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軟部肉腫は多様。治療は必ず専門医に受けよう!
手術に化学療法。変わりつつある軟部肉腫の治療

監修:井須和男 国立病院機構北海道がんセンター腫瘍整形外科・外科系診療部長
取材:がんサポート編集部
発行:2012年4月
更新:2019年7月

  
井須和男さん
「軟部肉腫は診断・治療の難しい
病気なので、専門医のもとで
治療を受けて欲しい」と話す
井須和男さん

変わりつつある軟部肉腫の治療患者さんの数は少ないが、その種類は50以上という軟部肉腫。
標準治療は確立していないが、新薬も登場し、治療は確実に進歩している。


癌と肉腫、どう違うの?

[代表的な軟部肉腫]

悪性線維性組織球腫 脂肪肉腫
最も多い軟部肉腫の悪性線維性組織球腫。
左下腿にできたもの
2番目に多い軟部肉腫の脂肪肉腫。
背中にできたもの

一般に「がん」と総称されていますが、がんには大きく2つの種類があります。

1つは「癌腫」。臓器表面の細胞(上皮細胞)や造血器()などから発するもので、胃がん、肺がんなど、よく知られたがんはここに含まれます。

そしてもう1つが「肉腫」。骨など、体を支える臓器の細胞から出てくる悪性腫瘍の総称です。骨にできるもの(悪性骨腫瘍と総称)と、筋肉や血管、神経や脂肪など、骨以外のやわらかい組織にできるものがあります。この、骨以外のやわらかい組織(軟部組織)にできるのが、軟部肉腫です。

造血器=骨髄の中にあり、白血球、赤血球などの血液細胞やリンパ球などを作り出す器官

「肉腫です」といわれたら、専門医にかかることが大事

[骨・軟部肉腫とは]
骨・軟部肉腫とは

がんは、臓器表面の細胞や造血器にできる「癌種」と、「肉腫」があり、そのうち骨以外の組織にできるものを軟部肉腫という

骨・軟部肉腫は発生数が少なく、患者さんの数はがん全体の1~2%程度。日本の年間発生患者さんの数は1万人 程度と推測されています。しかし、体中のあらゆるところに発生し、種類が非常に多く、とくに軟部肉腫は50以上の種類があるといわれます。はっきり分類できないものも少なくありません。

「ですから、患者さんは何科を受診したらいいかわからず、受診した科でそのまま治療を受ける人も少なくありません。しかし、専門医でなければ診断・治療のむずかしい病気ですので、患者さんは肉腫の診断を受けたら、専門医を訪ね、適切な診察・治療を受けてほしいと思います」と語るのは、日本にはまだ少ない骨軟部肉腫の腫瘍専門医、国立病院機構北海道がんセンター腫瘍整形外科・外科系診療部長の井須和男さんです。

最も診療数の多い国立がん研究センターやがん研有明病院でも、新しく診察する患者さんは年に100人程度。治療実績のある、最新治療に通じた医師に主治医になってもらうには、多少遠くても専門医を探すことが大切なのです。

骨肉腫は若年層に発生しやすく、かつては手足切断の大手術を受けても、90%が1年以内に亡くなる深刻な病気でした。その骨肉腫も抗がん剤をはじめとする治療法の進歩によって、近年、生存率が飛躍的に進歩しました。井須さんはいいます。

「軟部肉腫も発見が遅れたり、できた場所が悪いと命に関わりますが、最近は治療法がかなり確立され、治癒したり、長期の延命をはかれる可能性が高くなっています」

太もも、頭部、腹膜にもでき、進行度は悪性度で決まる

[左大腿骨にできた滑膜肉腫]
左大腿骨にできた滑膜肉腫

滑膜肉腫の最大径は9.6cm。痛みはない。初診時に、肺転移があった。大腿骨の滑膜肉腫は広汎切除した。術後にドキソルビシン、イホスファミドで化学療法を行い、肺転移3カ所を切除した。肺転移の再発があり、ゲムシタビン、ドセタキセル、イホスファミドで化学療法を実施。治療開始後2年10カ月経過中

では、代表的な軟部肉腫とはどんなものでしょう。

①悪性線維性組織球腫(MFH)……最も多い軟部肉腫で、高齢者に多く見られます。主に太ももに発生します。

②脂肪肉腫……次いで多く、40~50歳代に多く発生します。太ももの脂肪にできやすい肉腫です。

③滑膜肉腫……比較的若い人に多く、手や足の関節の内側にある滑膜にできます。

④横紋筋肉腫……小児に発生する代表的軟部肉腫です。多くは頭頸部や泌尿器・生殖器に発生し、手足に発生することもあります。

⑤平滑筋肉腫……高齢者に多く、腹部にある膜(後腹膜や腸間膜など)に発生します。

などがあげられます。

骨肉腫などの悪性骨腫瘍が、痛みや腫れといった自覚症状で気づくことが多いのに対し、軟部肉腫は皮膚や筋肉の中にしこりができるものの、大きくなっても痛みを伴うことはまれです。やわらかい組織なのでレントゲン検査に映りにくく、主にMRI(核磁気共鳴画像装置)によって診断します。CT検査を補助的に行うこともあります。肉腫が疑われる場合は、診断を確定するための生検(病理検査)を行います。その多くは針を腫瘍に刺して組織をとる針生検で、外来でも行える負担の少ない検査です。

こうした検査によって腫瘍の種類と進行度(病期)が診断されますが、軟部肉腫の進行度は通常のがんとはちょっと違う考え方で定められています。

「通常のがん、たとえば胃がんや肺がんなどは、病気の状態が進むにしたがい、1期、2期と名づけられています。でも、軟部肉腫は組織学的な悪性度で変わります。1期は悪性度が低く、2期~3期は高い。そして、リンパ節や肺など別の臓器に転移があれば4期とされます」


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