ASCO2013 「Best of ASCO 2013」に選定
KRAS野生型大腸がんの1次治療でアービタックス併用の優位が明らかに
がん細胞の増殖にかかわる遺伝子「KRAS」が野生型である切除不能大腸がんの1次治療で、
分子標的薬のアービタックス*とアバスチン*の有効性を比較した初めての臨床試験結果が発表された。
奏効率では有意差がなかったものの、全生存期間では、アービタックス投与群が中央値で3.7カ月延長させたことが報告された。
大腸がんで使われる分子標的薬には2種類あり、1つはがん細胞が増える信号を送る仕組みを遮るEGFR阻害薬。もう1つはがんに栄養を送る新生血管をブロックするVEGF阻害薬というものだ。
どちらが有効かには、がん細胞のKRASという遺伝子に関係し、この遺伝子に変異がない「野生型」にはEGFR阻害薬が有効だが、逆に「変異型」には効果が期待できない。
今回の第Ⅲ相臨床試験 「FIRE3」はドイツの研究者らによって行われ、KRAS野生型の切除不能大腸がんに対する1次治療として、化学療法であるFOLFIRI*にEGFR阻害薬であるアービタックスを併用した場合と、VEGF阻害薬のアバスチンを併用した場合を比較した。 現在は、KRAS野生型に対してどちらの療法も用いられているが、2つを比較した試験はこれが初めて。
試験では、ドイツ、オーストリアの医療機関150施設から、KRAS野生型のがん患者592人を登録、無作為に「FOLFIRI+アービタックス」、「FOLFIRI+アバスチン」に振り分けた。
結果は、全生存期間の中央値でアービタックス群が28.7カ月だったのに対し、アバスチン群は25.0カ月で、アービタックス群が生存期間を有意に延長させていることがわかった(図1)。
一方で、無増悪生存期間を中央値で見るとアービタックス群が10.0カ月、アバスチン群が10.3カ月で有意差が認められなかった(図2)。
研修者側は、「化学療法と併用する分子標的薬として、アービタックスとアバスチンを比較した初めての試験だったが、アービタックスを併用したほうが、生存期間中央値で3.7カ月という、臨床的に意義のある差をもってすぐれていた」と、結論付けている。
*FOLFIRI=5-FU(商品名)+ロイコボリン(商品名)+イリノテカン(一般名) *アービタックス=一般名セツキシマブ *アバスチン=一般名ベバシズマブ
大腸がん個別化治療に進展 ベクティビックスについての発表も
ASCOでは、このほかにも大腸がんの個別化治療に関する新しい臨床試験結果が報告された。KRAS野生型に対して、従来の化学療法に分子標的薬のベクティビックス*を上乗せすることで、全生存期間が4.4カ月延長されることがわかった。
フランスの研究者が、第Ⅲ相臨床試験「PRIME試験」の解析結果として発表した。KRAS野生型で、まだ化学療法をしていない転移性大腸がんの患者を対象に行われた試験で、抗がん薬を3剤併用するFOLFOX*4に抗EGFR抗体薬である分子標的薬ベクティビックスを上乗せした場合とFOLFOX4のみ使用した場合の結果が比較された。
*ベクティビックス=一般名パニツムマブ *FOLFOX=5-FU+ロイコボリン+エルプラット
ベクティビックス併用で生存期間が延長
試験の結果、ベクティビックスを併用すると、FOLFOX4のみに比べて全生存期間を有意に延長できることが明らかになった。
試験に参加したのは1183人で、ベクティビックス併用群に593人、単独群に590人が割り付けられた。このうち、KRAS野生型の患者は656人(併用群325人、FOLFOX4群331人)で、全生存期間中央値は、併用群で23.8カ月、単独群は19.4カ月と、併用群のほうが4.4カ月長いという生存期間延長が有意に示された。(図3)
一方、KARAS変異型の患者440人では、併用群の全生存期間中央値は併用群15.5カ月、単独群は19.2カ月だった。
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