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これだけは知っておきたい 子宮頸がん編
根治性ばかりでなく、治療後のQOLもよく考えたうえで治療法を選びましょう

監修:関口勲 栃木県立がんセンター婦人科医長
構成:半沢裕子
発行:2005年8月
更新:2014年1月

  

関口勲さん
栃木県立がんセンター
婦人科医長の
関口勲さん

婦人科がんの治療は、乳がんに比べて大きく遅れていましたが、最近は臓器の温存や術後の後遺症・合併症の軽減などにも目が向けられ、変わってきました。しかし、現状を見るとまだ新旧が入り乱れて混沌としている状態です。

ここに注意しながら、子宮頸がんの治療とケアについて、これだけは患者さんに知っておいていただきたい事柄を記してみます。

婦人科がん全般について
症例、年齢、妊娠の可能性・・・。考慮することの多いがん

「婦人科がんは病院、医師によって、考え方も治療法も大きく異なる」

婦人科がん治療の現状をひとことで言うと、こうなるのではないかと思います。

婦人科がんはこの10年で治療法が大きく変わりました。子宮や卵巣は以前、がんが見つかったら全摘するのが当たり前でした。生命維持に関係のない器官と考えられ、再発防止、つまり根治性を高めるためには、できるだけ大きく取ったほうがいいとされたのです。実を言えば、こうした基本方針で婦人科がんにのぞむ病院は今も少なくありません。

一方、できるだけ小さく切ったり(縮小手術)、別な療法を試みたりする病院も増えています。開腹手術が与える傷やダメージが大きいことや、治療技術が日々進歩していることも理由でしょう。しかし最大の理由は、たとえ生命維持に直接関係がなくても、子宮や卵巣を温存できるかどうかで、女性の心身状態やその後の生活が大きく変わると、広く理解されたからだと思います。

事実、子宮がんや卵巣がんは術後に独特の後遺症・合併症をともなうことがありますし、子宮や卵巣を失ったことを「女性でなくなった」(これは明らかに間違いですが)と悩むなど、精神的ケアを必要とする患者さんも少なくありません。

ただし、いくら縮小手術を望んでも、症状によってはやはり大きく切らなければなりませんし、望む療法が適当でない場合もあります。大事なのは、自分のがんの状態について正しく知り、できるだけ根治性が高く、なおかつ術後の後遺症をできるだけ防ぎ、子宮や卵巣の機能をできるだけ温存できる治療法を選ぶことだと思います。

検討項目はたくさんあります。年齢、全身状態、結婚、妊娠を望むかどうか。がんを治すのに、卵巣やリンパ節まで取る必要があるか、どんな取り方で子宮を取るか……。

つまり、婦人科がんほど、信頼できる医師に出会い、積極的に治療計画を話し合う必要の高いがんはない、と言えるのです。皆さんにはこうした事実を知っていただき、積極的に医師に相談したり、意見を聞いたりして、納得できる治療を受けていただきたいものです。

子宮頸がん
進行の遅いがんなので、納得のいく治療計画を

[子宮頸がんの治療法]
ステージ
(病期)
治療法
0 円錐切除術
or
単純子宮全摘術
 
1a 場合により放射線治療追加
1b 化学放射線治療
or
広汎子宮全摘術
場合により放射線治療追加
2
3 化学放射線治療
4a
4b 化学療法 and/or 放射線治療

子宮頸がんは、日本人の子宮がんの中で最も患者数の多いがんです。洋梨型をした子宮の下のほう、細くなった部分(子宮頸部)にがんができます。子宮頸部の先端は腟に顔を出していて、しかも、がんはその部分にできることが多いので、検診で早期発見される患者さんが多いのも特徴です。

おまけに、子宮頸がんはたいていの場合、とてもゆっくり進行します。アメリカでは2、3年に1度の検診で十分とされるほどです。ですから、子宮頸がんと診断されても決してあわてず、手術以外の治療法はないのか、手術はどんな規模の手術なのか、しっかり確認していただきたいと思います。後述しますが、患部を大きく切除する手術が、必ずしもベストな治療法とは限らないからです。

子宮頸がんの病期は、0期~4b期に分類されます。大ざっぱに言って、0期~1a期は根治する病期、1b~2期は根治する可能性の高い病期、そして3~4b期は延命を追求する病期、と言えます。

病期ごとの主な治療法は、0期~1a期が子宮頸部円錐切除術、単純子宮全摘術など、1b期~2期が広汎子宮全摘術(リンパ節郭清をふくむ)か放射線治療、3期~4期が放射線治療と化学療法(抗がん剤)の併用療法となっています。放射線治療はまた、1a期~2期で、切除した部分の病理組織検査の結果、再発予防のため追加することもあります。

子宮頸部円錐切除術とは、がんのある子宮頸部の組織を円錐状に切除する方法。組織診断のために取ることもありますが、早期がんの場合は、検査と治療をかねることになります。

単純子宮全摘術とは、がんに侵された子宮をとる手術です。お腹を切る場合と、お腹にメスを入れず、腟側から切り取る場合があります。卵巣、卵管まで一緒にとるケースも少なくありません(両側付属器切除術)。

広汎子宮全摘術とは、がんが大きい場合などに、子宮と腟の一部をふくめ、骨盤壁近くまで広く切除する手術です。基本的に、周辺のリンパ節も取ります。

[子宮頸がんの手術の種類]

[円錐切除術]
図:円錐切除術

高周波メスやレーザーなどを用いて、子宮頸部を円錐状に切り取る方法

[単純子宮全摘術]
図:単純子宮全摘術

子宮だけを切り取る。閉経後の人などでは卵巣もいっしょにとることもある


[準広汎子宮全摘術]
図:準広汎子宮全摘術

子宮とともに、周囲の組織や腟の一部を切除。場合により、卵巣・卵管や骨盤内のリンパ節をとる

[広汎子宮全摘術]
図:広汎子宮全摘術

子宮、子宮傍組織、腟、傍腟結合織、卵巣、卵管、骨盤内のリンパ節など、広い範囲を切り取る



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