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現在、TC+アバスチン療法の臨床試験も進行中

アバスチンが新たな治療選択肢に! 最新の進行・再発子宮頸がん薬物療法

監修●竹島信宏 がん研有明病院婦人科部長
取材・文●柄川昭彦
発行:2017年6月
更新:2017年6月

  

「現在、進行・再発子宮頸がんでは、TP+アバスチン療法が、第1に推奨される治療法になります」と語る竹島信宏さん

進行・再発してしまうと治療が難しかった子宮頸がんに、昨年(2016年)新たに予後改善が期待できるとして、分子標的薬のアバスチンが治療選択肢に加わった。新薬登場で、進行・再発子宮頸がんの治療はどのように変わっていくのか、専門家に話を聞いた。

ⅣB期と再発は薬物療法で予後延長を目指す

がんの治療は基本的に進行の程度に応じて治療法が選択されるが、子宮頸がんの治療は、ⅣA期とⅣB期の間で治療法が大きく変わるという。ⅣA期とは、子宮頸部で発生したがんが、膀胱(ぼうこう)や直腸にまで広がっている状態である。がんが、恥骨(ちこつ)と仙骨(せんこつ)に囲まれた小骨盤腔(しょうこつばんくう)を超えて転移している場合には、ⅣB期となる。がん研有明病院婦人科部長の竹島信宏さんは次のように説明する。

「ⅣA期に対しては、化学療法と放射線療法を併用する化学放射線療法が主に行われています。これは根治(こんち)を目指した治療です。ところが、ⅣB期の場合と、何らかの治療を行った後に再発した子宮頸がんは、治りにくいため根治を目指した治療が難しくなります。そこで、抗がん薬などを用いる化学療法によって、できるだけ予後を延ばすことを目指した治療を行うことになります。進行・再発子宮頸がんといった場合には、ⅣB期と再発した子宮頸がんを指します」(図1)

図1 進行・再発子宮頸がんとは?

同等の効果が期待できるTP療法とTC療法

進行・再発子宮頸がんには、従来から抗がん薬を組み合わせた併用療法が行われてきた(図2)。基本となるのは、パクリタキセルとシスプラチンを併用する治療で「TP療法」と呼ばれている。最近では、パクリタキセルとカルボプラチンを併用する「TC療法」も、広く行われるようになっているという。シスプラチンとカルボプラチンは、どちらもプラチナ製剤に分類される抗がん薬である。

日本では、この2つの併用療法に加え、イリノテカンとネダプラチンの併用療法も選択肢の1つとなっている。

「最初に有用性が証明されたのはシスプラチンを用いるTP療法で、これが第1選択の治療となっていました。このTP療法と、カルボプラチンを使うTC療法とを比較する臨床試験が行われたのです。その結果、TC療法のTP療法に対する非劣性(劣っていないこと)が証明されました。こうして力(治療効果)の差がないことが明らかになったことで、現在ではTC療法を行うことが多くなっています」

TC療法が広く行われるようになったのは、シスプラチンとカルボプラチンでは、使いやすさに差があったからだという。

「シスプラチンは腎臓に対する毒性が強いため、腎臓を保護するために輸液(水分を点滴で入れること)を行わなければなりません。そのため、シスプラチンを使う場合、基本的には投与する際に、4日ほどの入院が必要になります。それに比べ、カルボプラチンは外来で投与できるので、治療効果に差がないのであれば、TC療法のほうが患者さんの負担も少なくて済むので、広く行われるようになっていったのです。また、他にもシスプラチンには骨髄抑制が強く、副作用として吐き気が多く見られますが、TC療法では吐き気もあまり起こらず、そういった点もTC療法が選ばれる理由になっています」

イリノテカンとネダプラチンは、どちらも日本で開発された抗がん薬で、この併用療法は日本および一部のアジア地域で主に行われている治療だという。

「国内の臨床試験で有用性が証明されていますが、TP療法やTC療法との比較試験は行われていません。ただ、イリノテカン+ネダプラチン療法の治療成績から、恐らくTP療法やTC療法に匹敵する力があるのではないかと考えられています。この治療も外来で行うことができます」

よく使われるのはこの3種類の併用療法だが、1次治療として選択されるのは、TP療法あるいはTC療法である。そして、1次治療が効かなくなったとき、2次治療としては、イリノテカン+ネダプラチン療法が選ばれることが多いという。

「TP療法とTC療法は、どちらもパクリタキセルとプラチナ製剤の組み合わせで、よく似ています。1次治療にどちらかを選んだとしても、それが効かなくなった場合、2次治療には、違う系統の治療法を選ぶのが基本です。そこで、イリノテカン+ネダプラチン療法が選ばれることが多いのです」

ただ、このような治療を行っても、進行・再発子宮頸がんの治療成績は非常に厳しいものだった。その生存期間を延ばすため、2016年から新たに使えるようになったのが、分子標的薬のアバスチンである。

パクリタキセル=商品名タキソール シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ カルボプラチン=商品名パラプラチン イリノテカン=商品名カンプト/トポテシン ネダプラチン=商品名アクプラ アバスチン=一般名ベバシズマブ

図2 進行・再発子宮頸がんに用いられる化学療法の組み合わせ

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