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治療やケアを受けられる医療環境を事前に、自ら整えよう
これだけは知っておきたい再発・転移の基礎知識

監修:岩瀬哲 東京大学医学部付属病院緩和ケア診療部副部長
取材:「がんサポート」編集部
発行:2010年2月
更新:2013年6月

  

岩瀬哲さん

東京大学医学部付属病院
緩和ケア診療部副部長の
岩瀬哲さん

「再発しました」といわれて、ショックを受けない人はいません。けれども、最近は再発・転移後にもさまざまな治療が適応になります。
決して絶望せずに医師とよく相談し、治療と生活の質(QOL)を保つ手立てを尽くしていただきたいと思います。
ここでは、再発・転移の基礎知識を解説するとともに、よりよい時間を過ごすためのノウハウを伺いました。

がんが再び現れると「再発」遠くの臓器に現れると「転移」

[がんの再発と転移]
図:がんの再発と転移

患者さんが再発・転移という重大事に向き合うとき、まず知りたいと思うのは「私の体の中で何が起きているか」ということではないでしょうか。体内で起きていることを知るのは、「この事態に何ができるか」を考える最初の1歩になるからです。

では、再発とはどんな状態をいうのでしょうか。転移とは、どう違うのでしょう。

再発とは、最初の治療時に見つかった、がんを治療したあと、再びがんが現れたことを意味します。

このうち、最初にがんができたのと同じ場所に再び現れたものを「局所再発」といいます。最初のがんをとった場所の近く(リンパ節など)に現れた場合も、「局所再発」といいます。そして、最初にできた場所から離れた臓器や組織に現れる場合を「遠隔再発」、通常「遠隔転移」といいます。つまり、転移は再発と同義で、近接していない場所に現れた場合をさします。

なお、同じ臓器に新たにがんができたり、離れたところに別のがんができることもあり、これらは再発ではなく、別のがん(新たな原発)と判断されます。

再発・転移は、なぜ起こるのでしょうか。ひとことでいうと、最初の治療を行ったときに、がん細胞がすでに原発巣(最初のがん)を抜け出し、血管やほかの臓器など、体内のシステムに入り込んでいたためです。その意味では、再発・転移は治療後に新たに起きるというより、治療前にすでに起きていたといえます。もちろん、原発巣のがんに取り残しがあり、そこから再び増殖することもあります。

現在、初発治療では、手術などによって原発巣を取り除いたあと、抗がん剤治療や分子標的治療による補助療法を行うことが増えました。これはまさに、「全身に散らばっている可能性のある目に見えないがん細胞を叩くため」です。

がんが転移しているかどうか、については治療時に確実に知ることはできません。治療後、数カ月で再発・転移することもあれば、10年以上たって再発・転移が確認されることもあります。乳がんは最近では「最初に見つかったときにはすでに転移している可能性が低くない」ことから、全身病と位置づけられるようになりました。ですから、あらかじめがん細胞を退治する治療(抗がん剤)を行うことで、再発・転移を予防するのです。この考え方は今日、ほかのがんでもとりいれられるようになってきています。

ここで大事なのは、「再発・転移したがんは、最初のがん細胞の分身である」ということです。

乳がんの細胞が肺に転移しても、肺がんとは呼ばれません。あくまでも「肺で増殖した乳がん細胞」であり、乳がんの性質を持っています。ですから、この場合に行われるのは、肺がんではなく乳がんの治療なのです。

がん種やタイプによって再発・転移が予測できる

では、そもそもがんはどうやって転移するのでしょうか。どんな方法で遠くの臓器に飛び、増殖を始めるのでしょう。

がん細胞は、細胞分裂のコピーミスから生まれるといわれています。

人の体には60兆もの細胞があり、細胞分裂をくり返しています。当然、ミスも起こるわけですが、その頻度は意外に高く、1日に5000ものミスコピー細胞=がん細胞が生まれているといわれます。

そんなにたくさんのがん細胞が生まれているのに、どんどんがんにならないのは、体内の免疫細胞ががん細胞を見つけては退治してしまうためです。がん治療の現場で「免疫力を高めましょう」といわれるのも、ただの励ましではないのです。

免疫細胞が見逃したがん細胞が静かに増殖を始め、やがて大きなかたまりを形成するようになって発見されます。さらに、その場所で細胞分裂をくり返して大きくなるだけでなく、細胞が周囲の血管に入り込みます。この細胞が血液やリンパ液などに入り込むことによって、体内の別の場所に広がり、転移がんとなるのです。すぐ近くの臓器に、直接広がることもあります(直接浸潤)。

一般に、転移や直接浸潤の可能性は、がん細胞の増殖が進み、がんのかたまりが大きくなると高くなるといわれています。たとえば、乳がんの場合、発見され、切除したときの腫瘍の大きさが1センチ以下なら、リンパ節まで広がっている可能性は10パーセント以下といわれます。けれども、診断されたときに5センチを超えている場合、がん細胞がリンパ節に転移している可能性は80パーセントを超えるとされています。

[がんの転移]
図:がんの転移

再発・転移の場合もがんの種類によって治療は異なる

また、がんの種類やタイプによっても、進行の速さや転移のしやすさには違いがあります。最近では、「この種類のがんのこのタイプは転移が起こりやすく、進行が速い」といったことが、かなりわかってきました。医師はがんを疑うと、診断を確定するために必ず組織検査をしますが、その結果、今後の病状の進み方が相当程度予測できるようになっているのです(例外もあります)。

たとえば、がんの進行速度を判断する基準の1つに、「分化」「未分化」というものがあります。

未分化とは通常、分化が進んでいないため、さかんに細胞分裂する細胞を意味します。反対に、分化とは細胞分裂が進み、ほぼ完成した細胞で、がんができた部位の組織とほぼ同じ形をしています。そのため、細胞分裂して成長する速度がゆっくりしています。

つまり、未分化がんといわれたら、再発・転移の可能性が高く、分化がんなら一般的に再発・転移の可能性が低いというわけです。

また、がん種によっても成長が遅かったり、非活動状態の長いものがあります。

よい例が、前立腺がんです。前立腺がんは比較的高齢の男性が発症しやすいがんですが、多くの場合、進行がたいへんゆっくりしているので、症状が現れる前に老衰や他の原因で死亡することも少なくありません。ですから、前立腺がんの場合、がんが見つかっても「要観察」のまま、積極的な治療をしないケースもあります。

再発・転移の場合も、どんながんであるかによって治療やケアは違ってくるということを、患者さんご本人とそのご家族はよく知っておかれることが大事です。


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