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大腸がんを経験した映画監督ジャン=ポール・ジョーさん(仏)
闘病中には、思索を深めよう回復すれば行動に移せる
「治ったあとの目標を掲げて頑張れ――」
大腸がんを経験し、それを大きなきっかけに環境問題のドキュメンタリー映画を撮り続けるフランスの映画監督が、3月末に来日した。ジャン=ポール・ジョーさん(67)。9年前、2カ月の入院中に考えたことは――。
「がんの恐怖はありました。食品も大気も汚染されているので、潜在的に誰もががんにかかる危険があります。私もそろそろ年齢的に危ないかな、と検査を受けたんです。そこで深刻な腫瘍があることがわかりました」
――どのような心境だったか?
「フランスではがんで年間15万人が亡くなり、アメリカでは2日で3000人が命を落とします。理解していたつもりでも、自分のこととなると呆然としました。大地震が起きた気がしました」
――どのような治療を受けましたか?
「数回の外科手術を受けました。入院は2カ月間続きました。医師たちは『がんは特別な病気ではない。他の病気と同じ』と慰めのように言うのですが、そうは絶対に思いませんでした。がんは死に至る病です。医師たちは軽々しくそういうことを言うべきではありません」
化学技術、放射線は治療に使ってほしい
――化学療法や放射線治療は受ける気はなかったのか?
「私の場合は外科手術だけで対応できました。しかし、生き延びるためならば、化学療法も放射線治療も受けたでしょう。それらの技術が医療において活用されることには反対ではありません。私が怒りを感じているのは、それらの技術ががんなど病気を誘発する原因になっていることなのです」
――入院中に心理面の支えになったことは何か?
「家族がとてもよくサポートしてくれました。そして、いろいろな思索を深めました。『回復したら、がんの原因を告発するために何ができるだろう』とベッドの上で考え続けました。私の武器はカメラです。ドキュメンタリーの映画作家として環境保護のために生涯を捧げようと、自分を鼓舞していました」
社会参加を目標に
「『医学の父』と称される古代ギリシャのヒポクラテスは『あなたの最良の薬は、あなたが口にする食べ物です』と言いました。私はそれに同感しています。地球上のすべての人々が自然のシステムを尊重する方法で作られた農作物を口にしていれば、健康なのだと思いますが、残念ながら実際は化学物質が入ったり、合成で作られた食品を摂っている。どれだけの害を及ぼすかはラットの実験で明らかで、人間に及ぼす害も同じことでしょう。私が我慢できないのはそういうものを押し付けられていることです。その対象が子どもに及んでいることです」
――今、がんにかかっている患者さんにメッセージを
「病院にいる方、そのご家族など、たいへんな状況にいらっしゃると思います。しかし、回復すれば自分の考えていることを行動に移す可能性を持っていらっしゃいます。考える時間はたくさんあります。考えたことを周りの人々に伝えてください。社会参加を目標にすれば、自分を奮い立たせることになります。たとえば、私のしているような地球を救う闘いに参加することもできます。未来の世代を守るために、さまざまな人々が共通の闘いをすることもできるのです」
『世界が食べられなくなる日』
(2012年フランス118分 原題「Tous Cobayes?」)
2013年6月8日、渋谷アップリンクなど全国で順次公開
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