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年1度の超音波検査が早期発見のカギ 胆のうがんは早期に見つければ95%完治する

監修●渡邊五朗 医療法人財団順和会山王病院消化器外科医師/国際医療福祉大学 病院教授/元・虎の門病院副院長
取材・文●菊池亜希子
(2018年10月)

  
「日本は超音波検査の分野で世界のトップです。人間ドックや健康診断で指摘されたり、経過観察の途中で疑問や不安を抱いたときは、超音波画像を正確に読む技術を持つ専門医を訪ねましょう」と語る渡邊五朗さん

5年生存率20%と聞くと、絶望的にすら思える胆のうがん。閉鎖された臓器の中にできるがんだから、症状が出にくいことも難しさの一因だ。しかし、症状のない早期の段階で発見して手術すれば、なんと95%完治するというのだ。その方法とは――。

胆のうがんの現実と希望

胆のうは、肝臓で作られた胆汁(消化液)を、一時的に溜めておく小さな袋(臓器)である。胆汁が肝臓から十二指腸へと流れる胆管の途中に中継地点のように存在し、脂肪分や食物繊維などを摂取して消化力を高めたいとき、つまり胆汁をさらに必要としたときに、胆のうが自ら縮んで胆汁を押し出し、十二指腸へ送りこんで消化を助けるのだ(図1)。

内視鏡で臓器内の様子を見ることができる胃や大腸と違い、胆のうという閉鎖された袋の中は見ることができない。かつ、臓器内にがんができても、その中に留まっている限り、症状になって現れてこないため、自覚症状がなく発見が難しい。つまり、早期発見が非常に難しいがん種と言っていいだろう。

ちなみに、がん種別5年生存率を見ると、最も厳しい膵がんの10%弱に次いで、胆のう・胆管がんは20%強と、やはり厳しいことがわかる。日進月歩の医療技術を持ってしてもこれほど難しいのか……と絶望しそうになるが、ちょっと待ってほしい。実は、日本では胆のうがんの早期発見が増えてきているのだ。

「日本は超音波(エコー)検査が非常に進歩し、人間ドックや健康診断で行う腹部の超音波検査で、早期胆のうがんが見つかるようになりました。症状のない早期の段階で見つけて手術すれば、胆のうがんは95%完治します」と、元虎の門病院副院長で、現在、山王病院消化器外科医師の渡邊五朗さんは話す。

進行して症状が出てから治療を始めたのでは、極めて難しい胆のうがん。しかし、症状のない早期で見つけて手術すれば、ほぼ完治するというのだ。

コレステロールポリープなら問題なし

「症状がない段階の胆のうがんに気づく方法は、腹部の超音波検査が唯一の手段です」と渡邊さん。人間ドックや健康診断で超音波検査を受けると、5人に1人ほどの割合で「胆のうポリープ」を指摘されるそうだ。ポリープとは〝できもの〟の総称である。

ちなみに、健診などで指摘された「胆のうポリープ」の99%以上は、コレステロールポリープだそうだ。これは、胆汁に含まれるコレステロールが、胆のうの壁に沈着して出っ張っただけのもので、何の問題もないという。

コレステロールポリープは、茎がくびれたキノコ型の5㎜前後のポリープが複数できるのが特徴。ただし、形がキノコ型だからコレステロールポリープかと思ったら実はがんだった、というケースも稀にあるので、年に1度は経過観察して、大きさや形が変化していないかを確認していくことが大切。何年か経過を追っても状況に変化がなく、コレステロールポリープだと確定すれば問題なし、となる。

つまり、コレステロールポリープならば、大きさや形に変化はない。逆に言うと、年数を経て大きくなったり、形が変わってきたりした場合は、がんを疑う。その場合、手術へ進むわけだ。

「胆のうは小さな袋ですから、中から異物だけを取り出すことはできません。手術となると、胆のう自体を摘出することになるのです。もちろん、がんが疑われる場合は胆のうを摘出しますが、コレステロールポリープならば、大切な臓器を失う必要など全くないのです」と渡邊さんは指摘する。

コレステロールポリープか、がんか、その判断がまず重要。経過観察の過程で疑問を感じたら、迷わず、超音波画像診断の専門医を訪ねよう。

早期で見つかる胆のうがんは、すべて「乳頭型」

問題は、コレステロールポリープではなかった場合だ。ここからは、早期胆のうがんについて詳しく触れていく。

胆のう内の壁は、表面が粘膜で覆われており(粘膜層)、そこから奥へ順に、固有筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜という4層構造になっている(図1)。

「早期胆のうがんとは、がんが固有筋層までに留まっているものです」と渡邊さん。

つまり、超音波画像に映る表面上の大きさや派手さではなく、胆のうの壁のどこまで奥深く浸潤(しんじゅん)しているかがポイント。がん細胞が固有筋層を越えていない段階で見つけることができれば「早期」であり、胆のう摘出術で95%完治する、というわけだ。

