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肝臓にやさしく身体にも優しい、反復繰り返し治療できる点が注目される
新剤形抗がん剤の登場で進化する肝がんのIVR治療

監修:淀野啓 鳴海病院院長
取材・文:「がんサポート」編集部
発行:2009年9月
更新:2013年4月

  
淀野啓さん
鳴海病院院長の
淀野啓さん

抗がん剤が効きにくい肝臓がんでは、肝動脈(化学)塞栓療法や肝動注化学療法が注目されている。
マイクロカテーテルを使って肝臓の腫瘍部位まで薬を送り込むIVR治療と呼ばれる治療法だ。この治療方法の効果が高まった裏にはある薬剤の登場があった。

肝機能を考慮して選択する肝臓がんの治療法

日本人が罹患するがんで、男性では3番目、女性では5番目に多い肝臓がん。その多くの場合、C型あるいはB型肝炎ウイルス感染と関係があるなど、がんの発病原因が明らかになっている。このことは肝臓がんの治療にも大きく影響している。

「肝炎ウイルスが原因でがんを発病している場合には、慢性肝炎・肝硬変を合併し予後の悪さが予見できます。ウイルスが残存している限り、肝障害があり肝機能が低下していることが多く、またがんが何度も再燃、再発すると考えられます。そこでウイルスが原因で発病している場合には、がんの進行度だけではなく、肝機能を考慮した治療を選択しなければなりません」

と、語るのは年間500件近くの肝臓がん患者の治療を手がけている青森県、鳴海病院院長の淀野啓さんである。

さらに一部の例外を除くと、全般的に抗がん剤は肝臓がんに対する感受性が低く、血液循環中に濃度が低下することもあって、全身化学療法が効きにくいことも肝臓がん治療の特徴だ。

「心臓から送り出される動脈血液量の中で肝臓に届けられる量は10分の1から15分の1程度。当然、末梢静脈から投与した抗がん剤も同じ比率でしか肝臓に届きません。また、肝臓に届いた抗がん剤も血液が静脈から心臓に向かい、再び肝臓に戻ってきた時には活性が落ちている。これでは全身へのダメージが大きいだけで、とても効果的な治療法とはいえません」

とも淀野さんは指摘する。

[肝細胞がんに対する治療法の選択(日本)]
図:肝細胞がんに対する治療法の選択(日本)

第17回全国原発性肝がん追跡調査報告(2002-2003)による治療施行率

さまざまな方法があるIVR治療

つまり、多くの肝臓がんには抗がん剤による化学療法がきわだった効果をもたらさない。そんななかで肝臓がんに有効な治療法として注目されているのがIVR(Interventional Radiology)と呼ばれる治療法である。

「IVRとはX線撮影や血管造影、さらにCT(コンピュータ断層撮影)、US(超音波断層撮影)などの映像を観察しながらがんを治療する手法の総称で、具体的にはラジオ波焼灼療法、肝動脈(化学)塞栓療法(TACEまたはTAE)、さらに肝動注化学療法(TAI)という主に3つの治療法が行われています。いずれの治療とも侵襲性が低く、外科手術に比べると体へのダメージはわずかなものに抑えられる。そのため何度でも同じ治療を行えるのも大きな特長でしょうね」

と、この治療を手がけてきた淀野さんは、そのメリットを語る。

淀野さんによると、日本の肝臓がん患者の約7割がIVRによる治療を受けているという。では、実際にIVRとはどのような治療で、どんな状態の肝臓がん患者に用いられるのだろうか。

肝動脈造影
肝動脈造影
マイクロカテーテルによる選択的造影
マイクロカテーテルによる選択的造影
肝臓がん(矢印)が造影される
マイクロカテーテルによる選択的造影
肝臓がん(矢印)の栄養動脈のみ塞栓している


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