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進行別 がん標準治療
劇的な生存率の向上を生んだ抗がん剤と手術併用の進歩

取材・文:「がんサポート」編集部
発行:2004年11月
更新:2013年4月

  

がんの治療でこれほど劇的に生存率の向上を見せたがんもめずらしいです。
一昔前は、手足を切断するというむごい治療を敢行しても、
またすぐ再発・転移で1年のうちに命が奪われるという悲惨ながんでした。

それが抗がん剤の進歩と手術の改良により、飛躍的に向上し、
命が助かるばかりか、患肢も温存できるようになりました。
今回は、この悪性骨腫瘍と、筋肉や血管、神経などにできる軟部肉腫についての最新の標準治療を解説していきます。
患者数が少ないけれども、種類が多くて複雑なので、治療法の選択だけでなく、病院・医師選びも重要です。

15年の間に劇的に生存率向上

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骨と軟部組織にできるがんは、発生数こそそれほど多くないけれども、若い、成長期の子供によくでき、しかもその場所が手足に多いために、命が助かっても、悪ければ手足が切断され、生涯にわたって大きな障害を背負って生きていかなければならないという、過酷な運命を持ったがんです。

しかも、発生数が少ないのに、非常に種類が多くて、軟部組織のがんにいたっては50種類以上にも及び、複雑・難解を極めています。

このがんで最も代表的なのは骨肉腫ですが、これは、かつては“不治の病”といわれ、早い時期から転移を起こして子供の命を奪うという悪性中の悪性がんで、映画やテレビドラマの題材としてしばしば取り上げられました。何とか命だけでも助けようと、手足の切断という乱暴な治療がとられました。しかし、その結果は、切断しても肺転移を起こして1年以内に90パーセントが死ぬという悲惨なものだったのです。

しかし、いまや抗がん剤をはじめとする治療法が著しく進歩し、この15年ぐらいの間に生存率が飛躍的に向上しています。このことはしっかりと頭に入れておきたいものです。

ここで、お断りしておかなければいけないのは、この骨と軟部組織のがんは、正しくは、「がん」ではなく、「肉腫」と呼ばれています。軟部組織は、体をつくっているやわらかい組織、たとえば筋肉や血管、神経、脂肪組織などです。体や内臓の表面を形成している上皮組織にできる悪性腫瘍のことをがんといい、それ以外の、骨や軟部組織にできる悪性腫瘍は肉腫と呼ばれているからです。

さらに複雑なのは、骨肉腫は、骨にできるがんのうちの、特定の骨肉腫を指すのが普通で、骨にできるがんは、それ以外にもさまざまあることから、「骨肉腫」ではなく、「悪性骨腫瘍」と呼ばれています。

悔いを残さないために、専門医のいる病院を選ぶのが大切

[悪性骨腫瘍のできやすい部位]
悪性骨腫瘍のできやすい部位

私たちの体は200本以上の骨で支えられています。そればかりか、大切な臓器も守られています。骨は、表面から「骨膜」「緻密質」「骨基質」「骨髄」で形成されています。

この骨にできるがんには、最初から骨に発生する「原発性」のがんと、他の臓器から転移してきた「転移性」のがんとがありますが、今回取り上げるのは原発性のがんで、悪性骨腫瘍と呼ばれるがんです。

悪性骨腫瘍の発生頻度は年間10万人あたり0.8人。全国で500人ほどです。軟部肉腫は少し多いですがそれでも年間10万人あたり2人。全国で2000人程度。ですから大学病院クラスでも診療する新患数が年10~20人程度です。国立がん研究センターや癌研病院が一番多くて、100人ぐらいです。

このような現状をつぶさに見るならば、きちんとした治療を受けるには症例数の多い、専門医のいる、少なくとも大学病院クラスの病院を選ぶ必要があります。町の市中病院では、診療経験のない医者が診ることになるわけですから、きちんとした治療を期待するのは土台無理な話です。大学病院でも、専門ではない科や医師の診療を受けるのは考えものです。数年前に埼玉医科大学で抗がん剤の過剰投与で女子高生を死亡させるという事件が起こっています。

大学病院でさえこのような現状ですから、もし骨や軟部組織にできるがんとわかったなら、大学病院でも整形外科や化学療法科、臨床腫瘍科などの専門科を訪ねることが大切です。

症例数が多い、経験豊富な病院を挙げておきましょう。東では国立がん研究センター、癌研病院、慶応大学、西では大阪大学、京都大学、大阪府立成人病センターです。


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