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確立した標準的な治療はないが、効果的な化学療法も現れだした
他の疾患と間違われやすい子宮肉腫の治療

監修:川村直樹 大阪市立総合医療センター婦人科部長
取材・文:増山育子
発行:2007年10月
更新:2014年1月

  
川村直樹さん 大阪市立総合医療センター
婦人科部長の
川村直樹さん

子宮肉腫とは、子宮体部に起こる悪性の腫瘍だが、子宮体がんとは異なり、非常に稀である。しかし、稀なだけに一般向けにはなかなか情報がないので、きちんとした情報がほしい、と読者から依頼があった。それに応えて、治療情報を提供したい。


子宮肉腫とは

子宮体部にできる少数派の悪性腫瘍

[図1 子宮肉腫の発生]
図1 子宮肉腫の発生

子宮肉腫は子宮筋層や子宮内腔の粘膜(子宮内膜)のうち内膜間質と呼ばれる組織から発生する。これに対し子宮内膜がんは、子宮内膜のうち内膜腺上皮と呼ばれる組織から発生する

子宮肉腫は、子宮筋層や子宮内腔の粘膜(子宮内膜)のうち内膜間質と呼ばれる組織から発生する悪性腫瘍である。これに対し子宮体部悪性腫瘍の大部分を占める「子宮内膜がん」は子宮内膜のうち内膜腺上皮と呼ばれる組織から発生する悪性腫瘍である。

子宮肉腫の代表的なものに「平滑筋肉腫」「内膜間質肉腫」「がん肉腫」があるが、これらは子宮体部悪性腫瘍の3~7パーセントを占めるにすぎない稀な腫瘍だ。

子宮肉腫は、症状や所見から「子宮筋腫に似たタイプ」と「子宮内膜がんに似たタイプ」の2つに大きく分かれる。

「子宮筋腫に似たタイプ(平滑筋肉腫と内膜間質肉腫のうち低悪性度のもの)」は、肉腫が子宮体部の筋層内に発育するものが多く、症状が筋腫に似ている。 すなわち、月経に関連する症状(月経過多)や、大きくなった腫瘍がまわりの臓器を圧迫しておこる症状(頻尿、腹部腫瘤感)などで、腫瘍が小さければ無症状であることも多い。そのため誤って子宮筋腫と診断されることも多く、「筋腫の手術をしたら、実は肉腫だった」というケースもある。

「子宮内膜がんに似たタイプ(がん肉腫と内膜間質肉腫のうち高悪性度のもの)」は、肉腫は子宮の筋層に広がっていくとともに、子宮内腔に向かってポリープのように大きくなっていきやすい。そのため早期から不正性器出血がみられる。不正性器出血があると、子宮内膜がんが疑われるため子宮内膜生検といって、病巣から組織を取って調べる検査が行われる。その検査結果から「悪性腫瘍」とわかることが多い。

子宮肉腫の症状

不正性器出血や月経時以外の痛みが特徴

肉腫を疑う症状として、不正性器出血や下腹部痛、「子宮が急に大きくなった」「経過観察していた筋腫が急に大きくなった」「閉経後やGnRH(ゴナドトロピン)アゴニスト(作動薬)による治療中に子宮筋腫が小さくならず、むしろ大きくなった」などがある。

従来、子宮筋腫は、子宮体部が妊娠12週相当の大きさを超えたら肉腫の疑いがあるとして、手術の適応とされていた。最近ではMRIの画像診断によってハイリスク群を絞り込むことができるようになったので、以前のように腫瘍の大きさだけで診て手術が行われることは少なくなった。

大阪市立総合医療センター婦人科部長の川村直樹さんは、重要なポイントとして「筋腫が急に大きくなったということ、閉経後の子宮の増大、また、筋腫を持っている人が月経時以外に、感じる下腹部痛(筋腫がある部分の痛み)、発熱を伴ったりする場合は注意が必要です」と指摘する。

子宮肉腫の診断

●診断のすすめかた

「子宮筋腫に似たタイプ」の場合は、症状や診察所見、超音波検査、腫瘍マーカーによるスクリーニングでハイリスクとされた症例に対してMRIを行い、さらにハイリスク症例を絞り込む。それで肉腫の疑いがある場合、精密検査として生検、または確定診断のために手術を行う。

「子宮内膜がんに似たタイプ」では、早期から不正性器出血があるので、子宮内膜がんの診断と同様に、子宮内膜生検を行う。

[子宮肉腫(とくに子宮筋腫に似たタイプ)の診断の進め方]
子宮肉腫(とくに子宮筋腫に似たタイプ)の診断の進め方
●腫瘍マーカーに準じるLDH

子宮肉腫の腫瘍マーカーとして特定のものはないが、血液中のLDH(乳酸脱水酵素)が高値になることが知られている。

平滑筋肉腫の場合は、痛みに関連して血中LDHが基準値より高くなったとき(とくに1.5倍以上)がポイントになる。

●キーになるMRIでの画像診断
写真:子宮平滑筋肉腫の割面

子宮平滑筋肉腫の割面。子宮筋腫と異なり腫瘍内に壊死や出血がみられることが特徴

現在、子宮肉腫の診断にもっとも有用と考えられている画像診断はMRIである。肉腫は壊死(細胞や組織の死滅)や出血を伴いやすいので、MRIではこれらをとらえ鑑別に導く。

「出血や壊死を反映した信号がでていると、肉腫を疑います。とくに不正性器出血といった症状の出にくい子宮筋腫に似たタイプの肉腫(平滑筋肉腫、低悪性度内膜間質肉腫)の診断では、MRIに映る肉腫に特徴的な所見が診断の糸口になります」と川村さんは強調する。

●確定診断は生検でも可能
写真:子宮肉腫の針生検に用いられる器具
子宮肉腫の針生検に用いられる器具

生検は、病巣の組織を一部採取して病理組織学的に診断する生検は、病名を確定(腫瘍の場合は良性・悪性の鑑別)する目的で行われる。通常は子宮内膜生検が行われているが、子宮の筋層内にある肉腫の腫瘍組織を取るために、大阪市立総合医療センターでは「腫瘤針生検」を行っている。

これは子宮頸管から長めの生検針を通し、腫瘤に針を刺して組織を採取するというものだ。経産婦ならば検査のために麻酔が必要になることは少ない。

「少しでも病理組織学的に異常がみられる症例は、針生検を実施したうちの5~10パーセントくらいで、最終的に肉腫と診断されるのはその約半分です。したがって、子宮筋腫・肉腫の鑑別の場合は、生検で肉腫の診断基準を満たしていなくても、少しでも異常がみられれば、手術の適応となります」

子宮筋腫の病理組織像
子宮平滑筋肉腫の病理組織像
子宮筋腫(左)と子宮平滑筋肉腫(右)の病理組織像。子宮筋腫は細胞の異型、細胞分裂像、壊死がほとんどみられないが、子宮平滑筋肉腫はこれらの異常所見が目立つ

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