胆のうがんには、袋の中で表面に飛び出して塊のように育っていくタイプ(乳頭型)と、胆のう壁の奥深くに浸潤して壁が分厚くなっていくタイプ(平坦浸潤型・結節型)の2種類があって、早期胆のうがんとして発見されるものほぼすべでが「乳頭型」だそうだ。

乳頭型は 〝出っ張っているもの〟という意味で、表面にモコモコと粒状にがんができるものが多いが、壁の奥深くに向かっては時間をかけてゆっくり染み込んでいく、という特徴がある。

「表面にモコモコと派手に広がるので、画像上は大変なことになっているように見えますが、実際は表面だけで、壁の奥にはほとんど浸潤していないこともあります。もちろん放っておくと、いずれは筋層を超えて進行がんになっていきます。けれども、乳頭型は年単位で大きくなるので、年に1度の健康診断で、早期がんで発見できることが多いのです」(画像2)

■画像2 「乳頭型」早期胆のうがん

乳頭型でも少々発見が遅れ、がんが少しだけ固有筋層を超えて、漿膜下層に入ってしまった状態で発見されることもあるが、これについても渡邊さんは次のように言及する。

「筋層までに留まっているのが早期がんの定義ですから、分類としては進行がんに入ってしまいます。けれども、がん本体は、表面だけがモコモコの乳頭型がちょっと進んでしまっただけなので、私たちはあえて 〝早期類似がん〟と呼んでいます。この段階ならば、早期とそれほど遜色ない割合で完治できます」(図3)

乳頭型でも、さらに進んで漿膜下層深くまで浸潤してしまうと進行がんになり、肝臓やリンパ節へ転移していく。こうなると、たとえ手術ができて胆のう摘出と転移部分をすべて摘出したとしても、5年生存率は47~48%ほどに下がってしまうそうだ。

もう1つのタイプである「平坦浸潤型」については後程触れるとして、ここで、早期胆のうがんで見つかることの多い「乳頭型」を整理してみよう。

乳頭型の特徴は、がんの成長が年単位でゆっくりであるということ。故に、年に1度の健康診断などで比較的見つかりやすいことを、まず念頭に置いてほしい。言い換えると、胆のうがんで早期に見つかるものは、まず乳頭型だと言っても過言ではない。

つまり、早期(で見つけることのできる)胆のうがんを分類すると、すべて乳頭型であり、乳頭型は隆起型と表面型に分けられる。隆起型は、さらにポリープ型と広基性(無茎性)隆起型に分けられるので、早期胆のうがんには、ポリープ型、広基性隆起型、表面型の3つの型があるわけだ(図4)。

ポリープ型はくびれた茎を持つキノコ型で、コレステロールポリープに形が似ている。前述のように、複数のコレステロールポリープの中に紛れ込んでいることも稀にある。コレステロールポリープの大きさや形が変化しないかを経過観察するのは、ポリープ型の早期胆のうがんを見逃さないためだ。

広基性隆起型は、茎がなく、胆のうの壁が隆起したように盛り上がっていたり、そこだけ壁が分厚いようなもの。このタイプは乳頭型の中では進行が早めなので、小さくても注意が必要。3カ月単位で経過観察していくという。とはいえ、乳頭型であることに変わりはないので、固有筋層を越えて壁の奥深くにあっという間に浸潤していくわけではないから、超音波での早期発見は十分可能だ。

表面型は文字通り、表面にモコモコと粒が集まったように出てくるタイプ。中には、表面に薄くがんが広がって、ところどころ粒状に出っ張ってくるものもあるという。このタイプの症例について、渡邊さんは次のように語った。

「胆のう壁が分厚いから怪しいということで経過観察を続けた患者さんで、数年後に分厚い壁から出っ張りが1個出てきた人がいました。翌年に2個になったとき、これは明らかに怪しいということで胆のうを摘出したところ、分厚い壁だと思っていたものは、表面に薄く這うがんでした。薄く浅く広がったがんの一部が出っ張ってきたわけです。がんは胆のうの中、全体を薄く覆っていましたが、ごく浅くて筋層に留まっていたので、これも早期胆のうがんで、完治しました」

ちなみに、早期がんで胆のうを摘出する場合、ポリープ型は腹腔鏡下手術で十分安全に摘出できる、と渡邊さんは考えている。なぜなら、ポリープ型で、経過観察を続けた上で摘出する場合、固有筋層を越えて浸潤していることは、まずないからだそうだ。一方、ポリープ型以外の広基性隆起型や表面型に関しては、早期と思って手術したら、固有筋層を越えて漿膜下層まで浸潤していたために腹腔鏡下では取り切るのが難しい、というケースが3分の1ほどあるとのこと。このため、広基性隆起型や表面型については、開腹手術が望ましいそうだ。

平坦浸潤型・結節型=がんが胆のう壁の奥深くに浸潤して壁が分厚くなっていくタイプは、医学的に分類すると「平坦浸潤型」と「結節型」に分けられるが、状態や性質が類似しているため、記事内では「平坦浸潤型」にまとめることとする

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