子宮頸がん予防に関する国際シンポジウム“Women Against Cervical Cancer in Japan” から

子宮頸がん検診と予防ワクチン接種の重要性を強調

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2014年9月
更新:2014年12月

  

北海道大学大学院医学研究科総合女性医療システム講座特任助教のSharon J. B. Hanleyさん

ヨーロッパやオーストラリア、日本などから子宮頸がんの疫学、臨床の専門家が集まり、先ごろ東京で、子宮頸がん予防に関する国際シンポジウム“Women Against Cervical Cancer in Japan” が開催された。シンポジウムでは海外の参加者から、現在、日本で積極的な接種勧奨が(一時)差し控えられている「子宮頸がんワクチン接種」に対し懸念が示されるとともに、各国での成功事例が紹介され、日本での早期再開を期待するメッセージが贈られた。

ヨーロッパ、オーストラリアの専門家が講演

シンポジウムでは、冒頭、日本産科婦人科学会理事長で、京都大学医学部産科婦人科教授の小西郁生さんの基調講演「子宮頸がん予防の重要性-命を救い、家族を守る」が行われた。

その後、ヨーロッパ、オーストラリアでの子宮頸がんワクチン接種状況が報告された。その中で、北海道大学大学院医学研究科総合女性医療システム講座特任助教で英スコットランド出身のSharon J. B. Hanleyさんは、「日本のHPV(ヒトパピローマウイルス)感染と子宮頸がんの疫学およびスコットランドのHPVワクチン接種プログラム」について講演した。

日本人女性において最も発症率の高いがん

Hanleyさんによると、20-39歳の日本人女性のがん発症率の推移をみると、1990年以降、子宮頸がんが乳がんに代わって第1位を占めるようになり、現状では年間罹患者は約15,000人、年間死亡者は約3,500人と、出産可能な年齢の日本人女性において最も発症率の高いがんとなっている。

子宮頸がん発症にはHPVの関与が知られている。ヒトに感染するHPVは100種類以上特定されており、このうち30~40種類が性的接触により感染。さらにこれら
のうち約15種類が発がん性である。この発がん性HPVのうち16型と18型が最も高い発がん性HPVだ。

日本人女性の検診受診率は OECD加盟国で最下位グループ

ではこの子宮頸がんを引き起こすHPVは、いつ感染するのか。一般的には、性活動が活発となる10代後半から20代の性交開始後、数年以内に感染することが多いとされ、全女性の約80%が一生に一度は感染しているといわれる。ほとんどの場合、症状がなくHPV感染の90%はウイルスが自然に排除されるため、子宮頸がんに進展するのはごくわずかという。ただし、子宮頸がんは特別な人ではなく、1回でも性交経験があれば、誰でも罹患し得る病気であることに留意することが必要だ。

図1 無料検診クーポン券配布後の受診率(2009-2011年)

このため、定期的な検診が必要となるが、日本人女性の検診受診率は24.5%と、OECD(経済開発協力機構)加盟国(34カ国)の中で最下位グループに属している(加盟国平均61.1%)。このため、厚労省は自治体を通じて2009-2013年に20歳、25歳、30歳、35歳、40歳の女性を対象に、無料の検診クーポン券を配布したものの、2009-2011年の受診率は全体的には21.7~24.6%と低率で、その中でもとくに20歳女性では8.9~11.9%と低く、次いで25歳女性で18.0~21.8%であった(図1)。

また2010年からは12-16歳の女児を対象に無料のHPVワクチン接種が開始されたが、2013年3-6月にワクチンによる副反応の報道と、患者(犠牲者)サポートグループ結成などが相次ぎ、同年6月厚労省はHPVワクチン接種の積極的勧奨を一時差し控えるに至った。これに伴いワクチン接種率は70%から5%未満へ大幅に低下したことはまだ記憶に新しい。

HPVワクチン接種プログラムが順調に推移-スコットランド

こうした日本の状況とは裏腹に、Hanleyさんの母国英スコットランドでは、HPVワクチン接種プログラムは順調に推移している。

スコットランドでは、2008年3月に同プログラムを開始。プログラムの内容は、定期接種は12-13歳の全ての女子が対象(学校単位)。2014年9月から14歳以下の女性(2回接種)。キャッチ・アップ接種は14-18歳の女性(2008年9月-2011年)を対象(学校単位 or GP [一般開業医] 単位)など。

図2 スコットランドにおけるHPVワクチン接種率

HPVワクチン接種率(定期接種)は2008-2011年を通して1回目91.8~93.7%、2回目92.0~93.8%、3回目90.1~92.4%と、3回目はやや減少しているものの、90%台の数字をキープしている。キャッチ・アップ接種(16-18歳女子のデータ、3回接種)では、学校接種(93, 91.4, 87.8%)、GP接種(45.5, 40.6, 32.3%)、総合接種率(73.6, 71, 65.5%)と学校での接種率が高い(図2)。

国家的なデータシステムを構築

スコットランドでは、がん予防を証明するために、接種データ、検診データ、臨床データを連携する国家的なデータシステムが構築されている。

予防ワクチン接種の効果については、3回接種により、HPV16型と18型の有意な減少、前がん病変(CIN1~3)発症数の減少、CINの相対リスクの有意な低下、上皮内がんの有意な減少が認められた。

このように同国ではHPVワクチン接種プログラムが成功しているが、その背景には、同プログラム開始前の十分な啓発、教育、リスクコミュニケーションの実施。また開始後には、ワクチン登録によるリスク管理、プログラム評価などを行っていることが挙げられる。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート6月 掲載記事更新!