周辺臓器への副作用を最小限に、局所制御効果はより高く
子宮頸がんの3次元画像誘導小線源治療
子宮頸がんは、予防や早期発見の試みがなされているがんではあるが、進行例や再発した場合では、予後は厳しい。治療の精度を上げるために、放射線治療の方法も様々に工夫されている。その1つが3次元画像誘導小線源治療だ。どのような腫瘍に対し、より効果が高いのか、豊富な実践例をもつ施設の専門医に聞いた。
子宮頸がんにおける放射線治療の貢献度は高い
現在、根治が見込める子宮頸がんについては、手術か放射線治療が行われるが、放射線治療が適応となる範囲は広い。3次元画像誘導小線源治療の話題に入る前に、まず子宮頸がんにおける放射線治療の位置づけから見ておこう。
『子宮頸癌治療ガイドライン2011』によると、放射線療法は、Ib期とⅡ期のがんにおいて手術と同等な治療成績をもつ標準治療として明記されている。
それよりも進行したがんについては、手術は難しく、もともと放射線療法が標準治療である。子宮頸がんの治療について、ごく早期の症例以外をほぼカバーしているといえる(表1)。
放射線治療は、通常、*シスプラチンを主体とする化学療法を併用する、化学放射線療法として行われている。その際の放射線治療は、さらに外部照射と腔内照射(小線源治療)の2つの治療が併用される。
外部照射とは、放射線を体外から照射する通常の放射線治療である。その目的は、子宮や腟周辺のがん組織と、病期Ibでも10%の危険性があるといわれる、骨盤内リンパ節への微小な転移をたたくこと。
一方の腔内照射は、小線源という小さい放射性の線源を病変の近くに留置して照射する方法である。
腔内照射(小線源治療)は、腫瘍部分へ線量を集中的に集める効果が優れている。また、ある程度、腫瘍の形に合わせて照射できるのがメリットだ。
腔内照射の際は、痛みや苦痛を緩和する鎮静薬などでの前処置を施して行われる。まず、直径約3~5㎜の細い管状の器具(タンデム)を腟経由で子宮腔の中に挿入し、その後、子宮腟部の左右に2本のやや細長い球状の器具(オボイド)を挿入する(図2)。
*シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダほか
画像誘導小線源治療では 線量分布のより正確な評価が可能
器具を装着したら、そのままCT(コンピュータ断層撮影)で撮影する。CT画像では3次元的に治療計画を行う。具体的には、標的とする腫瘍部分と障害を受けやすい周辺の正常臓器の位置を読み込んで、それらに照射される線量を立体的に評価しながら最適な治療計画を作成する。それに従い、タンデムとオボイドを通して、治療用機器を使い小線源を短時間(数分間)、腔内に留置し、集中的に効率よく腫瘍を照射する。照射後に器具は抜去される。
子宮頸がんの小線源治療は、イリジウム192という高線量率小線源を使うことが多い。小線源治療は、外部照射を開始してから2~4週後に、週1回のペースで計約4回行われ、照射時間は1回10~20分間程度である。
放射線治療による局所制御率は非常に高い
「外部照射と腔内照射による放射線治療と化学療法の併用は子宮頸がんに対して非常に高い治療効果をもっています。がんが子宮周囲の組織に浸潤しているのがⅡb期ですが、これよりも病期が進むと手術の適応になりません。そのような場合に、外部照射と腔内照射は標準治療として行われ、局所制御率は非常に高いです」
このように話すのは、埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科講師の田巻倫明さんだ。
子宮頸がんに対する治療では、Ⅱb期までであれば、放射線治療は手術と同等の成績であるといわれるが、放射線治療は、Ⅲ期、Ⅳ期に進行したがんも適応とし、長期の生命予後をもたらすことも可能という。4㎝以下の小さい腫瘍であれば、局所制御率はほぼ100%、4㎝以上の腫瘍でも有効な線量を照射できれば、90%に近くなるともいう。
ただし、腫瘍がかなり大きい場合や形が不整なために十分な線量が照射できない場合は、局所制御率は下がってしまう。
「子宮頸がんに対する放射線治療で大切なのは、まず第1に治療から約1年後以降に発現してくる副作用を極力下げることです。それから、一般的には局所制御率はかなり良好な治療法ですので、大きな腫瘍や偏った形の浸潤がある腫瘍など、従来の治療ではなかなか制御できなかった症例の治療成績をいかに伸ばすかが重要です」
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