再発・胃がん/大腸がんの治療 最初に正しい治療を受けることが再発予防になる
肝転移や肺転移も、簡単にあきらめる必要はない!
消化器センター長の
山口俊晴さん
できることならがんの再発は防ぎたいものです。そのための最良の方法は、最初にきちんとした治療を受けることに尽きます。仮に再発したとしても、再発を早く発見することによって、最近では治せるケースが出てきました。
血液やリンパ液に運ばれた小さながんが大きくなる
がんの「転移」や「再発」という言葉は、よく耳にしますが、それをきちんと説明するのは簡単ではありません。まず、そこから始めることにしましょう。
たとえば、大腸がんがあったとしても、そのがんがいつまでもできた部位にじっとしているのであれば、手術で切り取れば治ってしまいます。ところが、がんという病気は転移を起こします。血液やリンパ液に乗って、目に見えないほど小さながんが、肝臓、肺、リンパ節など、他の部位に飛び火するのです。腹膜に飛び火することもあります。このような現象を転移と言います。
転移したばかりのがんは、画像検査では発見できないほど小さく、そこにじっと隠れています。大腸にできたがんを手術で切除すると、見えるがんはなくなりますが、しばらくすると、転移していた小さながんが大きくなってきます。これが再発です。つまり、目に見えないほど小さかった転移したがんが、大きくなることによって、がんが再発したと診断されるのです。
手術をして、目に見えるがんがなくなったとしても、安心はできません。体の中には、小さながんが残っていることがあります。がんの再発は、そこから始まるのです。
胃がんや大腸がんの再発を発見するためには、いろいろな検査が行われます。
画像検査
CT(コンピュータ断層画像)、MRI(磁気共鳴画像)、PET(陽電子放出断層撮影)、超音波検査などの画像検査は、再発を診断するための重要な検査方法です。ある程度の大きさにならないとわかりませんが、がんの有無だけでなく、がんができている部位、大きさ、個数などを知ることができます。
図1の左上はCTによる腹部の断層画像です。胃のそばにあるリンパ節が大きくなっていて、ここに転移していることがわかります。
左下はMRIによる画像です。肝臓に転移しているのがわかります。黒く写っている肝臓の中で、白く見えるのが転移したがんです。
右はPETの画像です。肝臓のところに白く光って見えるのが、胃がんの肝臓転移です。PETは、代謝が盛んで酸素をたくさん使っている部分が光って見えます。頭部が光っているのは、脳が活動しているためです。
CTによる腹部断層画像
MRIによる画像
CTによる腹部断層画像
腫瘍マーカー
再発の発見には腫瘍マーカーも使われます。がん細胞が作った物質が、血液の中に出てきていないかどうかを調べる検査です。がんがある程度大きくなれば、腫瘍マーカーの値が上がってきますが、この検査だけで再発を診断することはできません。定期的に腫瘍マーカーを調べ、その値が上がってきたら画像検査を行う、というように組み合わせます。
自覚症状
痛みによってがんの骨転移が見つかるように、自覚症状によって再発が発見されることもあります。そのため、自覚症状に注意しておくことは大切です。ただ、自覚症状はさまざまな原因で現れるため、ほとんどはがんの再発とは関係がありません。症状を気にして不安になるより、きちんと定期的に検査を受けることが勧められます。
がんの再発は、以上のような方法で発見されます。ただ、がんの再発を早く発見し、早く診断しても、仕方ないのではないか、という意見があります。再発から3カ月後に診断しても、6カ月後に診断しても、どうせ治すことはできず、結果は同じなのだから、まめに検査を受けても意味がないというのです。 確かにかつてはそうでしたが、最近は少し変わってきました。再発を早く発見することによって、治せるケースが出てきたのです。そういう意味で、早く診断することには意味があります。
また、定期的に検査を受け、再発が起きていないことを確認することにも意味があります。検査を受けなければ、「再発していないだろうか」という不安が生じますが、検査を受けて再発していないことがわかれば、次の検査までは安心していられます。患者さんにとっては、これがとても大切なのです。
統計的には、検査しても患者の生存期間が変わらないのは事実でしょう。最近のように医療費を下げることばかり考えるようになると、延命に寄与しない無駄な検査はやめようということになりがちです。しかし、そのような検査を削ることで、医療の質は必ず低下してしまいます。
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