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自分が納得した治療を受けるために 個別化治療の鍵〝分子標的薬〟 効果・副作用・コストを知る

監修●田村研治 国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科科長
取材・文●柄川昭彦
発行:2013年12月
更新:2019年9月

  

「分子標的薬の治療はベネフィット・リスク・コストを考慮することが必要」と話す田村研治さん

細胞の増殖や浸潤・転移にかかわるがん細胞特有の分子(タンパク質を基に構成されている酵素など)を標的とする分子標的薬。同薬の出現は、「個別化医療」を現実のものとし、2000年以降、がん薬物療法のキーファクターとなっている。しかし、いくつかの課題もあるという。

現在開発されているのはほとんどが分子標的薬

がんの薬物療法で、「分子標的薬」という言葉をよく耳にするようになった。日本で最初に分子標的薬が承認されたのは2001年。悪性リンパ腫の治療薬であるリツキサン、乳がん治療に使われるハーセプチン、白血病に対するグリベックが、この年に承認されている。それから10年余り。日本で承認されている分子標的薬は、すでに20種類を超えるまでになっている。

国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科科長の田村研治さんは、新しい薬が開発されている現状について、次のように話している。

「治療の場では、分子標的薬も従来からあった抗がん薬(いわゆる殺細胞性抗がん薬)も、どちらも使われています。しかし、現在、各製薬会社が開発に取り組んでいるのは、そのほとんどが分子標的薬です。従来型の抗がん薬では、治療成績が頭打ちになり、それを打破することを目指して分子標的薬は誕生しました。これから登場してくる新しい薬剤は、ほとんどが分子標的薬になります」

だからといって、治療に使われるのが分子標的薬だけになるわけではないという。現在も、従来型の抗がん薬は、がん治療において重要な役割を果たしているし、今後もしばらくはそういう状況が続くことになる。

リツキサン=一般名:リツキシマブ ハーセプチン=一般名:トラスツズマブ グリベック=一般名:イマチニブ

分子標的薬の登場により治療成績は大幅に向上

従来型の抗がん薬と分子標的薬は、どこが違うのだろうか(表1)。

表1 抗がん薬の分類

LH-RH : 性腺刺激ホルモン放出ホルモン IFN : インターフェロン IL : インターロイキン

「従来型の抗がん薬のほとんどは、がん細胞の増殖を抑える作用を持っていて、殺細胞性薬剤と呼ばれることもあります。細胞の増殖を抑制する作用によって、がん細胞のように増殖の盛んな細胞が、とくに大きなダメージを受けるのです。また、正常細胞にも作用してしまうため、増殖の盛んな細胞が影響を受け、副作用が現れるのです」

これに対し、分子標的薬は全く異なる形で作用を発揮する。がん細胞が持っている特定の分子(タンパク質を基に構成されている酵素など)を標的にし、その部分だけに作用するのだ。(表2)

表2 分子標的薬の作用機序

EGFR : 上皮成長因子受容体 HER2 : ヒト上皮成長因子受容体2 VEGF : 血管内皮細胞増殖因子

「例えば非小細胞肺がん(NSCLC)の治療に使われるイレッサやタルセバといった分子標的薬は、がん細胞の表面に現れているEGFR(上皮成長因子受容体)を標的にし、その働きを阻害します。とくにEGFR遺伝子に特定の変異が起きている場合に、よく効くことがわかっています。このように、標的がはっきりしているため、従来型の抗がん薬のように、どの細胞にも影響を及ぼしてしまうことはありません」(図3)

図3 イレッサの作用機序

チロシンキナーゼにATP(アデノシン三リン酸)が結合することで細胞増殖のシグナルが伝達される。チロシンキナーゼ阻害薬であるタルセバやイレッサなどが伝達を阻害することで、細胞増殖を抑える

分子標的薬の作用は、従来型の抗がん薬の作用とは全く違っている。だからこそ、頭打ちになったがんの治療成績を、大きく向上させてくれるのではないかと期待されたわけだ。結果は、まさにその通りだった。

「例えば、非小細胞肺がんで手術できない進行がんでは、生存期間の中央値、つまり半数の人が死亡するまでの期間は、90年代は4~5カ月程度でした。2000年代に、従来型の抗がん薬を組み合わせることで、8カ月くらいまで延びます。現在、EGFR遺伝子に変異のある人に分子標的薬の治療を行った場合、生存期間中央値は18~20カ月ほど。このように、分子標的薬が効く人には、大きな恩恵がもたらされることになったのです」(表4)

表4 従来型抗がん薬と分子標的薬の特徴と違い

この10年余り、分子標的薬の進歩は、がん治療を大きく変える原動力となってきた。

イレッサ=一般名:ゲフィチニブ タルセバ=一般名:エルロチニブ

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