんを引き起こすのは、16型、18型などのハイリスク型のみです。なかでも、腺がんは18型感染に起因するものが多く、一般的に予後が悪いです。
予後不良となる原因はいくつかあり、①扁平上皮がんよりも、早期から転移(*)が起こりやすいこと②放射線療法や化学療法(抗がん剤治療)が効きにくいこと──などが挙げられています。このため、同じ病期(進行の程度)でも、腺がんのほうが予後が悪いと考えられています。
5年生存率も、2期以上では扁平上皮がんに比較して腺がんの予後は不良です。
欧米では多くの国で子宮頸がん検査として、細胞診検査とヒトパピローマウイルス検査の併用検査を用いていますが、日本では細胞診検査のみで診断を行います。
しかし、腺がんでは前述の通り、細胞の採取エラー、見落としが生じやすく、細胞診検査だけでは腺がんの診断は扁平上皮がんに比べると難しいといわれています。
*転移=子宮頸部腺がんの転移の仕方で多いのはリンパ行性転移、血行性転移(リンパの流れ、血液の流れに沿って起こる転移)や播種性転移(がん細胞の表面からその細胞がまき散らされるように起こる転移)がある
扁平上皮がんと同じ治療法を選択
腺がんは扁平上皮がんと比べて予後が悪いため、扁平上皮がんとは異なる治療法が必要と言われていますが、腺がんのみを対象とした臨床試験はほとんどなく、腺がんの治療に関するエビデンス(科学的根拠)は未だ得られていません。したがって、現時点では腺がんに対する治療は扁平上皮がんと同じ治療法が用いられています。
ただし、腺がんは扁平上皮がんと比べて放射線療法、化学療法が効きにくい傾向があります。
また、初期のがんであれば、赤ちゃんが育つ子宮体部を残すことで妊孕性(妊娠する力)を保つ治療もできますが、腺がんは扁平上皮がんよりも悪性度が高いので、そうした手術ができるかどうかは、慎重に判断しなければいけません。
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